無効の従者
「ミナ!ミナリア!」
さっそく、ニカウと庭でお茶をするミナリアのいる場へ。
そこでは謙信もゆっくりと茶をすすっていたが、アルスはいない。
「どうしたの?お兄様。」
「アルスは!?」
「アルスなら、お茶菓子を取りに行ってるよ?」
「好都合ッス」
「そうだな!ミナ、聞いてくれ!何とかなるかもしれない!」
内容を説明する。
ノースが言っていたのは………━━━━
「へそくり?」
「はい。実はミナリア様ファンクラブの運営は殆どがファンの出資なんですが、たまに足らなくなると、どこからともなく会長は資金を取り出すんです!それで疑惑が出たのが………」
「へそくりってワケッスか。」
「裏は?」
「もちろん取れてます!ご自身の個人空間から取り出すのを見た会員がいますから」
…………。
「王子!!」「なんだ、ニカウ」
「脅すッス!!」「奇遇だな!!」
━━━━と言うワケで、高額なエルフの里の通行証をアルスを脅してヘソクリをぶんどる作戦を強行する事を伝えた。
「ヘソクリ…………」
「ふむ。確かにミナが困っているのだ。従者ならむしろ、本望であろう。」
謙信も了承する。
「簡単には行かねぇから相談してるんスよ」
そのニカウの言葉にミナリアも頷く。
「そうよ。アルスは普段はキモいロリコンだけど、屋敷の資産運用を任されるのは倹約家だからでもあるのよ。あのドケチなアルスがヘソクリなんて……」
「渡すワケがないっス」
ドケチとかキモいとか言い過ぎだ。なんで魔界住人は一言多いんだ?
だが確かに。数日、アルスの動向を見た事はある。
料理に掃除に甲斐甲斐しいが、その実、思い返せばムダがない。材料や資材もキッカリ管理され、明らかに要らなそうなものも何かに使われている。ゴミも少なく、倹約家には違いない。
「おや、みなさん、お揃いですか?」
そこへ当の本人がやってくる。
手にした皿には菓子が乗せられ、ニッコリ笑っている。
全員が、ただならぬ雰囲気でアルスをじっと見る。
「ど、どうしたんですか?私、何か」
「アルス殿、貴殿………」
「ヘソクリがあるんッスね」
ゆっくりと謙信とニカウがアルスの背後に回る。
「へ?」
「とぼけない方がいい。ファンクラブの運営にも平気で注ぎこめる財があるとか……」
「持ってるの?アルス?」
姫と王子のダブルスで、従者に詰め寄る。
こう言うのどこかで見た気がする。
「な、何のことでしょう?」
アルスがとぼけると、背後のニカウと謙信が腕をガッシリ掴む。
「出せ………」
「い、いやです」
「アルス!出して!!」
「い、いくら姫でもダメです!あと、言葉!なんかはしたないですよ!」
「出せ!!」「出してぇ!!」
「ノォオオ!!」
問い詰められると上着だけを残して素早く脱出した!
あいつはどこかの三世怪盗か。
「逃げたぞ!!」
「追え!!」
こうして、アルス追撃が始まる!!
しかし、一日中追っても、アルスは捕まらない。
本気でどこかの三世怪盗みたいだ。
仕方なく、アルスには建前上「諦めた」と言って平常を装いつつ、促す方向になった。
逃げられるなら、逃げられないようにしつこく迫ってしまおうと言う「アルス三世・ピリピリヒルの城」と名付けられた作戦(ミナリア命名)が決行された。
━━━朝食時━━━
「あぁ、今日も美味いな。」
「あ、そうそう!お兄様、今日のモーニングのジュースはエルナが考案したんだよ!」
「へぇ。これが………」
「ほぅ、エルナ殿はそう言う才もあるのか」
じ~っ………………
「そんな目で見てもダメです!」
全員、舌打ち
━━ある日の午前中━━━
掃除中のアルス………
「ふむ、精が出るな!」
「あぁ、信玄さん。いやはや、これも私の仕事ですから」
「どれ、たまにはワシも手伝うか!甲斐甲斐しくやってやろう!甲斐の虎だけに!!」
…………。
「ふふふ………!」
「信玄さん、面白くないです」
「なん………じゃと………!?」
それを影で見ていた謙信がボソリと呟いた。
「サムいのは頭だけにしろハゲ………」
恐らく、好感を買いたかったのだろうが失敗。




