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挑戦状

 オレは、女の子が好きだ。

 別にプレイボーイ的な意味ではなく、遊ぶならムサイ野郎じゃなくて、華やかな女の子が良いということ。

 同じクラスになった女の子達の名前と顔は早々と覚えたし、メールアドレスだってゲットした。

 自分で言うのもなんだけど、顔もそんなに悪くない方だし、女の子達の反応もそこそこ良し。

 これぞまさに、薔薇色の学校生活。青春と言えるのではないだろうか。

 友人達からは「女好き」だの「女たらし」だのと酷い言われようだが、少なくともオレの中では違うのだ。


 ところが、全てが全て簡単にはいかない。

 クラスの何人かはオレのような人間を苦手としている子がいて、アドレスゲットならず、ということもある。

 しかし拒否されたならば、大人しく引くというのもオレなりの心遣いだ。


 席替えをして一新したオレの周辺。

 そこそこ女の子達に囲まれていい気になっていたオレは、隣で静かに雑誌を読んでいる女の子に目を向けた。

 第一印象は、美人。

 その瞬間に、全てが奪われたような気がした。

 そういえばこの子からはアドレスを訊いていないんじゃないか、なぜ今まで気づかなかったのだろうか。


 だが、なんだろうか、この威圧感。

 隣の少女はこちらをチラリとも気にせず、まるで話しかけるなというオーラを出しているようだ。

 しかし、ここで引くオレではない。

 可愛い子とはお近づきになりたいというのは、世の男子の性であるのだから。



「あ、あの、アドレス教えてくれませんか」



 何故どもったのか、敬語だったのか。

 よく分からないが、柄にもなく緊張していたらしい。

 笑顔が歪になっているかもしれない……と思っていた時、女の子がこちらに顔を向けてくれた。

 うん、やっぱり美人だ。

 オレは確信した。今からが本当の薔薇色の始まりだ、と。


 が、女の子は露骨に嫌そうな顔をすると、「やだ」とたった一言だけ放って雑誌に向き直った。

 ちょっと待ってください。

 オレは静かに心の中で突っ込むと、素早く女の子の向かえに移動した。

 そのれにビックリした女の子はオレを見上げるが、オレの方もビックリしている。



「お願いします教えてください!」



 おいおい、往生際が悪いぞオレ。拒否されたら潔く引くのが、売りじゃなかったのか。

 しかしオレの勇気もむなしく、女の子はいっそう嫌そうな顔をして「やだって言ってんだろ」と突っぱねてきた。

 そりゃそうだよな。ほぼ初対面な上に、色んな女の子に声かけてるんだし。

 そう思う反面、悔しさと苦しさが同時に上がってきた。

 今までの女の子には、拒否されてもちょっと残念に思うだけで、こんな気持ちはなかった。


 だからだろうか、諦めるという言葉が思い浮かばなかった。

 それどころか、何故か分からないが、逆に燃えるような感情が湧き上がる。

 ニヤつきそうな口元を隠すと、その場にしゃがみ込んで、机に腕を乗せて彼女を見上げた。



「……なに」

「ん~」

「特に用がないなら、早く戻れ」

「落とすから」



 ニヤニヤと笑顔を浮かべると、女の子はドン引きだと言わんばかりに顔を歪めた。

 引く気はない。だってこれは、初めて出した挑戦状なのだから。



(2015.03.13)

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