仁義なき「L」VS「G」
「さて………次はどんな友達が欲しいんだ?」
翌日、魔術の間に再び集合する。
謙信は「すぐ戻る」と書き置きして、城から1人どこかへ出たようだ。昨晩はミナリアが「謙信ちゃんと一緒に寝たい!」とか言いだし、またアルスと謙信が口争いをしたが、結局ミナリアと謙信は昨晩、一緒に寝たらしい。
「……………。」
「アルス?どうしたのだ?」
アルスは口数も少なく、肩を落としていた。
恐らく、朝食の席でミナリアが「謙信ちゃん、温かかった」などと言ったため純粋な意味を履き違えたのか、何かその言葉が衝撃を与えたのだろう。
「そっとして置くッス」
「そう?なら、次は虎がいいな!強そう!!」
相変わらず、何かズレている。
ドラゴンの次は虎ですか。我が姫は天才らしい。
とにかく、スマホの検索に虎と入れる……。
「王子!!」
「なんだ、アルス」
「男性!と限定して下さい!!」
「あ~、はいはい」
よほど謙信に姫が懐いてしまったのが気に入らないのか、それとも負けたのが屈辱なのか。
兎も角、その目がなんだか怖いので、虎と男とだけ入れた。召喚は謎が多いとか言うが、例え虎と呼ばれた男が現れても、よほどでなければ事故はないだろう。虎と呼ばれる者は沢山いるハズだ。
「虎♪虎♪虎♪タイガー・シマシマ・王者~♪」
召喚陣が起動し始めるとミナリアは、浮ついた様子で歌い出す。なんだその歌は。
光の柱が立ち始めた頃、謙信が帰ってくる。
「なんだここか。何をしておるのだ?」
「タイガーさんを呼んでるの♪」
「ほぅ。その様子では余程なのだな。ところでたいがーさんとは何だ?」
「虎だよ!謙信ちゃん!」
「なにぃ!?」
謙信は慌てた様子で、陣を触りだした!
陣がバチバチと電撃音の様な音を放ち始める!
「ばか!なにしてるんだ!!」
「放せ!放さぬかっっ!!」
「落ち着くッス!陣は何が起こるか分からないんスよ!?」
「姫の友達のためです!!」
慌てる謙信を3人掛かりで取り押さえる!
何せよく分からない陣を起動しているのだ。爆発や何か命に関わる事になればミナリアの友達どころではない。
やがて、光の柱が収まるとそこから獅子の兜をかぶった厳つい男性が現れた。そのシルエットを見ただけで分かる!
赤い具足に4つの菱形の家紋。最悪だ!事故った!!
「ぬ、ここは………?確かワシは」
「………必ず貴様が来ると思うておったぞ」
謙信が射殺す様な瞳で男性を睨む。
男性も、謙信を睨み返す。もう確定だ。最悪すぎる。
「わぁ!すごいモサモサ!カッコイイ!!謙信ちゃん、知ってるの?」
そんな気まずい雰囲気もものともしないミナリア。
あぁ、知らぬとは怖い。
「ふむ。なかなか見る目があるな、童女。」
「知ってるも何も、こやつは武田信玄。甲斐の虎。我が永遠の好敵手!!川中島で渡り合うも幾数回!」
「いかにも。貴様の敵、甲斐の虎である!」
あぁ、やっぱり。
せっかく謙信、懐柔したのに。これはマズい。
「ん?ライバルなの?」
「ライバルだ!男のクセに男を抱く!女房いるクセにな!!」
「ぬかせ!女のクセに女にしか興味のない不貞者が!!」
え………?
「大体なんだ貴様!正室、側室いるのに小姓に恋文だと!?笑わせるな!不貞者は貴様であろう!」
「源助は美しいのだから美しければ男でも良かろう!そもそも女は!!」
「黙れ!!男こそ!!」
………何だか、おかしい。
「ねぇ、何で2人は仲が悪いの?」
(((えぇ~?それ今聞いちゃうんですか姫)))
ミナリアの天然気味な問いかけに執事も王子代行も召喚師も同じ事を思う。肝心な2人はと言うと………
「こいつが女ばかり!!」
「こいつが男ばかり!!」
息、ピッタリです。はい。仲良いんじゃないの?
「誰が仲良しか!!」
「誰が仲良しか!!」
「………なんだ?やるのか?」
「ぬかせ、ハゲが」
まだ誰も何も言ってません。
説得しようとしたが、乱闘しはじめて話にならなくなってしまう。つかみ合いの、取っ組み合いの、もう刀とか体術とかクソも無い。謙信の髪を引っ張ったり、信玄の兜が取れて露見したハゲを真っ赤になるまでひっ叩いたり、乳揉んだり、金的攻撃したり、もちろん口も休まない。
「ハゲ!!」「越後の愚図!」「やかましい!」「無駄乳が!」「お前の兜、モサモサしてかゆくなりそうなんだよっ!!」「貴様こそ、その無駄乳でたぶらかしてんだろ!猿か!」「貴様もだろうが!」
もう、次から次へと「よく思いつくな」と言わんばかりのオンパレードだ。ディスり・オン・パレード。
誰かが止めなくては……。
「アルス………」
「はい、姫。」
ミナリアが手を出すと、アルスがどこからともなく等身大くらいの巨大なハリセンを出した。それを取っ組み合いする2人の横で大きく振りかぶる。
おいおい、まさか………
「あ、耳、ふさいで下さい。」
アルスに言われてニカウとヒロは耳を塞いだ。
「ケンカはダメぇええええっ!!」
「なっ!?」「ぬぉ!?」
姫の怒声と共にハリセンのスパァン!!と言う強大な音が鳴り響き、信玄と謙信は2人で揃って吹き飛ばされる。「ぐぇ!」と壁に叩きつけられたサマは潰れたカエルの様だ。
━━━………
「まったく!分かってるの!?」
「はい。すんません……。」
「調子に乗りました……。」
しおらしくさせて正座させられる豪傑2人。タイガー&ドラゴン。
「私は友達が欲しいだけなの!謙信ちゃんにも、信玄くんにも仲良くして欲しいの!!」
そんな姫の言葉に2人とも「え?こいつと?」みたいな顔をするので、姫がまたハリセンで地を叩く。
「あ、はい」「わかりました。」
「分かればよろしい!じゃ、明日からはゴブリン退治したいから助けてね♪」
ニッコリ笑う姫に、2人ともイヤそうに頷く。
なんだか、この姫が最強なんじゃないかと思う。「では」とアルスが信玄を案内しようとすると、再び謙信が「ふっ」と鼻で笑い、信玄がムッとする。
それを見て、姫がまたハリセンで地面を叩く!!
「やめなさいよ!!」
「あ、はい」
「すみませんです」
こうして、武田信玄が仲間になった。
現在のメンバー………
姫。王子代理。執事。毒舌召喚師。
軍神。禿虎。
…………あれぇ!?おかしいぞ!?
仲間が増えたら、厄介になった!!わー不思議!!
(このメンバーで大丈夫なのか……)
果てしなく不安だ。




