仁義なき「L」VS「G」
ここは包み隠さず、そのままの自分で行こうと思う。
「喉渇かないか?何かオススメないか?」
「う~ん。ポヨポヨドリンクかな」
「ポヨ?」
「もぅ!お兄様は相変わらずなんだから!マカイポヨポヨから絞るドリンクだよ!美容健康にいいんだよ?最近、流行りなの!」
ミナリアに手を引かれて、屋台の前に行く。
そこにはかなりムキムキな牛の顔のオジサンが立っている。ミノタウロスみたいだ。
が…………
その屋台のカゴには白くて「ポヨポヨ」言ってるソフトボールくらいの可愛くて丸い鳥みたいなものが入ってる。まさか、いや、アレがマカイポヨポヨ?
「おう!ミナリアちゃん!今日も来てくれたのかぃ!?」
「うん!!おじさん、2つね!!」
「あいよ!!」
威勢の良いオヤジはカップに手から出した魔法のものと思われる沢山の氷を詰め込み、カゴから白くて丸いのを取り出す。
あぁ、まさか………
「今日のはイイ感じのポヨポヨだぜ!?」
「ポヨォオォオ!?」
オヤジはそのまま素手で豪快にそれを捻り潰す!
マカイポヨポヨからは目玉とか色々とオレンジ色の体液と共に飛び出し、それは外気に触れると全て液体になり、注がれる。
熱いのか、氷に触れると蒸気が出て、氷が溶け出し、たっぷり大容量だ!
「ミナリアちゃん、可愛いからクリームもオマケしちゃうぜ?」
「わぁい!おじさん、ありがとう!!」
皮だけになったポヨポヨは豪快にゴミ箱に捨てられる。可哀想なポヨポヨ。
はしゃぐ女子と笑顔のオジサンの裏にはポヨポヨの皮が山に連なる。屍の山である。
どう見てもスプラッタである。
「ところで、そちらは彼氏さんかい?」
「もぉ!違うよ!お兄様だよ!こないだ2年ぶりに異界旅から帰ってきたの!」
「へぇ~、異界旅ねぇ」
良かった。どうやら会話は普通に出来そうだ。
「妹がいつもお世話になってます。ハルトです。あいにく、異界旅でカケラになってしまいまして記憶は曖昧なのですが」
「いえ、こちらこそ!俺はヨイチってんです!いやぁ、マギアル屈指のお嬢さんにひいきにしてもらって、ウチも助かってます!今後ともよろしくお願いしやす!」
「ところで、ヨイチさん。最近、この街に異変は?」
見た目はゴツいし、あのポヨポヨを笑顔で豪快に潰して、スプラッタした時はどうかと思ったが、魔界もそんなに話の通じないものでもないようだ。
「いやぁ、知っての通りですよ!低級ゴブリンの連中が夜になると街中に出て来て大変なんです。同期の商人ゴブリンの連中は風評被害で商売はアガるし。ほら、ここは王国とかじゃなく自治帯でしょ?雇われの連中も実力はあっても警護ならともかく、勇者じゃあるまいし退治はねぇ………。ウチもこないだやられたんですよ」
「え?おじさんも?」
「そうなんだよミナリアちゃん!商品のポヨポヨを積んだ荷を荒らされてなぁ。このまんまだと、商売がやりづらくて、みんな撤退しちまうんじゃないかな」
芳しくない。もしも、商売がなければ、街は潤わなくなる。
雇用や活気がなくなれば、若手は皆、離れていき身動きの取れない老人達ばかりが残り、数年後は限界集落になりかねない。
そうなれば屈指の貴族とか言っていたが、ミナリア達も困窮してイヤな思いもするだろう。
実家が母子家庭で、母親が男に傾倒して金を注ぎ込み、兄妹でひもじい思いや荒れた事を思い出すと、そんな先は想像したくもない。
「それはマズいですね。」
「だろ!?なぁ、あんちゃん!なんとかしてくれよ!俺もこのままミナリアちゃんに提供できなくなるのもイヤだしよぉ。」
「安心して下さい。手は打ち始めてます。ご同業の方にも、そうお伝えいただければ幸いです。」
王子と言う建前から、敢然とした態度で臨むとヨイチさんもニヤリと笑う。
「ほぉ!じゃ、一丁!王子さまのお手並み拝見といこうかい!」
「お兄様はスゴいんだから!きっと大丈夫だよ!」
「はっはっは!そいつぁ、楽しみだ!!んじゃ、またな!お嬢ちゃん!」
「ばいば~い!」
………最初は500の相手と聞き、それだけで頭がいっぱいだった。
だが、ヨイチさんと話してわかる。思った以上に市民に不安が募り、また対応も上手く行ってないことも。
そんなに強くないとアルスは言っていたが、長らく放置すれば最悪は悪い未来に直結しかねない。
「これはまずいな、ミナ。」
「そうだよ?だからミーティングしたんだから!」
こんなナリはしているが、ちゃんと考えられているのだ。
単に1人でどうにか出来なかっただけなのかもしれないが、ミナリアは1人前なのかもしれない。
「でも大魔界ミーティングはどうかと思うぞ?」
「えぇ!?や、やっぱり………」
「うん。ダサい。」
ショボンと肩を落とすミナリアの横で、ポヨポヨドリンクを飲んでみる。甘くてまろみのあるクリームの下のポヨポヨドリンクは見た目通り、酸味があり、なんだか柑橘系のドリンクみたいで以外と美味かった。




