無効の従者 ~色~
━━━…………。
「お兄様!!」
「大丈夫です。大事ありません。」
あぁ、大丈夫なのか
「少し休まれれば」
「本当に?」
そうだな。ちょっと疲れたかも
「今日は………」
「え~?またぁ?」
…………?
「しかし、お嬢さま………が………ですの……から……」
「でも、お兄様が…………」
「3日目か。やれやれ……に………った……です」
3日?ちょっと寝過ぎだろう!?
「ハッ!?」
目が覚めると、目の前には金髪、褐色肌、紅い瞳の軍服の女性がいた。
体を確認する。
「やれやれ、ようやくお目覚めか。何ともないよ。骨も太く、頑丈な男だ。」
「お前は………」
女性はこちらに会釈する。
「私はエルナ。エルナリーナ・ブレイズ。顔を合わせるのは初めましてだな、王子の継承者。」
間違いない。あの要注意人物のリストの顔だ。
だが、なんだ?
「王子の継承者?」
「あぁ、そうだ。私はお前が王子と公園で会合した場にいた。覚えていないか?王子がお前に任せたのを。」
「ちょっと待て!!アレが?」
確かに、顔は思い出せないが、なんとなくそんな気はする。
「感じられるはずだ。何故なら、王子は最後のカケラをお前の中に刷り込ませ、それが原因でこちらに召喚されているはずだからな。」
「じゃあ、もしかして、ニカウが召喚するのも……」
「織り込み済みだ。今は言えないが、お前にはやってもらわねばならぬ事があるからな。」
「それは………」
緊迫した空気が流れる中、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
「お兄様!!」
「うおっ!?」
胴回りに抱き着いてきたのはミナリアだ。
「よかったぁ~!」
「ははは、大げさだな……」
「もぅ!大げさなワケないじゃない!!お兄様、5日間も寝てたんだよ!?」
…………え?
思わず、エルナを見やる。
「本当です。襲撃から5日間、この焼却者の基地で眠り続けていました。」
「その間、エルナったら、ず~っと部屋で勉強・格闘術、講義って………変な合宿みたいで私、そろそろ………」
「ところで、お嬢さま。本日のノルマは?」
それを言われると、ミナリアは「げ」と気まずそうな顔をする。
抜け出してきたらしい。
エルナの目が怖い。
「鬼!!」
「鬼です。」
「悪魔!!」
「ここは魔界。不思議はありません。」
「ムムムムぅ~!!」
「お嬢さま、それが終われば今日はいいですよ」
淡々と受け応えるエルナに頬を膨らませていたが、それを聞くと「すぐやるね!」と部屋へ戻って行った。
「いいのか?エルナさん。俺は王子じゃないのに」
「勘違いするな。お嬢さまは泣き虫だ。お前が王子じゃないと知れば、どうなるか。アルスやニカウも、さぞ苦労して誤魔化したのだ。同胞の苦労を無に帰すほど私は無血な女じゃない。」
「そうか………」
「それと…………エルナでいい。」
そう言うと、少しばかり気恥ずかしそうにその場を去った。
照れ屋なのだろうか?
━━━エルナが行ってしまったので、部屋を出てみる。
驚いたことにマギアルやピリピリヒルの城とは違い、扉などはオートの機械式だ。施設内は驚くほど近代的ではあるが、見て回ると施設内は電気が引かれているのではなく、魔法で電気を発生させているのが分かった。故に電線などは全くと言って良いほど見えない。代わりに特殊な線が描かれている。恐らくはアレが電線の代わりらしい。
歩いていると、兵士があちこちにいる。
茶を飲み、休憩している者から書類を手に忙しなく動く者。ミナリアはと言うと、兵士の訓練に混じり、サンドバッグに鋭いパンチを入れていた。思ったよりパワフルだ。汗を流しながら、こちらに気が付くとニコニコと笑いながら大きく手を振り、すぐに訓練に戻る。
「なぁ、知ってるか?」
「あん?何が?」
通り過ぎそうになるが、向こうの角で兵士が会話している。
「総長の主人だよ」
「あぁ、あの……。男の方はハンパねぇ頑丈な体らしいぞ」
「あの女の子、いいパンチ入れてるぜ。流石は総長が教えてただけはある。」
「どうなんだろうな……。強いのか、どうなのか。足手まといにはならなきゃいいんだが……。」
「我々も手段は選んでられないからな。と言うわけで、相棒、こんなものが………」
……………。
「おぉ!?こ、これは!?」
「こないだ河に飛び込んだ後の麗しい総長の濡れ姿だ」
「イイ……!アングルが」
「欲しいか?」
「良い仕事するぜ、相棒!!」
どうやら、エルナはファンがいるらしい。
にしても、盗撮とは………。
ミナリアの時のノースと言い、兵士と言い、なんで盗撮主義なんだ?
エルナに報告した方がいいだろうか?
「………あ!!」
「どうした?相棒。」
「そ、総長!!いつからそこに!?」
「い、いやこれはですね!!大事な資料と言いますか!!」
「流石は色彩のエルナリーナ総長!全然気がつきませ………」
………………。
━━━━━………「ぎゃあああああああ!!」
必要なかったらしい。
あいつはカメレオンか何かか?
平和なテロリストだ。と言うか、テロリストなのか?
その後、すぐに兵士に呼ばれて会議室へ。
会議室にはミナリアやエルナも同席し、他の兵士も何人か揃っている。
「では、お嬢さま………。落ち着いた頃です。本題を。」
「本題?」
2人とも、すっかり忘れていた。
そうだ。ここにはエルナを連れ戻しにきたのだ。
「ミナ、エルナを連れ出すんだろ………!!」
「あ…………!そうだった。」
目を点にしていたが、ミナリアもようやく思い出す。
ミナリアは机を勢いよく叩くと、言い放った!
「本題もなにもないじゃない!!エルナ!!屋敷に戻りなさい!!あんな辞表、認められないよ!!」
しかし、それには場の空気が重かった。
「総長………」
「あぁ、分かっている。無理です、お嬢さま。」
「なっ………!!」
厳かに言うエルナにミナリアは絶句する。
「何を言っているの!?あなたは我がドリミア家のメイド長でしょう!?お兄様の付き人、その任はどうしたの!?放棄する気!?」
「それは……………」
周囲がざわめき、エルナも口を閉ざしてしまう。
ずっと考えていた事がある。この場で言う事を決める。
「あの襲撃集団…………」
そう言うと、周囲は口を閉ざした。
「俺と何か関係があるんだな?」
「………何故、そう思う?」
「不可解な点が多すぎるんだよ。まず第一に、なぜ俺達が狙われる?あの煙幕が撒かれた瞬間、明らかに焦って俺1人、狙っていた。普通なら、重量の軽く華奢なミナが狙われるハズだ。」
…………沈黙が流れる。
「なのに、俺が狙われた。それに襲撃してきたのは明らかにエルフだ。焼却者とは別のな。エルフは外との外交を絶っている点、それにこの技術力。それに、エルナ。お前は聞けば真面目で忠実。帰る前は関係を疑われる程の間ぶり。それが焼却者で総長?オマケに帰れない?なら、疑問は1つ。」
それだけ言うと、他の兵士達が一斉に腰の銃を引き抜いた!
「エルフ一族は何を狙う?俺が狙われる理由はそこにあり、更にエルナ、お前はそのために焼却者を統率しているんじゃないのか?」
「…………………。」
黙ってはいたが、エルナは思う。
(まったく………本当に似すぎていて困る。)
「御明察。その通りだ。」
エルナが片手で合図すると、兵士達は銃を腰に収めた。
「ただ、何を狙っているかまでは定かではないのです。ただ、王子、あなたが邪魔で、抹殺しようとしている。狙いはそのカケラでしょう。」
「本当にそれだけか………?」
そこへミナリアが口を挟む。
「ねぇ?さっきから2人とも変だよ?なんだか、お兄様が偽物みたいな………」
……………。
それに対しては再び沈黙が流れてしまう。
「とにかく、王子。あなたと私は、あちら側で襲撃を受けましたが、恐らくそれはエルフ一族の差し金です。邪魔にされているのはアナタだけではない。このままでは帰れないのです。」
それだけ言われて、会議は散会になった。
おかしい。
エルナは「何を」隠しているのか。
「むぅ~!!エルナったら、あんな言い方しなくてもいいじゃない!!」
就寝の部屋でミナリアは頬を膨らませていた。
部屋がないとかで、寝る部屋はミナリアと同じ部屋だ。
「それより、どうやったらエルナは戻って来るかだ………」




