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第二一話 武器を買う前に問題が出るとは

 拾った武器や鎧などをの査定を待つ間、町の様子を見る事にする。


 とりあえずは今後のことを考えて、エレナの装備を充実させるのと、長期移動に備えての食料品などを用意する事だ。


 エレナの魔法適性 水、風、光が主だが、僅かにそれ以外の魔法適性もあるようだ。ただ、今まで様々な要因が重なり、敵性魔法までもが上手く訓練できていないと分かる。むしろきちんとした訓練さえ行えば、彼女は下手な者よりもよっぽど強くなれる素質があるのは確かだ。


 ただし俺にエレナの才能を伸ばせるかと言われると、正直どうすれば良いのか迷う。


 単純な訓練であれば教えることは可能だろうが、それで彼女の才能を十分に引き出せるかと問われると、現状では無理だろう。かといって、旅の途中で誰かに師事するというのも現実的ではないし、いくら追っ手が最近見なくなったとはいえ、まだまだこの辺りだと普人(ふひと)の数もそれなりに多い。


「なあ、エレナ。一応一通り信樹は使えると言っていたな?」


「ええ。でも、現実的にナイフか杖で後方支援が今は現実的かと思うわ。対人戦闘スキルは、そんなに高いと思えないし、今の私だと重い装備は扱えないもの」


 自らの特性をある程度把握しているからこそ、最良な答えを瞬時に導き出せる。これが単なる間抜けだと『色々試してみたい』などと言い始め、本当に良い装備が何かすら分からなくなるため、当然生存率が急低下する。


 それにこう言っては何だが、近接職向けの戦闘訓練などさほど受けていないのは明らかだ。精々護身用に手ほどきを多少受けた程度だろう。それで接近性が出来るとは言えない。つまり彼女は実質、魔法系統での支援が現状での最良の選択となる。


「しかし、この先強い魔物が現れるようだし、もう少し装備は充実させたいところだな。それに今ならある程度の物を用意することも出来るだろう。とりあえず俺は防具関連を見直した方が良いと思うが、エレナは何か希望があったりするのか?」


「そうね・・・・・・後方支援を重視するとしても、動きやすさは確保したいわ。ある程度はタカオが対処してくれるとは思うけど、それだって確実とは言えないでしょ? なら、タカオが倒し損なっても、私は動きやすさを優先しながら、その上で魔法による攻撃を素早く出来た方が良いと思うんだけど、どう思う?」


「悪くないと思うが、それなら魔法が素早く発動できる物も用意した方が良さそうだ。まあ、とりあえず店に行ってみるか」


    ――――――――――


 買い取りを依頼している店を訪れ、武器や防具を見ることにする。


「おう。まだ査定は終わっていないぞ?」


「いや。今日は品物を見せてもらいに来た」


「そうか。色々あるが、まあ見て行ってくれ。質問があれば受け付けるからな」


 そのまま店内を見て行く。予想していたよりも品揃えは豊富で、汎用品的な物もあれば、どちらかと言えば使う者を選びそうな物も展示されていた。むしろ一部の棚などでは、かなり使い手を選びそうな物が並んでいる。


「こっちに杖があったわ」


 彼女に言われ、その展示エリアに行くと、大小様々どころか、上腕サイズでも金貨20枚や30枚の品物まである。先端に浸けられた宝玉のような物はもちろん、杖本体も他の物と比べると明らかに素材が違っているのが分かった。


 それ以外にも杖ではあるのだが、所謂仕込み杖もあり、種類はかなり豊富と言えるだろう。


「ねえ。これって実用性があるとは思えないのだけど・・・・・・」


 彼女が見ていた杖は、壁の上の方で横向きに展示されていたが、その長さが明らかにおかしい。少なくとも俺の身長の倍以上はある。しかも付けられている宝玉はいくつもあり、使用されている本体の杖部分も小さな宝玉がちりばめられていた。少なくとも普通の者が持てるとは思わないし、金額も金貨3000枚とダントツに高い。


「あー・・・・・・それは設置型の杖だ」


 いつの間にか店員の一人が俺達の側に来ていた。


「とは言っても、実際問題使えない欠陥装備だがな」


「欠陥装備?」


 欠陥装備をわざわざこんな目立つ所に置くのか?


「城塞などの中で防衛する時に使うために作られたらしいんだが、この杖を使おうとしてもまず魔力が足りない。調べた限りじゃ、優秀な魔法使いが10人がかりでようやく起動できるらしい。しかも起動だけで、そこからさらに魔法を使うには、もっと大人数の魔法使いが必要だとか聞いたな」


 魔力という意味では、俺なら扱える可能性がある。しかし大きさがいくら何でも非常識だ。


「さらに実際に使うと、どんな魔法でも広範囲魔法になり、回復魔法を味方に使ったと思ったら、攻め込んできている奴まで回復させたらしい。攻撃魔法を使った場合にどうなるかは、誰も知らない代物さ」


 この分だと、周囲の味方まで攻撃しそうだ。当然欠陥品だが、売っている意味があるのか余計に疑問でしかない。


「一応展示はしているが、まあ誰も買わないだろうな。少なくともまともな奴なら。それでも客寄せにはなるんだよ」


 そう言って店員は俺達を見て笑う。


 確かに店員の言うとおり、客引効果はあると納得してしまった。


「それによ。あんたは実力者のようだからこんな物は買わないと思うが、普人(ふひと)の連中で見た目だけで買うバカはいるんだ。そういった客寄せにも役立つから、これはこれで良いのさ」


 それを客の前で言うかと思うが、考え方を変えればそれだけ俺の事は見た目だけでも認められているという事だろう。それ自体は悪い気はしない。


「嬢ちゃんもこういった武器の周囲にある物は気を付けな。この周囲に置いている物は値段が高いだけのガラクタさ。そもそも本当に良い物は、倉庫の奥に保管してあるんだから、どういった武器を使いたいか分かっているのであれば、俺達に相談した方が確実だな。旦那の方は良い武器を持っているようだから、正直ここの店でそれと同等の物は無理だぜ」


 そう言ってチラリと腰に差してある刀を見る。一見しただけである程度の価値が分かる程、こういった物には慣れているのだろう。


「まあ、追加で何か買いたい時はいつでも声をかけてくれ。流石に最高級品は無いが、それなりの物は一通り揃えているつもりだ。じゃあ、邪魔したな」


 店員はそう言い残して、俺達の側を離れていった。ある意味悪い店員ではないと言える。ただ、金にものを言わせる貴族のような連中が嫌いなのだろう。人を選ぶと言えばそうだが、客商売など人を見て選ぶなど当たり前でしかない。


「金は一応あるのだし、店員に聞いてみるか?」


「そうですね。私のような素人が選んでも、良い物は見つけられそうにないですし、ちゃんと内容を確認した方が確実だと私も思います。他にもナイフなど一応見たいですし」


「ああ。ナイフなどはあった方が便利だし、最悪最後の手段に使えるな」


 勿論自害するという意味ではない。隠し武器などとして、小型のナイフであれば最低限の護身用にはなるだろう。自害など早々はするものではない。あがなえるなら、最後まであがなうべきだ。


「一番良いのは、どの武器が一番相性が良いのか簡単に分かれば確実なんだが、こればかりはな……」


 スキルなどがあったとしても、本当に相性が良い武器が大事だと俺は思う。まあ、ある程度の見た目は気にした方が良いだろうが、普通は極度に見た目が悪い装備など無いはずだ。


 少し周囲を見渡して、比較的暇そうな店員・・・・・・とはいえ、商品を棚に並べてはいるが、そんな男に武器の相談をすることにした。


「なるほど。そちらのお嬢さん向けの杖ですか、それと護身用のナイフですね。失礼ですが、ステータスカードはお持ちですか?」


 俺がエレナへステータスカードを見せるように言うと、それを取り出した彼女が店員に見せる。すると店員はどこか残念そうな顔をしてから、ステータスカードを返した。


「お客さん。このステータスカードは、普人(ふひと)の町で製作した物ですね? これだと、お客さんに合った装備を見繕うのは少々手間取りますねぇ。まあ、これでも問題は無いのですが、昨日ちょっと聞いたところ、普人(ふひと)の町から逃げているらしいな。だったら、こっちで作り直しても困らないどころか、本来ステータスカードはこっちの技術だ。もっと正確にステータスを判定できるが、それからでも良くないか?」


「つまり何か? 普人(ふひと)の町で計測している能力値は、不完全だと?」


「その認識で大方間違っていない。それに普人(ふひと)の技術では、こっちで製作したステータスカードは、向こうで作った物と同じように見えるらしいからな。人数だけ多い普人(ふひと)など、それ以外は正直たいしたことなど無いのさ」


 そう言いながら店員は大笑いをしている。そしてそれを見たエレナは、呆気にとられていた。


「あんたらは将来的に有望そうだ。紹介状を書いてやるよ。それなら通常の半額で更新できる。一人銀貨にして1枚だ。それくらいはあるだろう?」


 当然その程度の持ち合わせはあるので、紹介状を書いてもらい、ステータスカードを発行する場所を地図で案内してくれた。ここからだとさほど遠く無さそうだ。


「どうせ数日は滞在するんだろ? 昨日かなり大量に持ち込んでいたらしいからな。装備を調える前に、自分の能力を正確に計測するくらいは十分に大丈夫だ。更新が終わったらまた来てくれ。その時は、あんたらの予算の範囲で良い物を紹介するよ」


 流石にそこまで言われたら、ステータスカードの更新は行うべきだろう。武器を買いに来たのにステータスカードの更新になってしまったのは意外だったが、これも仕方がない。

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