第二章『紅い河』までの登場モンスター
※お話には直接関係の無い、どうでも良い設定なので
読み飛ばしても本筋の理解には全く影響はありませんのでご安心を。
リジェクタ組合編
『モンスター駆除作業必携 モンスターハンドブック』
『帝国領内のモンスター その1 危険度Ⅰのモンスター』より抜粋
スライム
モンスターとしてはもっとも種類が多く、また全種好む食べ物は有るものの
完全な雑食性の生物で動植物は勿論のこと、土そのものや岩のミネラルだけ
でも ある程度の個体維持が出来てしまう。
荒野に好んで生息するタイプは、そうして何十年ものサイクルで少しずつ
土地を改良していく、と言う効果もある。
一属一種も多いモンスターの仲間としてはもっとも種類が多く、既知のもの
だけでも三〇〇種を超え、帝国領内にはおよそ一七〇種類が生息して居ると
され、学者や専門家であっても全種類を見たと言うものは居ないと思われる。
またどんな環境にも馴染み、環境に応じて容易に変質する柔軟さを持つ為
同じ種類でも生息地域によっては見た目に違いがある場合も多い。
火気を嫌うのは全種に共通する特徴。
特筆する程の知能は持たないが、明らかに大きな個体はそれだけ知能が高い
と言う傾向がある。
最大体高まで達すると自身が若干小さくなるのと引き替えに二匹で繁殖、
若しくは大きさは半分になるが分裂する。
群れで行動する種類はあえて小さな分身を作って自身はリーダーに収まり、
群れを率いると言う行動を取る種類もあり、これはジェリー系で群れを作る
ものによく見られる行動。
この際知識もある程度引き継がれるが、知能は大きさに合わせて、明らかに
退行する事が知られている。
同じスライムでもマカロンのような形で定型を保つものをスライム、
不定型でどろどろしているように見えるものを
腐れスライムやジェリー
と呼んで区別するが、実際には同じ種類の生き物であり見た目以上の
差違はほぼ無い。
スライム系はジェリー系に比較すると大きくなるものが多く、特にベニ系
スライムは大きく成長し、世界最大のスライムであるオオベニクイーンは
最大で体高2,5メートル最大直径3メートルまで成長する。
ジェリー系は大きくても70センチ止まりではあるが、肉食を好むもの
が多く毒を持つ種類が大半であるので、種類の同定前にはむやみに捕獲を
したり素手で触ったりしてはいけない。
世界最悪の毒性を持つダークレッドポイズンゼライスは、幸いな事に帝国
領土内での目撃報告は無いがふれただけで象が即死する程の毒性を持つ。
体高五〇センチを超えるような大型スライムや、猛毒を持つジェリーなどに
対処するためスライムスライサーと言う特殊な武器を用いる場合がある。
柄に油を仕込んで剣を振る度に炎で刃を包む特殊な剣であるが、近年は
魔道火を仕込み油を使わないタイプのものが開発された。
また、表皮を融かすメルトパウダーと言われる薬品もあるが、非常に
高価な上人によってはアレルギー症状を起こすため帝都内で500g以上を
まとめて使用する際は環境省の許可が必要になる。
ドミネントスライム
最大高15センチ、直系20センチ。草や無機物を好む性質を持つ。
シュミット大公国領内の固有種であり、エメラルドグリーンで半透明の
非常に美しい、生きる宝石とまで言われる小型のスライム。
シュミット大公国を象徴する生き物として、大公家の紋にもその姿がある。
絶滅危惧種であり環境庁の捕獲制限リストにも名前がある為、モンスター
駆除の免状を持つものが無許可で捕獲した場合は最悪ギロチン刑となる。
あまり動かないため基本的に砂礫や岩石のミネラルなどだけで生きられる。
好む環境下でないと繁殖、分裂はほぼ行わない。
またスライムとしては最大の群れを作ることでも知られ、二〇〇年程前には
後にシュミット大公国となる土地に三万五千ものドミネントが群れをなして
いたという記録が残っている。
触ると肌触りの良い表皮を持ち、粘液を出したり、悪臭を放ったりもしない
うえ、その美しい姿のまま剥製化する技術が確立してしまったため、乱獲の
憂き目に遭い、元々繁殖のしにくい事もあり近年は極端に数が少なくなって
しまった。
何も無い荒野を好み、このスライムのみが何万匹も居る姿を目にした
人々から荒野の支配者、としてドミネントスライムの名を
冠された。
スライムの中では特に神経質で人間や騒音を嫌い人間に懐くことはほぼ無い。
繁殖はおろか、人工環境下で長期間飼うことさえ出来ない。
ベニモモスライム
帝国内に存在するスライムの中でも最大級、かつ知性も高く、もっとも
危険な種類とされる。
その名の通り桃色に輝く姿は美しく、スライムとしてはかなり賢い。
群れることは無く通常は一匹、最大でも二匹で行動するが、縄張りを
持つわけでは無い。
餌をくれる人間を飼い主として認識し懐くので、小さなモノをペットとして
飼っている場合もあるが分裂も繁殖も1メートル以下では行わないため、
飼っている間にかなり大きくなる。
70センチを超えると飼い主の言う事を聞かなくなり、制御不能となって
いわゆる人食いスライムになる。
この場合、賢さが仇となり最後まで懐いているふりをするので見抜けずに
飼い主が最初の補食対象となる事が圧倒的に多く、その後は人間の行動に
詳しい人喰いスライムとして裏路地に潜むことになる。
この為モンスター規制法では飼うことは厳しく制限されている。
外見とは裏腹に、実際には肉食を好み凶暴、近所 (体長の五倍以内)
で動くものは全て捕食対象と言う非常に危険な生き物。
自分より三倍程度ならばシカやイノシシでも体を伸ばし体内に取り込んで
その強力な消化液で強引に消化する。
1メートルを超えるような個体は人間に対しても臆すること無く襲い
かかってくる。
大きなモノは1メートルを超え、最大で1,5メートルに達する。
他のスライムと同じく知性の高さは大きさに正比例する上、スライムの
中でもベニモモスライムは例外的に知性が高く、二匹組で狩りを行い、
ハンターなどに対しても片方が囮になる等、知性が高くないと出来ない
行動を取る個体も珍しくないので、接触時は十分な注意が必要。
帝国学術院の危険度判定はスライムである為にⅠであるがリジェクタ組合では
対処がB級以上限定であるⅢ同等と見なしている。同じく巨大なベニ系
スライムであるベニウスアカスライムと誤認され、対処しようとした住人が
補食される事もあるので、特にリジェクタは誤認が無いよう、専門家の
視点から慎重に種類の見極めを行う必要がある。
ベニウスアカスライム
国内のベニ系スライムではベニモモに次いで大きくなる。最大で全高
1,2mを超える大型種で同じベニ系であるベニモモスライムとは見た目も
似ているがこちらは若干くすんだピンクである。
肉食を好み、最大十匹前後で群れを作る性質がある。一方でスライムの
中でも人間の出す生活騒音を極端に嫌い、自ら人里に現れることはほぼ無い。
また人間との接触も他のスライムと同じく避ける傾向にある
但し山中で囲まれたときは非常に危険である。
雑食性であるので、獲物が近所に居なくなると最大級が数匹居るような
群れの近所は雑草も水たまりも無くなり荒野となる。
その為、特に乾期に駆除依頼がかかる場合が多いがこう言う場合は例え
人間が迫っていることを感知しても、逃げずにむしろ餌として認識し
襲いかかってくる場合が多いので対処には注意が必要。
グレーターオレンジ
その名の通り綺麗なオレンジ色をしたスライム。最大体高30センチ。
1メートルを超えるのが普通のグレーター系スライムとしては最小で
帝国領内にしか生息していない希少種でもある。捕獲規制モンスターでも
あるので捕獲、駆除の際には環境省への事前通達が必要になる。
主に草食を好み、三〇匹以上の群れで行動する。人里離れた草原で
五百匹を超える大集団を形成してるのが目撃されている。
オレンジマーブルロッテンスライム
濁ったオレンジ色でほぼ不定型のいかにもな見た目のスライム。直径は
最大約二〇cm最大高は約五センチ。
腐肉食を好むが昆虫も補食し、自分と同じ大きさ程度までなら何でも
食べる。
大型昆虫や昆虫型モンスター、特にビレジイーターを好む。
見た目が不愉快である他、腐食性の毒で体表が覆われ、また腐臭を放つため
駆除対象になるが、家畜等含めて人間にはほぼ無害。虫や雑草を食べる
ほか、狼やイノシシなどが臭いを嫌がり寄ってこなくなるため、牧場などでは
存在を確認した上であえて放ってある場合も多い。
ヴィスカスフロッグと食性が似ているため行動を共にしている事が多く、
カエル寄せの香を焚くとヴィスカスフロッグと一緒に集まってくる。
ルビーポイズンジェリー
毒々しい赤と黒に彩られた、いかにも毒のある見た目のスライム。
最大直系で60センチにまで成長し、体高は最大で20センチ強となり
ジェリーと呼ばれるものにしては珍しく結構な厚みを持つ。通常は
十匹前後、最大では百匹を超える群れを形成する。
手で触っただけで腕が動かなくなる程の強力な神経毒を体の内外に持ち、
残飯や昆虫の他、犬や猫、鶏、鴨などの小型の家畜、更には人間の子供で
さえも自らの直径の二倍程度であれば補食対象にする。
食性が人間と似ているために度々街に出てきては大騒ぎになる。
他のスライムと比べても成長が著しく早く、餌のある限り成長し繁殖、
分裂も盛んに繰り返す上、ポイズン系の特徴として身体を単純に切断されても
身体が1/4程度残っていれば数時間で分裂した個体として活動を再開する。
但し、そのサイクルはポイズン系最速で、通常一時間半、約45分で
動き出す個体もある、と言う厄介な属性を持つ。
かつてこの属性を良く知らずに一般市民が駆除を試みたが、かえって数が
増え帝都西部で八群、約六百匹以上が徘徊する異常事態になったことがある。
駆除を行うときは火で間違い無く切断面を焼き潰す必要がある。
また直接触るのは好ましくないため、大きな群れの場合はメルトパウダーを
使うのが効果的である。
ダークレッドロッテン
体長は約10センチで体高は2センチに満たない小型のジェリー系
スライム。
真っ赤な身体が特徴のジェリーではあるが毒は持たず、表面の粘液も無い。
雑木林や草原で主に昆虫や小動物を補食するが、人里に現れ残飯あさりを
することもあるので生息域に近い地域ではゴミを散らかさない事が必要。
外敵を威嚇する(集団で襲いかかれば捕食者を逆に補食することも可能と
なる)ため、かなり大きな群れを作ることで知られ、通常でも百匹単位、
最大では一万を超える群れを形成する。
群れるスライムの代名詞的存在。




