表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

どうやら私は乙女ゲームのサポート役に生まれ変わったみたいです

作者: さとう

 

 どうやら私はこの世界のヒロインのサポート役に生まれ変わったようです。

 そう気づいたのは5歳の頃。前世の記憶というものを持って生まれてしまった私は、両親の友達の娘だというその子を見て思い出したのです。この世界が乙女ゲームの世界であると。そして私はヒロインの幼馴染みでサポート役なのだと。

 前世でプレイしたわけではありませんが、友達から何度も繰り返し話されては聞き流し、プレイ画面を見せられては流し見をしていたゲーム。どうやら人気だったようでアニメ化までしていた記憶があります。ゲームでは描かれていなかったヒロインの顔を見て思い出した理由はそこにあります。もちろんアニメも見せられました。正直これもまた流し見をしていたので1番多く出ていたヒロインの顔しか覚えていないのですが……。


 まぁ思い出したからには私は私の役目をこなすまでです。サポート役なんて美少女とイケメンの幸せそうな顔が、場面が1番近くで見れる可能性があるじゃないですか! それに進展具合だってきっと誰よりも早く知ることができます! なんて役得! 私はどちらかというと恋愛はするよりもその幸せそうなところを見ていたいタイプだったのでこれ以上ないほどのナイスポジションです。


 そう思っていたときが私にもありました。

 なぜ過去形なのかといえば長くなるのですが、簡潔にまとめていうのならば私の知っているヒロインと違う! でしょうか。

 ゲームでのヒロインは顔は可愛くて頭もいい、料理もできて性格もいいという、多くの人に愛されるようなそんなハイスペックな女の子だったんです。ただ運動が苦手なのが玉に瑕……いえ、そんなところも可愛いというような感じでしたね。

 しかし私の幼馴染み、桜木春乃は勉強も料理も苦手ーー苦手なんて言葉で終わらせていいのかわからないほどですーー、ただし運動は抜群にできるという、外見は一緒だけどスペックはまるっきり逆という状態なのです。あ、性格はもちろんいいです。可愛くて優しくて、ついつい世話を焼きたくなってしまいます。

 どうしてこうなったのかと頭を悩ませましたが、春乃は春乃だし、まぁいいかという結論に至りました。ゲームのヒロインとは違うけどとても魅力的な女の子ですしね! 料理も勉強も、私がカバーしますし!


 そうして16歳の春。高校2年生になりました。つまり、ゲームのシナリオが始まるということです。

 そう、違うところは多々ありますが、春乃と攻略対象(今となっては顔も名前も覚えていませんが)の恋愛が始まるのです! 私もサポート役として頑張らないといけませんね!


「藍? なんでそんな気合入ってるの?」

「え? あ、なんでもないよ! 先輩になるんだし頑張らないとなぁって思っただけ!」


 知らず知らずのうちに握っていた拳を解いて、なんでもないよと言うように軽く振ります。ふぅん? と少し怪訝そうでしたが、春乃はまぁ行こっかと私の手を引いて歩き出します。春乃は誰と、どんな風に恋に落ちるのでしょうか。


 なんて思ってもう2ヶ月。春乃にそんな様子は見られません。というか男の人と親しくしている様子が見受けられません。可笑しいですね……、2ヶ月間何も起こらないゲームなんて有り得ませんよね? やっぱりここはゲームとは違うんでしょうか……。でも春乃の顔も名前もアニメと同じだし、もっと言えばサポート役の私もこんな顔だった気がするんですよねぇ……。


「あ、藍せんぱーい!」


 少し遠くから呼ばれた自身の名前に、考えていたものを一旦止めて顔を上げます。ブンブンと手を振っているのは後輩の結城理玖くん。


「結城くん、どうしたの?」

「見て見て! 追試合格だった! しかも数学は満点!」

「わぁ! すごい、よく頑張ったね!」

「藍先輩のおかげ! 報告しなきゃと思ってきたんです!」


 ニコニコと笑う結城くんが可愛くて手を伸ばして頭を撫でる。少し驚いた顔をしたけど、また嬉しそうに笑う結城くんに私も笑い返します。

 私と結城くんが知り合ったのは、先生に結城くんに勉強を教えて欲しいと頼まれたことからでした。結城くんは勉強が大の苦手らしく、この先と比べて簡単である方な1年生の中間テストでAll赤点を取ってしまったのです。それを見かねた先生が、私に教えてやってくれないかと頼んできたのです。春乃で勉強を教えることは慣れている私は、どれだけ力になれるかわからないものの了承したというわけです。

 そうして2週間、毎日の放課後を使って教えた甲斐があったのか結城くんは追試験を見事パスしたらしい。一安心です。これ以上引き伸ばしたら結城くんの部活動に影響してしまいますしね。


「それでさ、藍先輩が良かったらなんだけど、」

「ん?」

「篠宮さん、」

「え? あ、水原くん」

「ごめんね、話途中だった?」

「あ、結城くんが……」

「んー、おれはまたでいいです。またメールするね、藍先輩」

「そう? じゃあわかった、待ってるね」


 またね、と手を振る結城くんに手を振り返して、改めて水原くんに向き合います。

 水原晶くんとは幼稚園で知り合いました。とはいえ私は自分の妹弟ではなく、先生に呼び出された春乃の代わりに春乃の妹ちゃんを迎えに行ったんですけど。水原くんは妹さんのお迎えでした。

 水原くんは父子家庭で、家事のほとんどを水原くんがしているらしく、料理が大変なのだという話題で盛り上がりました。私の両親は健在ですが仕事で会社に泊まり込んだり、出張で世界中を飛び回ったりと忙しいので、家事は全て私の仕事です。なので家事の大変さはある程度わかるつもりです。一人だと手を抜いてしまいますが、桜木家のご両親も忙しい方達で、桜木姉妹の食事を作ったりすることもよくありますし。


「水原くんはどうしたの? 何かあった?」

「この前、教えてもらったレシピが全部すごく好評でさ、お礼を言おうかと思って」

「あれぐらいなんてことないよ! お口に合ったなら幸いです」

「本当にありがとうね。お陰でレパートリーも増えたし、残ったらお弁当にも入れられるし、すごく助かってる」

「そう言ってもらえると嬉しいな。また他のも今度教えるね」

「ありがとう」


 いえいえ、と軽く首を振りながら笑う。今度はなんのレシピを教えようかな、なんて思いながら頭の中で自分のレパートリーを思い浮かべる。桜木姉妹に好評だった豆腐ハンバーグとかいいかもしれませんね。確か水原くんのお父さんが健康に気を使い出したとか言ってましたし。


「それでさ、篠宮さんが良ければなんだけど……「藍ー!」

「! 春乃? なんでそんな大声で……」

「やっぱりこうなる、か。篠宮さん行っていいよ」

「え? でも話途中だったんじゃ……」

「いいんだ、また今度話すから。その時は聞いてね?」

「うん、わかった。しっかり聞くね! じゃあ私行くね」

「うん」


 水原くんに手を振って、声のした方に向かいます。こういうこと、そういえば前に飛鳥先輩と話してるときもあったなぁ……。その時は呼んだだけって言われたんだっけ。

 今回もなんだかそんな気がするけど、春乃に呼ばれたらすぐに駆けつけなきゃいけない気分になるのはなんでなのかなぁ。なんて考えながらいつものように春乃の元へ駆け寄った。

本当はもっと攻略キャラを出す気だったんですけど思った以上に長くなったので2人と名前だけの1人で

主人公は篠宮藍。自分の話している相手が攻略対象だなんて夢にも思ってないし、ヒロインがイベントを起こさないか待ち続けている

攻略対象の2人はお馬鹿なワンコ後輩と時々腹黒いオカン系優男

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ