初めての部活動
このお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
SIDE 八神
「おい。八神。お前にお客さんだぞ。入り口に待たせてある。下級生だから待たせるなよ?」
「ああ。すまない。」
俺のクラスメートの男子学生が自分の席につきながら声をかける。その男に礼を述べて教室の出入り口に向かう。
「呼び出してすみません。」
その人物、登坂山道は俺の姿を見て頭を下げる。
「いや、別に構わないが俺に何の用だ?」
俺の問いに登坂は緊張した面持ちで深呼吸して1枚の紙を差し出した。これは…入部届け?
「部長。ボクは自転車競技部に入部したいです。」
急な登坂の言葉に多少驚いていたが、なんとか持ち直して入部届けを受け取った。
「急な心変わりだな? 何かあったのか?」
多分、松郷辺りが何かしたのだろうな。一昨日までレースにたいした興味もなさそうだったのにその方向転換が気になり、問いかけて見たが困ったように言いよどんでいた。
「とにかく、受け取っておく。皆に紹介するから、放課後に部室に来い。今度の土曜日にロードバイク買いにうちまで来てくれ。
それまではマネージャーの手伝いで構わないか?」
「はい。ありがとうございます。」
俺の言葉に登坂は頭を下げてから自分の教室に戻って行った
SIDE 山道
「みんな集まったな? 部活を始める前に報告がある。新入部員が1人増えた。まだロードバイクは手に入れてないから当面はマネージャーの手伝いということになるが色々と指導して欲しい。入ってくれ。」
部長の八神さんの言葉にボクが入室すると、あの場にいた大柄な先輩が驚いている。その視線を浴びながらペコリと頭を下げた。
「1-Bの登坂山道です。自転車の事は右も左もよくわからない素人ですが入部したからには全力で頑張ります。」 その言葉にじっと見てるだけのもの拍手している人など色々だった。
「こちらこそよろしくな。俺はとなりのクラスの岸川だ。」
岸川君という大柄な人の自己紹介をきっかけにみんなが自己紹介を始める。
もう1人の1年が佐渡君で2年が2人。大川さんと梁川だ。そして、3年。定峰先輩にボクを拉致った松郷先輩に部長の八神先輩。以上の8人らしい。
「時間もないし、早速トレーニングを始めたい。ともみ。」
その言葉に1人の少女がボクの前に出た。
「しばらくはアタシがしごいてやるから覚悟しなさい。」
ボクはその少女の言葉をしっかり聞いてなかった。
「何で小学生がこ、グフ!」
最後まで言い切る前に少女の正拳がボクの鳩尾にめり込んでいた。
「誰が小学生よ! アタシは八神ともみ! れっきとした高校1年よ!」
「えぇ! で、でも、見た感じ、小学生じゃ、グフ!」
「似たような背丈のあんたに言われたくないわよ!」
先程よりも強力な一撃が鳩尾に決まった。
そのせいで間近に見てしまった。見た目に反して巨大な激しく揺れる2つの膨らみを。
「トレーニングを始める。」
八神部長はそう言って、部員達を引き連れ外に出る。
「さ。チンたらしてないで、アタシらもやることやるわよ。」
ともみちゃんの言葉に動きだそうとして、何かに躓いて転んでしまった。ともみちゃんを巻き添えにして。
ともみちゃんにボクを支える力がなく、ともみちゃんを押し倒すような姿勢で倒れた。
右手に伝わるマシュマロのように柔らかで温かい感触に硬直していると、ともみちゃんの顔が怒りで赤く染まってゆく。
「ご、ごめんなさい。」
慌てて謝罪しながら立ち上がるのだが、時すでに遅し。
「このスケベ!!」
ともみちゃんのアッパーカットが的確にボクのアゴに決まった。
とまあ、想定外のアクシデントがあったもののどうにかともみちゃんの手伝いをすることが出来たと思う。
「後しばらくすればみんな帰ってくると思うわ。お疲れ様。」
「ともみちゃんこそ。お疲れ様。
ところで、ともみちゃんはなんで、この部に入部したの?」
ボクの問いにともみちゃんは首を傾げながらも答えてくれた。
「実家が自転車屋だったこともあって自転車が好きってのもあるけど、去年のインターハイでお兄ちゃん、部長の応援に行ったんだけど、赤和学園に大差つけられて負けちゃった時、悔しそうにしてたのよね。あれ見て、入部しようって思ったのよ。」
「お兄ちゃんを支えたいとか?」
「そうそう。そんな感じ。」
そう言って笑うともみちゃんが可愛らしく思えた。