偽りキューピッド
どうして、こんなに胸が苦しいのだろうか。
どうして、後悔なんてしているのだろうか。
「手伝ってやろうか?」と声をかけたのは、俺の方だったのに。
彼女は、俺の友達の好きな人。そして彼女は、俺の友達が好きだ。
つまりは両想いなのである。
のだが、どうも小心者らしく、お互いに歩み寄ることはなかった。
じれったくて、もどかしい。
傍から見れば二人の想いは一目瞭然だったため、俺は二人の橋渡しとして一肌脱いだのだ。
とりあえず、お互いに話しかけられるようになることから始まり、一緒に登下校させたり、デートまでこぎつけたり。
二人にバレないように、こっそりと二人の間を行ったり来たりしていた。
その甲斐あってか、二人の距離は少しづつ近づいていっているようだった。
全てが順調、俺の頑張りのお陰で。
なのに、これは一体全体どういうことなのか。
友のために奮闘していた、はずなのに。
彼女に「ありがとう」と言われる度に、心が痛んだ。
友達から「お前のお陰だ」と言われる度に、黒い感情が湧き上がった。
いけない、いけない。これ以上は駄目だ。
俺の心が、壊れる。
「もう俺の手は必要ないだろ」と、半ば無理やりに二人から離れた。
もちろん、彼女との距離も開けた。
邪魔をしたらいけない。壊してはいけない。
そう、思っていたのに。
「そんな態度されるの、さみしい……」
彼女がそんなことを言うから、期待してしまう。
神様が、俺と友達の仲を、引き裂こうとしていることを。
(2015.03.06)




