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籠の中の

 わたしの家は、裕福とは言えなかった。

 それでも両親は優しくて、贅沢は決して言えなかったけど、毎日が楽しくて、幸せで仕方なかった。

 だからわたしは、両親のためならなんでもすると、いつもいつも笑顔で言っていた。


 ある日、両親に連れられて豪華な屋敷に向かった。

 大泣きする母と歯を食いしばる父に不安な顔を向けるけど、屋敷の住人らしき人が出て来て中身の詰まった大きな袋を貰うと、まるで狂ったかのように目を輝かせて涙を流しながら笑った。


 なにこれ。


 その袋と引き換えにわたしは屋敷の人に腕を引かれて、訳の分からないまま中に連れられた。

 待っていたのは大量の武器と、それらを扱う訓練。

 指導者には「命が尽きるまで主に仕えよ」と教え込まれ、時間が過ぎれば過ぎるほど、自分が今どういう状況に陥ったのかを理解していった。


 要するにわたしは大金と引き換えに、この街を治めている……いわゆるこの貧困を作っている根源である貴族の護衛人となったのだ。

 つまり、愛していた、信じていた両親に、生活費のために売られたということになる。


 なにそれ。


 でもこれはわたしが望んだことで、「なんでもする」って言った。

 でも、でも……わたしはあのままでも十分に幸せだった。

 何も要らなかった。


 だってもしかしたら、もう二度と顔を見れることはないのかもしれないのに。

 わたしって、あなた達からしたらいったいなんだったの。


 だけど、もうどうにもできない。

 ここに居るしかない、ここで生きていくしかない。

 これからはここが、わたしの居場所。

 誰にも壊させない、誰にも奪わせない……だって。



「わたしの居場所が、なくなる」

「だったら、オレが居場所を作ってやる」



 そう言って手を差し伸べてきたのは、この屋敷を壊しに来た旅人の男。

 街の現状を嘆いて、よそ者だというのに単身で乗り込んで来た阿呆だ。


 いったい何を言っているのか、ただの馬鹿か。

 だけど。



「だから、オレの手を取れ」



 真っ直ぐな眼差しと力強い言葉。

 まるで一筋の光に、わたしは無意識に震える手を伸ばした。



(2015.05.01)

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