代役のお兄様
それからと言うものの……
「ハルト王子の衣服ですが、この際、これで!」
衣装も着替え、髪型も散髪し、そのハルト王子に似せたらしい。執事のアルスは万能と言うか。
「何でもできるんだな?」
「えぇ、はい。王子はそうでもありませんでしたが、姫は結構ワガママな所もありますから。」
気のせいか、この髪型、どこかで見た様な……
「何て言ったっけ。」
「ミナリア姫です。ハルト王子はミナと呼んでいましたが、記憶もないカケラとして伝わっていますから、その辺りは大丈夫でしょう。」
「あぁ、それは良いんだが、どんな娘なんだ?」
「姫ですか?そうですね………」
アルスは髪型を確認していた鏡を置くと、アゴに手をやると、ほどなく回答を出した。
「姫はお優しい方です。髪が綺麗で、甘えん坊で、ブラコンで、ハンバーグ大好きで、寝るときはお気に入りのアックマ人形がないと寝られない!もうすぐ魔界の合法ロリになる偉大なお方です。」
なんだかろくな説明になっていない。
と言うか、この執事、大丈夫なのか……。
「アンタ、ロリコンなのか?」
「ロリコンじゃありません!!姫ラブなだけです!ミナリア姫ファンクラブ名誉会長なんですよ!私!!」
仕えてるクセにファンクラブ名誉会長なのか。
いよいよ持って、重症だ。
「だが、髪がキレイなのはポイント高いな。」
「ほほぅ!いいですね!いい傾向です!あなたもファンに?」
「ならねぇよッッ!!」
「さて、ファンになる事は次までに考えていただいて!アナタには職務が事実上できます。」
「職務?」
「はい。ハルト王子は王子ですからね!とは言え、記憶もない王子のカケラとしては姫のアシストと言う形ですが。」
あぁ、そうか。
魔界でもどうやら政治はあるらしい。法律とか律儀なものは殆ど無い。が、集められた資金を使い、付近のマギアル街の運営に関して二人三脚で王子とこなしていた所、今は姫1人でこなして、問題は山積みらしい。
統治を任せる代わりに集められる資金の運営らしいが、その資金には生活費なども含まれ、不満があると住民の可決で減らされたりする場合もあるらしく、重要な役割らしい。
「………さて、そんな所ですかね!そろそろお食事です。魔界初の料理は腕を奮いますから、お楽しみに!!」
何だかんだ、風呂に無理矢理突き落とす召喚師とかロリコンな執事で心配だったが、そんな言葉を聞くと安心する。
大魔界なんて言うけど、割と馴れでどうにかなるのかもしれない。
なるかもしれない!と、思っていた。
この時は!!
━━━━そして、夕食。
大きな長テーブルには食事(?)が皿に盛り付けられている。
大きな目玉焼きは黄身が本当に大きな目玉だ。こちらをじっと見ている(ように見える)。仲間にはできないらしい。
サラダ(?)と見える皿の中には、蠢く緑色の何か。生きてるって素晴らしい!!
パン(?)にいたっては、イモムシみたいな形でユルリとした動きで木を編んだカゴの中を這っている。外を夢見ているらしい。
(うん!!やっぱり魔界だよね!!)
「お兄様、どうしたの?」
ニッコリ笑ってみるが、涙が出る。
会い向かいにはミナリア姫。
これを違和感なく、食べなきゃならないらしい。
「あはは!いや、なんだか魔界の食べ方忘れちゃった!」
「そっか!そうだよね!2年もいなかったし、まだカケラなんだもん!無理ないよ!」
言ってはみるが、コレを食うのかと思うと気が重い。
と言うか、あの目玉、生きてないか?
イモムシ、じっとしてろ!!野菜、黙れ!!
「本日は千年眼のビックリ目玉焼き。業火で育ったポテトキャタ。マンネンドレイクサラダです。」
お品書きを告げると、アルスとニカウも席に着く。
どうやら、みんなで食べるらしい。
2人の目が、こちらに「黙って食え」と訴えている。




