第一章『黒い矢印』登場モンスター
2016.10.19 ※以下を前書きに追加。
※お話には直接関係の無い、どうでも良い設定なので
読み飛ばしても本筋の理解には全く影響はありませんのでご安心を。
帝国学術院 モンスター分類委員会・環境庁怪物対策会議 編
『駆除依頼書作成の手引き(案) モンスターの分類と種別・第七版』
第四章『駆除依頼時のモンスターの鑑別と同定
同三項『ワンダリングモンスター・ⅲは虫類型、ⅳ虫型、ⅴ両生類型』より
ビレジイーター系
※脅威度はⅡであるが、一般の冒険者の駆除は基本禁止。怪物狩り
であっても銅級かそれと同等の知識を持ち、かつ保全庁もしくは
駆除業者組合の認定証を持つ者、が駆除請負条件となるので、駆除依頼
発行時には被害を大きくしない為にも、その点は特に注意が必要である。
全長十cm前後の巨大な蟻の形のモンスター。約八千匹から一万五千匹で
一つの群れを形成する。寿命は約五年とされる。
名前の由来は一晩で村を食い潰す人喰い蟻の見た目から。
固い外殻は普通に踏みつけられても潰れず、尻の生殖器が変化した
神経性の毒を出す針は革の鎧を貫通し、鍛えた剣の切っ先を噛み千切る
大顎を持ち、更には口から鉄をも融かす酸を吐く。
何よりその数が面倒なモンスターだが火を嫌う傾向があり、実際に火に
少し炙られただけでも死ぬ。
また、群れに対しては絶対の帰属意識を持ち、自分の群れに帰れないことが
確定すると餌をとらずにそのまま死んでしまう個体が大半。
特徴的なのはアリの見た目でありながら、群れの全てがオスで構成される事。
これは偶蹄目の生き物を母体として、女王アリが脳内に入り込んで
身体の自由を奪った上でビレジイーターの情報をコピーし、子宮へと入り込んだ
王アリが強制的に自身の卵を作らせ続けることに寄る。女王アリは身体の
コントロールを王アリに渡し、イーターの情報を母体にコピーした時点で死ぬ。
メスは年に一度、巣別れの次期にのみ、新王アリと共に約三十匹が羽アリの
形で発生する
寄生された動物は通常王アリのコントロールの元、普通に餌を食べ、移動する。
働きアリ(ワーカー)はこの為、自分の達の食べない種類の植物を運ぶことも
仕事の一つである。
全三種が知られていたが、リンケイディア皇子殿下と帝国アカデミー
モンスター学の権威、アクリシア・ポロゥ次席博士によって四種目の
ビレジイーターが発見され、殿下の命名によりこれはブラックアロゥと
名付けられた。
一代変種と見られるが、帝国臣民に多大な被害を出した為、保全庁指揮の下、
全個体がリジェクタによって駆除された。現在は標本のみが残っている。
発生の経緯など詳細は現在アカデミーにて調査中。
ビレジイーター
一般的にビレジイーターと呼ばれるのはこの種類。食性が人間に似ている為、
人里に出没する事も多い。
大きさは約一〇センチ前後で王アリは通常二〇センチ以上。雑食性で
家畜から木材まで全てを糧食とするので村喰い蟻の
名前が付いた。約一万から一万五千匹で一つの群れを形成する。
グレイトイーター
大型のビレジイーターで体長約一二センチ、王アリは三〇センチに達する。
同じイーター族の中では肉食の傾向が強いが、人間の脅威を理解している為
人里にはあまり現れない。
通常五千から七千匹で一つの群れを構成する。身体が大きい為か他の種に
比べて若干群れの規模は小さい。
母体確保の生存競争では同種であるビレジイーターやメドゥイーターの後塵を
拝することが多く、あまり数は多くない。但し単純な戦闘力は同種最強で、
食糧が無い時には他の種のイーターを襲うことも良くあり、この場合
相手がメドゥイーターであれば三百対一でも釣り合わない程の戦闘力を誇り、
グレイト二十匹前後で三時間もあれば二万のメドゥの群れは全滅する。
グレイトイーター同士の争いになると殲滅戦となるので、通常は同種同士は
あらそわず、縄張りをお互いに少しずつ譲るような知恵も持ち合わせる。
メドゥイーター
ビレジイータ種の中では最小種だが体長は約八センチであり、通常のアリと
比べるべくもなく明らかにモンスターである。
どちらかと言えば草食を好み、群れの継続を一番に優先する為、あまり
人里には現れないが、母体として放牧されている牛、それも乳牛を好んで選ぶ。
既知三種の中ではもっとも獰猛で、状況によっては個体数を減じるのを厭わず
天敵であるヴィスカスフロッグやジェリーに対しても攻撃を行い餌とする。
最大で二万以上の個体で群れを形成し、農場経営者にとっては乳牛と牧草地
双方に大きな被害が出る為、天敵とされる。
ブラックアロゥ
本国東方の交易都市ティオレントをたった三日で壊滅寸前まで追い込んだ
新発見種。
身体の特徴はメドゥイーターに近いが一五センチを超える体長を持ち、
王アリに至っては四二センチもの巨体であった。
毒が腐食性、口から吐く酸もほぼ工房で使える程の強酸、更には火を恐れず
直接炙っても死なないなど、既知の三種とはあまり類似点が無い。
またその巨大な体長でありながらティオレントを襲った群れは総数約二万二千
(駆除に当たったリジェクタ調べ。帝国情報軍の報告書では約二万五千)と言う
かなり大きな群れで行動していた。
通常のイーター種と同じく羽アリを介して生息域を広げると思われるが
羽アリの卵と思しきものを含め全て駆除された為詳細は不明。
一番の特徴は偶蹄目の動物では無く、マグマリザードを母体としてしたこと。
水が弱点ではあるがそれだけでは死なない。
母体と王アリを失っても、まだ卵や幼虫を持って逃げようとする。など、良く
分からない点が多い。
現在帝国アカデミーモンスター部会で標本を調査中。
※再度現れた場合には危険度判定はⅣとするよう現在協議中。
リザード系
※危険度は種類によってⅡ~Ⅳまで。尻尾を含めた全長が七mを超えるものは
リジェクタ組合付託案件。卵からかえった時点で二mを超える物も多数あり
依頼時には種類の細かい鑑別、同定が必要。状況に応じてモンスター学者の
現地同行を必要とする。
大トカゲのモンスター。巨大であったり、鱗が剣をはじき返す程に固かったり
火を吹いたりするものの、行動様式自体は一般のトカゲのそれに近い。
知性は普通のトカゲよりもマシな程度であるが、種類によっては百年以上の
寿命を持つものもあり、その場合は注意が必要になる。
(過去には百五十年生きたユキヤマオオトカゲが人語を解した例があるが
第一章で述べた通り、これはインテリジェントモンスターとは見なさない)
ドラゴンとは似て非ざるものであり、生き物として完全に別種であるので
同定時には注意を要する)
※ドラゴン種は危険度S、かつインテリジェントモンスターであり、A級
リジェクタ以外の対処は法律上禁止、常識的にも人間が直接接触すべき
では無いので疑わしい場合には必ず専門家による同定作業を行うこと。
マグマリザード
体長は標準的には六m。立ち上がると肩口まで約1.6m。
火山の火口などに好んで住むモンスター。五百度を超える場所で無いと産卵、
孵化が出来ない。また体温が二百度を切ると極端に動きが鈍くなる特性を持ち
火口から出てくる場合は身体の中にある『マグマ袋』の中にマグマを飲み込んで
居る場合が多い。
完全な肉食であり、火口付近での獲物が少ない時には人里へと降りてくる
ことがままある為、監視の任に当たる者はその可能性を常に考えて
おかなければならない。
ヌメリガエル属ヴィスカスフロッグ科
※危険度はⅠ~Ⅱ(体長が一mを超えるものはⅡとするのが一般的)。
駆除依頼発行時には種類を同定し、毒性があることを間違い無く明記する。
見た目は巨大なカエルのモンスター。最大の特徴は極彩色の身体と、全身を
覆う毒性、悪臭の強い粘膜。この為、ベトベトガエルなどと呼ばれる。
この粘膜は剣や槍を通さない程分厚く、強力。
一方その臭いから虫除けや獣よけなどに用いている地方もある。
また毒性が極端に強い事から、素手で触っただけでも身体の弱い者は
死亡することがあるので、生け捕り要請の際は、捕獲後の扱いに最大限の
注意を払うこと。
食性は見た目通りに大型昆虫や昆虫型モンスターを好む。
幼生はいわゆるオタマジャクシであり、成体その粘液で全身を包まれて
いるためあまり関係が無いが、水場からは大きく離れることは通常しない。
知性と呼べる程のものはないものの、その舌で獲物の首を締めて殺してから
食べる。二,三匹で組んで獲物の足を狙って動きを止める。等の、一般的な
カエルとはかけ離れた行動を取るので、見た目に騙されないよう注意が必要。
大きさや見た目でかなりの種類があり、王朝連合領内では二五種が
確認されている。
ニジイロオオヌメリガエル
世界最大のヴィスカスフロッグで帝都東側から帝国最東端のティオレントまで
の間が生息域。最大長二m、最大高一,五mで人間の大人さえ一飲みにする。
名前の通り極彩色で彩られた姿。帝国固有種である。
身体が大きすぎジャンプでの移動はほとんど出来ないが、通常移動は見た目に
反して人間が走るより早い。監視には十分な距離を取る必要がある。
近年個体数は減っており、MRMから準保護対象モンスターの指定がされて
いるので駆除依頼の際はMRMと学術院の許可が必要である。
メロゥヴィスカスフロッグ
最大で一mを超える大型種。メドゥイーターを特に好み、その群れを追って
水場から多少離れた場所であっても出没する。
その大きさから子供が被害に遭うことがあるので、監視業務にあたる者は
動向に注意を払う必要がある。
ムラサキベトベトガエル
最大五〇センチだが、最大級の毒性を誇るため、この種類が大量発生した場合は
リジェクタへと駆除依頼をした方が無難。身体の大きさからかなりの機動性を
有し、一〇m以上ジャンプで移動する。調査の際には細心の注意が必要。




