仁義なき「L」VS「G」
「主君に救われたな。いや、神の気紛れ。龍の逆鱗に触れたワケでもない。ただの余興よ……」
謙信はそう言うと背を向けると刀を回収した。
「待て!まだ負けたワケでは!!」
「いや、負けッスよ……」
ニカウが構えるアルスを留める。アルスの顔に汗が伝い、足が震えた。それを見ていたヒロには経験があり、分かった。自分ではどうしようもない圧倒的な力。それを前にした感覚。特に天災なら尚更だ。命の脆さを実感させられてしまう。
アルスは無力さの他に、それらを感じたのだ。
「アルスッッ!!」
ミナリアは泣きながらアルスに抱き着く。
「バカ!!」
「姫、すみません。」
それを見て、謙信は背を向けて城とは違う方へ向けて歩き始めた。
泣きじゃくる様子のミナリアの頭を撫でていたが、それに気が付く!
「待てよ!!」
「……………。」
謙信は足を止める。
「私は、その娘を傷付けた。ここには私を知り、信仰し、愛する民もない。帰る場もない。」
「自害でもするつもりか!?」
「貴様に何が分かる。私は越後の龍。毘沙門天の化身。守るのは民。民も領地もない。もしも、その男を殺していたなら、私はもう毘沙門天の化身ですらなく、ただの人斬りだ。」
「違う!!」
ヒロは手を引くと肩を掴み、まっすぐに見つめて言い放つ!
「アンタは確かに力を示した!!それはアンタが神だから出来た事だ!!あの子には、ミナリアにはアンタの力が必要だ!!頼む!!」
「……………。」
そう言われると、謙信は目を閉じて、一瞬、思惑した様に溜息をつく。
そして、ミナリアに再び近付くと告げた。
「必要か?」
ミナリアは涙を拭きながら謙信を見た。
「うん。」
「では、どう在ればよい?お前も私に望むか?神を。」
その問いかけに、ミナリアは首を横に振った。
「友達。私と……友達になって!!」
「友………だと?」
それを聞いた謙信は肩を下げて、力抜けた様になり、笑い出した。
「ふ………!ふはは、はっはっはっは!!」
「謙信ちゃん?」
天を仰ぎ、腹の底から高笑いする謙信の目からは何かが輝いた。しかし、直後にゲリラ豪雨が通り過ぎて、それはらは涙だったのかも分からなくなる。ずぶ濡れのまま、謙信は笑った。
「今日から友達。友達だ、私が!!」
「ホントに!?」
「あぁ!」
「買い物とか、一緒にしてくれる!?」
「あぁ!」
「スィーツ一緒に食べたり、恋バナとかしたりしてくれる!?」
「あぁ!あぁ!いいとも!」
「………嬉しい!!」
ミナリアも満面の笑みで笑う!
そこにはもう、来た時の何だか堅苦しい感じはなかった。
「さ、みんな!」
そこに割り込む様に声を上げてみる。
「突然、雨が降ったり汗掻いたりしただろ!改めて風呂、入ろうぜ!!」
「うん!!謙信ちゃん、行こう!!」
「あ………」
謙信は一瞬、ヒロやアルス、ニカウの方を振り向く。
ニカウは普段通りだが、ヒロは親指をグッと立てて笑っていた。
アルスも、謙信に対して深々と頭を下げた。
それは「姫をお願いします」と言っている様にも見えた。
「うん!!行こう!!」
謙信は濡れたまま走り出した。
ここは日ノ本ではない。越後でもない。もう神として背負うものもないだろう。それは寂しくもある。
目の前にある笑顔は民草の笑顔とは違うかもしれない。
ライバルはいても、友はいなかった。
これはそんな女と、ひとりぼっちの姫さまの新しい始まりだった。
「いやぁ、良かった。」
「どうなるかと思ったッスよ」
「私はまだ許してません!あの女、姫に何するか……」
「でも、いいじゃん。ミナにはあぁして、友達が出来たんだから。」
その様子を見て、アルスとニカウはパチパチと瞬きしていた。
「………なんだよ?」
「いえ。本当にヒロさんは王子に」
「そうっスね。そっくりッス。王子も必至な割に最後はそんな風に落ち着いてたッスよ」
「………そうか」
気が付いたら、必至になっていた。
謙信を呼び出して、説得して………
でも、なんであそこまで出来たのか、風呂に入りながら考えても分からなかった。




