表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

崩れる

 わたしとその人の関係は、いわゆる幼馴染み。

 昔はよく家族ぐるみで一緒に遊んだりして、とても仲が良かった。

 わたしは、ずっとずっと、彼のことが好きだ。

 何をするのも常に一緒で、だからわたしは全て彼と同じにする。


 だけど、わたし達はただの幼馴染み。

 それ以下でもないし、そして、それ以上にも決してならない。

 少なくとも彼は、そう思っているのだろう。

 彼のあからさまな変化は、突然表れた。


 彼が受けると決めたから、お揃いの高校を選んだ。

 その入学式の下校時間。

 今までのように彼と帰るため、下駄箱前で待っていた。

 まだ慣れない、新しい風景。新しく始まる、学校生活。進展し得る、彼との関係。

 わたしは浮かれまくっていたのだ。

 幼い頃から、元気で、優しかった彼。

 これからもずっとこのままで、時が過ぎて行くのだと錯覚していたのだ。


 聞き慣れた明るい笑い声。

 入学初日で、もう早友達を作ってしまった彼が、わたしの前に現れた。

 身長も、髪型も。もう昔とは違うのに、毎日会って見慣れているせいか、変化はそんなに分からない。

 好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと。

 何もかもを知っているのは、幼馴染みであるわたしだけの特権。


 彼の周りに居る友達が、ニヤニヤとわたし達に視線を向けてくる。

 それがとても心地好い。

 誰に対してかは分からないけど、自慢する心が溢れ出し、優越感に溺れてしまう。

 ところが彼は、気まずそうに笑った。

 かち合った視線は下に外され、居心地が悪そうに頭をかく。

 この動作を、わたしは知っている。

 困っている、言い出し辛いことがある……つまり、何かに対して良く思っていない時に出る癖だ。



「あ、えっと……」



 彼は視線を合わせようとしない。

 頭をかく手は、下ろされない。


 嫌な予感がした。

 いつもとは違う彼の空気。

 周りの雑音が徐々に小さくなっていって、わたしの心音だけがやけに聴こえてくる。

 何に、どうして、不安になっているのだろうか。



「……その、今日からは、さ」



 彼が言葉を紡ぐたびに、心臓がものすごい音を立てる。

 足が震え出して、笑みを浮かべていたはずの口元が自然と歪む。

 何を言い出すのだろう。分かりたくない。聞きたくない。



「もう、一緒に登下校すんのやめよう」



 ガラスの割れたような音が、聴こえた気がした。

 頭が一瞬くらっとして、息が一瞬吸えなくなって。

 だけど、声が「えっ?」と無意識に漏れた。


 「やめない?」ではなく「やめよう」。

 わたしの意見は、聞かないということなのだろう。

 なんで? どうして? 嫌だ!

 疑問と感情が、喉のすぐそこまで込み上げてくる。

 でも、それらは吐かれず、理由を知ることになる。


 下駄箱の影から、女子達の楽しげな声が聞こえてきた。

 すぐに現れたのは、お洒落な女の子達。

 わたしとはとても真逆な、華やかな集団。

 みんな同じクラスになった人達だ。


 そう認識できた、一瞬の間。

 彼が、まるで無意識といったように、その中の一人に視線を注いだ。

 やけにゆっくりと感じられる、ほんの数秒の間。

 その時の彼は今までに見たことないほど、真剣な顔をして輝いた目をしていた。


 嗚呼。わたしはその目を知っている。

 その目はわたしが彼に向けているものと、同じなのだから。



(2015.02.27)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ