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地球の神様って……

新作始めました。

異世界転移、チートバトル物の予定です。


2017/01/21

一部誤字や内容の表現を修正しました

 今日は久々に自宅へ帰る事が出来るはずだった。確か最後に帰ったのは三週間前のはずだ。賃貸料を無駄に支払っている気がするが、気にしたら無駄だろう。


 俺の名前は伊戸(いど)孝夫(たかお)。当然名前からして男で、現在三六歳。彼女いない歴=年齢は、もはや気にしていない……と言ったら嘘になるな。出会いがないのが悪い。ああ、そうに違いない。きっとまだ理想の女性が現れていないだけなんだ!何だか虚しくなった……。


 仕事はコンピュータ関連職ってやつだ。まあSEって事になるとは思う。とは言っても、会社での扱いははっきり言って悪い。まあ、この業界は大抵どこでもそうだ。一流メーカーから下請け……というか、孫請まごうけならまだしも、今回の仕事は玄孫やしゃごだか昆孫こんそんだかも覚えていない。それとも七次受けだったか? そんな仕事をしている程度だから、はっきり言って使い捨てられる側になる。労働基準法?何それ、美味しいの?


 実際、俺より下の年齢で会社を辞めた人間の方が、圧倒的に多いという有様だ。数えるのもバカらしくなるくらいだ。だいたいは病気になったりする奴が多いな。典型的なのはうつ病とかか?この業界の職業病みたいな物と前に聞いた。俺だって何時いつそうなるかは分からないが。


 さっき自宅に帰る『はず』と言ったのは、帰れなくなったからだ。まあ一人暮らしだし、一ヶ月で自宅に帰る方が少ないのだけども、住民票登録には必須だし、むしろその為だけの家になりつつあった。


 最近はネカフェなどに住民登録している奴もいるらしいが、流石にそれはどうかと思う。その辺は個人の自由だし、他人のやる事に文句を言うつもりはない。俺に害がなければな。


 で、帰れなくなったというのには原因ある。そして、その原因を造った連中が、なんと目の前にいたりする訳だ。さらに文句を言いたいのだが、今はそれが出来ない状況という。色々と納得いかない事だらけだが。むしろ納得出来る奴がいたら、俺はそいつを見てみたい。納得出来る奴がいたとしたら、それはきっと人間ではないはずだ。


 ちなみに俺は先ほど『死んだ』と言われたのだが、正直実感が無い。気が付いたらここにいたのだし、身体はちゃんとある。それで死んだと言われて納得するのは、正直難しいだろう。むしろそれで納得する方がどうかしているはずだ。むしろリアルすぎて、そういった夢の中だと思いたい。


 一応死んだとされる直前に、踏切の横断最中に突然電車が進入してきたのは覚えている。ちなみに警報器は鳴っていなかったし、そもそも横断中に電車が近づいて来ていたら普通は気が付くと思うが、そんな音は全くしなかった。何かに当たったと思った瞬間、それがどうやら電車らしいと目にしただけだ。それも本当に一瞬だったな。


 今俺がいるのは裁判所のような場所で、俺は証言台のような所に何故か立っている。理由?俺が聞きたい。


 目の前にはここが裁判所だとするならばだが、裁判官と裁判長のような奴がいるし、左には検察みたいな連中なのか?右には弁護団みたいな連中がいる。ただし俺が知る裁判長や裁判官、検察の服装とは大きく異なるし、それ以前の問題があるのだが。


 判決のような物は既に出ている。そして俺は被告人として立っているのではなく、目の前にいる数人の裁判官のような連中に、これから起こる事を説明されている。正直理解に苦しむ内容だが。というか、正直理解出来ていない。もっと理解させる事が出来る連中を連れてこいと言いたいくらいだが、どうやらそんな状況じゃないらしい。


 それで俺の前にいる大柄な裁判長的なのは、いわゆる閻魔大王らしい。らしいというのは、本人がそう言っているからだが。ただし服装は俺が知っているような物じゃない。普通にスーツっぽい何か。しかも俺に謝っているという、正直なんだか信じられない光景を目にしている。俺の中の閻魔大王像が、色々な意味で絶賛崩壊中。もう、笑った方が良いのかもしれないな。


 その自称閻魔大王によると、普段死んだ人間を天国や極楽、地獄とか言われる世界に振り分けているのは、彼の部下らしい。転生なんかもここに含まれる。まあ、仏教徒の数からすれば、一人で振り分けるなんて確かに無理があるな。なので普段閻魔大王の仕事は書類審査と、目に付くような事を行った者だけを相手にするそうだ。何だか聞いている限り、書類仕事の方が多い気がしてならない。死後の世界もお役所仕事なのか?それはそれで、どうかと思うぞ。


 自称閻魔大王の前に普通立たされるようなのは、そのほとんどは極悪人らしい。希に聖人君子みたいなのも相手にすると言っていた。俺は極悪人ならニュースで聞いた事はあっても、聖人君子など現代にいるとは思っていない。そもそも極悪人は想像がつくが、聖人君子など想像がつかないのは、俺の知識不足のせいだろうか?


 それで検察側と思われる前にいるのは、まあ世界の神々って事になる。実際、俺が巻き込まれた理由は、その神々にあるわけなのだが。弁護側にいるのもそんな連中だ。正直、ここに来た理由を知ったら敬意なんて物は無くなったが。


 平たく言うと、俺は神々の争いに巻き込まれたらしい。とはいえ、争いと言ってもそんな大した事ではないらしいのだが。あくまで彼らの話が正確ならばだが。むしろ大した事が無いなら、他人を巻き込むなと、声を大にして言いたいくらいだ。


 俺達でいう所の麻雀なり将棋、チェスのようなゲームをしていて、ヒートアップしたというのが原因だというのだから迷惑な話だ。そんなので人を殺すな!


 ヒートアップした結果、なぜか本来走るはずも無い列車が、俺だけを巻き込む形で踏切を通過したと言うから、驚きを通り超えて、呆れるしか無い。


 この事故は当然起きるはずも無く、つまり俺がなぜか『神の力』とやらに巻き込まれたらしい。この世から存在が消失した――早い話が死んだという事だ。日本では俺は行方不明扱いになっているはずだと言っていたが、俺の遺体すら消失しているらしい。そもそも鉄道が通過したという事すら無かったことになっているそうだ。


 確か日本で行方不明者が死亡認定がされるのは、行方不明が確認されてから七年後だったか?一応、人の記憶から消える事は無いので、行方不明扱いになっているはずだと言われている。そりゃ、忽然と消えたら行方不明だろう。そもそも誰かに見られなかったのか?


 まあ、どうせ生命保険なんか入っていないし、直系の親族とも疎遠になっている。そもそも生命保険なんてのは、金がある奴で、なおかつそれを必要とするものがいる場合に入る物だ。掛け捨ての医療保険には入っていたが、それだって使うことが無ければ無駄金としか思わない。親族には、ここしばらくは連絡すらしていなかった。行方不明と気が付くのは、親族よりも会社が先だろう。明日の朝には出社しない事に気が付くはずだ。


 それで原因となった神?の何人かが、俺の前で厳罰?になり、俺に平謝りして、お詫びという事でこれから他の世界に飛ばされるらしい。


 謝っているようには正直先ほどから思えないのは気のせいか?俺を殺したって事なのだから、『様』など付けるつもりは無い。ああ、もちろんそれ以外は別だが。それくらいは許されるはずだ。


 俺からすれば、向こうが一方的に悪いのだが、それでも元に戻す事は不可能らしく、『異世界』への切符を俺は手にした。他に方法がないというのだから、こればかりは仕方がないと思うしかないのだろう。もちろん納得などしてはいないが、出来ないのを無理に言っても今さらだろう。


 その質問は散々したんだが。最初は質問と言うより、文句だったとは思う。それを反省するつもりはないし、それに文句は言われなかった。当然だよな?


 ただ一口に異世界と言っても、無条件でどんな所でも選べるほど世の中甘くないらしく、今から送られる世界はファンタジー映画やアニメにあるような世界だと言われた。


 あまり映画とかは見ないというか、その暇はないのだが、魔法とかがある世界という話だ。それってあの車が飛んだりする映画か?眉唾にしか聞こえない。


 物語としては面白いかもしれないが、聞く限り魔物と人が日常的に争っている場所など、体験したいと思うほどマゾではない。あれは見聞きしているから面白いのであって、現実に起ったら恐怖でしかないはずだ。好んで行く奴がいるとすれば、俺からするとマゾだな。昔あった、恐竜が島の中で暴れる映画の中に突然放り込まれたら、普通は何も出来ずに死ぬんじゃないのか?


 ある程度文明が発達していると、大抵はその星の人口許容量というのを超えてしまうらしく、そういった所に送ると世界のバランスを崩す事になる可能性が高まると言われた。ある程度の許容量を超えると、そこに転生や転移といった形で送るだけで、送った先の文明が崩壊する可能性が極端に高くなり、それをしないためのルールがあるらしい。ちなみに自然発生的な増加はまた別問題ではあるらしいが、それも限度があるそうだ。


 どうやらかなり以前に人口キャパが溢れた世界に人を転移させた所、数年でその文明が崩壊したらしく、それを防ぐためのルールというか、法律みたいな物が作られたのだと聞かされた。


 基本的に惑星レベルでの話らしいのだが、その人口キャパというか文明キャパというか、まあそういった物が上限に達している一つに、地球も含まれているそうだ。どうやら正確には、自然発生的な増え方としても、既にキャパを超えようとしているらしいのだが。


 確かに七十億人だったか、そんなに人が増えているくらいだ。許容量が限界と言われると何となく分らなくも無いが。全員が先進国のような暮らしをしたら、間違いなく色々と破綻するよな。流石に俺だってその程度は分かるつもりだ。


「……と言う訳で、申し訳ない。その代わりとしては何だが、普通よりも強い力などを君に進呈しよう。詳しい事は担当者から説明を受けて欲しい」


 どうやら俺には、いわゆるチート能力のような物が与えられるらしいのだが、そもそも剣と魔法の世界でチート能力と言われても、実感などあるはずもない。


 普通の生活をしている現代人に、剣など扱う事など無いはずだ。精々剣道をやっているか、警察などの一部で警棒を扱うのが精々だろう。むしろ日常的に生活の一部として、そんな事をしている奴が現代日本にいるなら、俺が知りたい。魔法ともなれば想像など出来るはずも無い。


 自称閻魔大王が椅子から立ち上がり、俺に深々と頭を下げる。何だか俺が想像している閻魔大王像が、片っ端から崩れていくのだが、これは言わない方が身のためだとは感じている。火中の栗を拾うほど、俺もバカじゃない。この場合は火中の栗どころか、火中の石炭のような気もする。しかも拾ったら最後、捨てる事が出来ない石炭だ。


「それでなのだが、君が知っている知識だと、ヨーロッパの中世の、それも始まり程度の文明が、今は用意出来る場所の限界だ。先ほども言ったように、地球とは違い魔法などがあるので、一概に比較は出来ないが、魔物などもいるので文明の発展が地球に比べ遅れている。ただ君なら、スキルや魔法で代用出来るようになると思うので、生活に関してはあまり心配しなくて大丈夫の筈だ……と思う」


 大丈夫だと思うって……確実じゃないのかよ。まあ、日本での暮らしとの違いを考えたら、確かに確実とは言えないのか?ところで、中世の文明レベルってどの程度だっけな?歴史もう少し勉強しておくんだった……。俺はそんなに歴史に詳しくなかったからな。


「色々と説明をしなければならないのだが、この連中に『お説教』をしなくてはならないので、申し訳ないがここまでとさせてもらう。その代わりに、向こうに着いた際に必要な知識は用意しておこう。それで勘弁して欲しい」


 それでまた自称閻魔大王が頭下げてるよ……。それに『お説教』と言った時に、俺をぶっ殺した神々?の連中を横目で睨んでいたが、正直俺も生きた心地がしなかった。もう、何なのこの世界?と言うか、死後の世界なんだよな?


「悪いが案内を頼む。それで、お前達だが……」


「では伊戸様はこちらへ。おや、どうかされました?」


 俺を案内しようと、一人のスーツ姿をした青鬼みたいな奴が声をかけてきたが、それよりも俺は、一瞬にして鳥肌が立った。何せさっきまでと違い、自称閻魔大王から漆黒のオーラとも呼んだ方が良いような、禍々しい何かを感じたからだ。禍々しいという表現すら生温いだろう。あれは人が感じてはいけない物だ。この場からすぐに離れるに限る。


 それにしても、俺を案内するらしい青鬼も、普通にイメージからかけ離れている。見た目高級なスーツを完全に着こなしていて、お前は一体どこの誰だ?と言いたくなる。高級スーツなど縁がない生活をしていたが、そんな俺でも分かるくらいだぞ?品が良いスーツを着こなす鬼というのも、はっきり言って信じられないが。


「人様に迷惑かけるなと、あれほど言っただろうが!そもそもお前達は――」


 そんな怒声が聞こえたかと思うと、俺の手を持ってというか、引っ張って青鬼が即座にその場から俺を連れていく。正直怖くて後ろを振り返る事なんか出来ない。


    ――――――――――


「普段はあんな事はないんですよ。ただ、今回はちょっとですね……」


 俺をあの場から連れ出した青鬼が、何だか申し訳なさそうにしている。それにしてもこの青鬼、なかなかにスタイルがいい。俺の中で鬼に対するイメージがますます……まあ、いいか。下手に禍々しい姿よりは接しやすいから構わないのだが。


「何かあったのか?」


「今回あなたを殺してしまった方々ですけど、天界でも問題アリと噂が絶えない方々なんですよ。全く困ったものです」


 聞くと、どうも頻繁に問題を起こしている、いわゆる問題児?的な存在らしい。まあ、年齢的には子供などとは言えないんだけども。しかし喧嘩の内容が子供じみていると思うのは俺だけか?しかも神って立場なんだよな?それこそ危ない団体の、下っ端の鉄砲玉みたいな奴ならともかく。


 ゲームの勝敗が納得いかないからとかで、いわゆる『神の力』的なものを簡単に発動させる事が多いのだとか。大半は害になる前に対処できるらしいが、今回は俺の運が悪かったらしい。しかも死ぬともなると、かなりの悪運としか、聞いた限りでは思えない。だからあんなに自称閻魔大王が謝っていたのか……。それに納得する俺もどうかとは思うが。


「あ、それとこれから他の世界に行ってもらう事になりますが、分かりやすく言うと、あなた方が想像するような宇宙旅行で行くようなものではありません。いわば異世界に無理矢理干渉する事になるので、希に失敗する事があります。ただ死ぬような事はないのでご安心下さい。それに失敗と思っていたのが、逆に良い結果になる事もあるそうですので。ただ、一時的な記憶喪失に似た症状が発生する事があります。荷物にその時の為の道具も入れておきますので」


 おいおい、それってどうなんだ?そもそも記憶喪失を気をつけるって、無理だろう。不安になるようなことを言ってどうするよ。


「向こうの世界では新しい肉体を用意します。こちら側のミスですので、向こうの世界では成人したばかりの年齢という形で送り出させて頂きます。転生という形も出来るのですが、そうなると記憶も全て、一度抹消となってしまいますので、こちらでお与え出来る恩恵が十分に発揮されませんので」


「あ、ああ。分かった。そういう事なら話は分かる」


 流石に幼児からやり直すとか、それはゴメンだ。何より恩恵が受けられないんじゃ、意味が無いだろうに。


「それでお与え出来る恩恵と言いますか、向こうの世界では一般にスキルと言われている物となるのですが、かなり幅広く選択出来ます。こちらがリストです」


 渡されたのはタブレット端末だ。某有名なフルーツが囓られたロゴのメーカ製に似ているが、気のせいだろう。少なくともそのロゴはないし。しかしあの世でも電子化されているのか。便利ではあるな。


 画面をスクロールすると、様々なスキルと言われる物があるが、既に選択されている物があった。言語能力、生活知識、基礎魔法能力などといった項目だ。これらが無いと生活すら出来ないという事なのだろうか?


「この既に選択されている物は?」


「向こうの世界に行っても、それらがあればすぐに生活可能とするための物です。それらがありませんと、生活すらまともに出来ませんので」


「なるほど……」


 確かに最低限の生活能力が無ければ話にならないな。それにしても項目がかなり細分化されている。武器によってもスキルが異なっているようだ。


「剣術と短剣術は何か違いがあるのか?俺にはよく分からないんだが」


「簡単に申し上げますと、剣術は長剣の類いですね。短剣とでは武器のリーチが異なるので、扱いが異なるのです。同様に体術とあるはずですが、格闘術とは異なります。体術はどちらかというと護身用の域を出ませんが、格闘術はそのまま相手を殺す事が可能なスキルです。当然威力は全く異なりますので」


 そんな物か、と言ってとりあえず納得する事にする。


「正直さっぱり分からないんだが、お勧めの組み合わせとかはあるのか?これだけ見ていてもどれを選択すれば良いのかサッパリだ」


 そういった物が好きであったなら違うかもしれないが、そもそも普通の現代人が包丁以上の刃物を扱う事はまず無いだろうし、それを武器として使うとなると犯罪者くらいだろう。それに包丁を武器として使ったとしても、これから送られるという世界では武器として役に立つとは到底思えない。


「そうですね。平穏な生活を送るとなると、料理のスキルですとか対人スキルが一般的ですが、これから伊戸様が行かれる世界では、料理人であったとしてもなかなか安全な生活は難しいかと思われます。ちなみにスリルや冒険と行った事に興味はございますか?」


「無いと言えば嘘になるな。だが、そんな簡単に出来る事でも無いだろう?普通は訓練を十分に受けなければ、俺のような現代人に出来るとは思えないな」


「それらの事は、スキルを取得する事で解決可能です。確かに現在の伊戸様は、戦闘経験などといった事は皆無でありますが、スキルを取得する事により熟練者と同等になる事が出来ますので。これから行かれる世界は、基本スキルさえ獲得すれば、後は勝手に体が動くと認識して頂ければと」


「それは凄いな……」


「ええ。その為のスキルですから。これから行かれる世界では商人といえど、それなりの戦闘スキルを持っております。護身術として剣術を使われる方は多いですね。剣の他にも弓などがあります。また魔法もあります。ですので剣術ですとか魔法を取得しても、向こうの世界ではごく普通の人でしかありません。もちろん商売にご興味があれば、それに関連したスキルを重点的に取得する事も可能です。また当然農業なども行われておりますので、それに関連したスキルも当然ございます。一般的にこれから行かれる世界では、農民が半数以上を占めますが、商人や料理人、兵士、また冒険者といった職業がございます。また大半の国が王国制でして、当然国王と貴族が存在します。ただ転生としてお送りする訳ではございませんので、王族や貴族といった形は出来かねます。十分なスキルはご用意出来ますが、多額の資金などを持ち込む事は難しいので、向こうの世界に到着してから職業を選択される形になりますね。もちろん普通では考えられないようなスキルを多く持つ事が出来ますので、職を探す事は難しくないでしょう。ですが、多少なりとも冒険やスリルを求められるのであれば、冒険者という職業を選択されるのがお勧めです。危険は当然伴いますが、活躍出来れば英雄のような存在になる事も可能です。実際に冒険者で活躍し、貴族などになっている方もいますから」


 異世界で商人をしても、危険はあるという事か。さすがに農民は勘弁して欲しい所だし、町の中が絶対に安全とは言えないとなると、町の中だけで働くような事をしても危険からは逃れられないな。そうなると確かに冒険者というのは少し面白いかもしれない。それに興味はあるからな。


「分かった。その冒険者向けのスキルを選びたいが、どんな物でも構わないのか?」


「もちろん構いませんが、どういった立ち位置で行動するかによって、スキルの選択は異なりますね。最前線で戦うとなると、近接戦闘向けのスキルは必須ですし、当然体力もある程度上げる必要があります。体力に関してはスキルの選択に伴って上がりますので、その点は心配ございませんが。後衛で支援しながらの戦いとなると、弓や遠距離魔法などといった戦い方となります。魔法も色々とございますので、全てが後衛という訳ではございませんが。事実、接近戦向けの魔法スキルも数多くあります」


「幅広いんだな……」


「まあ、今回はボーナスのような形で多くのスキルを選択出来ますので、前衛から後衛までマルチにこなす事も出来ますよ。それと向こうの世界に行ってからも、経験を積む事によりスキルを伸ばす事が出来ますので、ここで決めた事が全てではありません」


「なんだかゲームのような世界だな」


「ええ。その様に考えて頂ければ分かりやすいと思います」


「しかし困ったな……何を選んだら良いのかサッパリだ」


「そうですか。それなら、少し特殊ではありますが、こちらで最低限冒険者として必要なスキルを選択しますので、他のスキルを決めずに現地で決められては如何でしょう?」


「どういう事だ?」


「これから向かわれる世界でもスキルは、スキルポイントという形で覚える事が可能なのです。また当然の事として、そのスキルに精通した者が必ずおります。行かれる際には町の目立たない所か、町の外でも比較的安全な所に転送されますので、その後詳しく説明を現地で受けてから決める事も可能です。そちらでなら詳しくスキルについて説明をして頂けると思いますので」


「なるほど。確かにこれだけ見ていても、分からない事が多いからな。ならば行った先で決めるのも手か」


「はい。どうなされますか?」


 少し考えてみるが、悩んでも仕方ないだろう。


「では、現地で決める。他に何か説明が必要な事は?」


「詳しくは現地に到着してからご確認頂ければ。先ほどの説明もありましたが、向こうで生活する上での説明書は用意されております。では、これで良ければその魔方陣の上に乗って下さい」


 言われるがままに赤く発色している魔方陣の上に乗る。別に何か変化はなかった。


「それではご迷惑をおかけしました。新しい人生に幸運がある事を」


 青鬼が何かを伝えようとしていた瞬間、足下が赤く光り輝いて俺は意識を失った。


    ――――――――――


「あ……説明を忘れてしまいました」


 青鬼は転送が終わってから、それに気が付いた。


「まあ説明をせずとも、ちゃんと説明書の中身を読んでいただければ大丈夫なんですけどね。向こうの世界だと今の状態でも普通にエリート級のスキルを取得出来るだけの実力があるので、冒険者ギルドで登録をすれば、すぐに生活可能になるというだけですし。それに町かその近くに転送されますからね。どの町かはランダムですが。幸運をお祈りしますね」


 終わった事は仕方がないと、青鬼はその場を後にした。

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