きょうだいあい
大好きなお兄ちゃん。
あなたはいつも優しくて、自己主張の少ない私の面倒をいつも見てくれている。
だけど私は、私だけは知っている。
あなたは優し過ぎて、他人の要求を断る事も出来ない。
自分に自信が無いくせに、それでも他人の心配ばかりして。
でも私はそんなお兄ちゃんが大好き。
だから、誰にも渡さない。
「あはは。甘えん坊さんだなぁ」
無言で抱き着く私の頭を、あなたはいつも暖かい手で優しく撫でてくれる。
私だけの特権、何もかもがすべて私だけのモノ。
そう錯覚していた。
だけど、そうじゃなかった。
ある日、とある場所でお兄ちゃんを見かけた。
お兄ちゃんを見ると、いつも嬉しい。
だから声をかけようと思って、撫でてもらいたくて、足早に後を追いかけた。
私はいつも、あなたを、あなたの事だけを考えている。
でもそこに居たのは、お兄ちゃんだけじゃなかった。
知らない女の人。
私に向ける優しい笑顔と、私の知らない照れたような表情をそいつに向けていた。
「……あの女、誰」
帰宅したお兄ちゃんに、抑揚なく問いかける。
お兄ちゃんはなんの躊躇(ちゅうちょ)も無く、「お付き合いしている人だよ」と照れ臭そうに答えた。
その瞬間に目の前が真っ暗になって、頭の中が真っ白になった。
それからとんとん拍子に事が進んで、お兄ちゃんとその女は結婚する事になった。
「どうして、お兄ちゃん。どうして……」
「なんだ、まだお兄ちゃん離れ出来ないのか? 祝福、してくれないのか?」
お兄ちゃんはおかしそうに笑って、「嬉しいけどな」と言った。
その言葉、絶対に忘れないで。
式が行われる前夜、私は行動に出た。
明日が待ち切れなくて眠れない女の散歩道。
「夜道には、気をつけて」
忠告を投げかけた私は、なんの躊躇も無く女の横をすり抜ける。
翌朝、お兄ちゃんは頭を抱えてソファに座っていた。
目の前に広げられているのは、結婚するはずだった女の訃報(ふほう)が載った新聞紙。
「残念だね、お兄ちゃん」
「なんで、こんな事に……」
「ダイジョウブ。私がずっと側に居てあげるから」
「はは……ありがとう」
何も知らない愛しいお兄ちゃん。
あなたに近づく汚い虫は、私が何度でも払ってあげる。
(2015.09.15)




