表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

つき人

 わたしのクラスには、ちょっと怖い男の子が居る。

 怖いと言っても、不良みたいにチャラついている……とかではない。

 外見は至って普通。勉強もできるし、友達の言葉を借りればクソ真面目な人だ。


 容姿も整っていて、クラスの女の子達からはとても人気が高い。

 確かに彼は、失礼ながらその辺の男の子と比べてしまうと、とてもかっこいいとは思う。


 だけどいつも怒っているような表情だし、目つきも鋭いし、言葉にも棘があるのだ。

 そして彼は何故か毎日毎日、わたしに恨みでもあるかのように睨みつけてくる。

 彼に、何かしてしまった記憶はないんだけどな。


 ある、移動教室の時間。

 数少ない友達と移動している最中、何もないだだっ広い廊下で、わたしはなんの前触れもなく転んだ。

 散らばしてしまった筆箱の中から、芯の出たシャープペンシルが転がり出て、わたしの眼前で止まる。

 友達が呆れたように「このドジっ子」と道具を拾い集めてくれるが、わたしの心臓は早鐘を打ったまま。


 実は、こんなことは日常茶飯事だ。

 ある時は、信号無視の車にはねられそうになったり、調理実習で熱いお湯の張った鍋を被りそうになったり。

 上げ出したら、キリがない。


 起き上がっている最中、隣をすり抜けて行ったクラスの女の子達が、「ぶりっ子ノロマ」と言ったのを聞いた。

 これも、もう慣れたことだ。

 だけどやっぱり、心はじくりと痛む。


 わたしが転んでしまったせいでだいぶ時間が迫っていて、友達と二人で急いで教室へ向かっていた。

 そこで、わたしがもっとも恐れている階段に差しかかったのだが、時間が時間なので躊躇(ちゅうちょ)している暇もない。


 階段には、良い思い出がなさ過ぎる。

 背後には誰も居ないのに、よく背中を押される感覚があるのだ。

 小さい頃は、それでよく階段を転がり落ちていた。よく死ななかったものだと思う。

 今では注意して手すりを使うようにしてゆっくりと下りるようにしているが、それでも足を引っかけられたような感覚があったりしてよく転ぶ。


 「時間ないよ、早く」と友達に急かされ、手すりを軽く掴んで足早に下り……ようとした時。

 突然後から腕を引かれて、驚きのあまりに「ひっ」と声を上げた。

 振り向いてみると、そこに居たのは、少し苦手意識を持っている彼だった。


 彼は険しい顔つきで、わたしの背後を睨みつけている。

 こ、怖い。けど、話しかける勇気はない。

 すると突然、少し強めにわたしの背中を払った。

 彼はチラリと咳き込んでいるわたしに視線を向けると、「ゴミ、さっき転んでただろ」と短く言って行ってしまった。


 それから、彼はよく、わたしの側に来るようになった。

 相変わらず機嫌が悪そうな表情をしていて、言動もキツイ。

 でも、彼が側に居てくれると、どうしてかわたしの身体はとても軽くなるのだった。



(2015.03.17)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ