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第七話 夕食の席で

2017/03/15 誤字修正等を行いました


活動報告でも上げましたが、現在目の病気で執筆活動に制限が出ております。

可能な限り執筆は続けておりますが、更新はかなり遅れる事と思われます。

ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 ハッドンが手配してくれたおかげで、とりあえず今日の宿は問題ない。まあ、早めに金を稼げるようにならないとジリ貧である事には代わりはないが。


 そんな俺に、ハッドンは夕食まで奢ってくれると言う。正直悪いと一度は断ったのだが、彼女としても俺に聞きたい事があるらしく、その情報料と言われれば断るのは無粋だろう。それに節約できる事に変わりはない。


 荷物も特にある訳ではないので、俺とハッドンはギルド併設の酒場で夕食を摂る事にした。


「正直、ギルド併設の酒場と聞いて料理には余り期待していなかったんだが、思ったよりも旨いな」


 出された料理はオーク肉のソテーにサラダ。それとピラフのような飯だ。量もそこそこにあるのだが、メニューに書かれている金額は、銅板七枚と青銅貨五枚の七十五ゴル。オークなどの食用になるモンスターは、かなり一般的に食べられているらしい。味は普通に豚肉と同じだと思う。


 ちなみにオーク肉のソテーは標準で一六オンス。量を減らしても金額は安くならないが、五オンス増すごとに五ゴル増しの金額となる。冒険者は女性でも大食らいが多いらしく、そもそもギルド併設店で食べる者で残すような者はいないらしい。


「満足してもらえたようで何より。私も普段はここで食事をすることが多いし、金額も良心的なんだ。何せギルド直営店だから、冒険者が討伐したモンスターを原価で仕入れられるので、普通の店よりも大体三割は安いな」


「なるほど……それなら安いのも納得だ」


 どんな所でも、仕入れ先が一番安価に供給は可能になるはずだ。まあ、実際にそうするかどうかは別だろうが。


「それで、どうなんだ? 記憶は少しでも戻りそうなのか?」


 食事も大体終わり、今は常温のワインを飲んでいる。水とワインの値段がほとんど変わらないらしく、普人(ふひと)の場合でも十歳前後から普通にワインを飲むらしい。ドワーフのような種族ともなると、一歳から飲んでいる場合も少なくないという。


 まあ、飲酒や喫煙に関する法律がないのだから、別に何歳から飲んでも関係ないと言えばその通りなのだが。しかし、なぜか酒やタバコは二〇歳を過ぎてからという言葉が思い浮かぶ。


「どうかしたのか?」


「いや、大した事じゃないさ。それよりもだいぶ夜も更けてきたのに、人が減らないな」


「ああ、その事か」


 ハッドンが周囲を一度見てから、その答えを教えてくれた。


「冒険者ギルドに限るが、ここは一日中解放されているんだ。まあ、食事は流石に時間制限があるが。なのでここで一夜を明かす者も多いのさ。本当は禁止されているんだが、それを言い出すと以前に治安が悪くなったらしい」


 冒険者となると、確かにガラが悪いのもいるだろう。そういった意味では、彼女が言う事にも納得できる。下手に閉め出すよりは、ここにいてくれた方が町としても助かるのだろう。


「それにしても、あれだけの体力その他、正直驚きだよ。私も色々とみてきたが、まさか片手で四百ポンドの重りを軽々と持ち上げられた時には、驚きを隠せなかった」


 夕方までかけて色々行った測定で、一通り自分の体力については何となくだが理解できた気がする。ハッドンが言うには、剣術などはまだ見ていないので何とも言えないらしいが、運動能力だけなら達人の域らしい。もちろん俺はまだそんなつもりも無いんだが。


「記憶が少しでも戻れば、何か答えられるかもしれないが、正直実感がまるで無いな」


 何かを思い出せそうなんだが、どうも今ひとつ何かが足りない。まあ、こんな事は焦っても仕方がないだろう。


「ああ、それと明日の予定だが、今日の測定結果を見る限り、前衛タイプだと思う。弓系統のスキルも取ったようだが、まずは剣術をしっかりと鍛えた方が良いと思う。まあ、君の意見を無視するつもりもないので、明日どうするか一応聞いておきたいのだが」


「一つのことに専念した方が得策だな。分かった、剣術で構わない」


 しかし、剣など俺は使ったことがあったのか今でも疑問だ。その時、脳内に響くような強い刺激が走り、思わず両手で頭を抱えた。


「おい、大丈夫か!」


 ハッドンが声をかけてきたが、それどころじゃない。何だか頭が混乱してきた。目眩までする。


 ハッドンが誰かを呼びに行ったようだが、今はそれどころじゃない。まるで頭の中を手でかき回されているような感じだ。テーブルに伏しながら思わず喘ぐが、何かが頭の中で組み合わさっていく感じがする。だけど、どうも――。


    ――――――――――


 目を覚ますと、まだ少し頭が痛いけども痛みはだいぶ治まっている。ここは一体……?


「大丈夫か!?」


 俺の顔をハッドンが覗き込んでいる。一体何が?


「ああ、多分。少しまだ頭が痛いけど、大丈夫だと思う。それよりここは?」


「ギルドの医務室だ。一体どうしたんだ? 急に頭を抱えて倒れたんだぞ」


 言われて、あの死んだ時の記憶や、その後の事を思い出した。そう言えば青鬼が一時的な記憶喪失になると言っていたな。しかし、この事を話しても信じてはもらえないだろう。


 そして記憶が整理されたのか、今まで使い方がまるで分からなかったスキルの使い方も自然に分かる。


「理由は分からないけど、一応それなりに記憶が戻ったみたいだよ。心配させて悪かった」


「おぉ、それはおめでとう。名前とかは大丈夫か?」


 流石にこの世界に来る前のフルネームを言うのは不味いだろう。名前や年齢については今まで通りと伝え、どこから来たのかは相変わらず思い出せないと伝えた。流石にそれ以上は聞いてこないみたいだ。


「それにしても、少し感じが変わったな。前は年齢の割に大人びた言い方だったが、今の方が自然だ」


「そうかな? 俺にはあまり実感が無いけど」


「一時的な記憶の混乱だったんだと思う。一応医者の診察を受けておいてくれ。今日はその後部屋に送らせるよ。明日は大丈夫か?」


「ああ。大丈夫だと思う。何にしても、ここに運んでくれて助かったよ。ありがとう、ハッドン」


 多分ハッドンが運んでくれたんだと思う。


「気にしないでくれ。それに、無理はするなよ? 明日ダメなら、それはそれで構わないからな。では、私はこの辺で失礼するよ。医者が待っているからね」


 そう言ってハッドンが部屋から出て行き、代わりに白い前掛けを付けたエルフの男性が入ってきた。多分彼が医者なのだろう。


 医者に一応診てもらい、特に異常も無いとの事で、今日はそのまま案内された部屋で寝る事にした。

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