プロローグ
この話を書くにあたり実は結構ドキドキしてます。
ボク達は走り屋の為の自転車、
ロードバイクに乗り、ゴールである富士山五合目を目指してひたすらにペダルを回していた。
6人いたチームも怪我やマシントラブルで走れなくなってしまい、今や3人しか走っていない。
その3人も高校1年。それでも、諦める訳にはいかない。
彼等を玉座から引きずりおろす。
そのためにみんな頑張って来たんだ。だからこそ岸川君は一生懸命に先頭を走りボク達の風除けになってくれてる。
でも、岸川君は平坦な道を速く走る事に特化したスプリンター。クライマーのように坂道を登る事には向いてない。
ものスゴいスピードで走っていた岸川君がバランスを崩し落車して体を地面に叩きつけてしまった。
「岸川君!!」
ロードバイクに怪我は付き物転倒して骨折したなんて話も珍しく無いらしい。
思わずブレーキを握ろうとしたところで、
「振り返るな!! 登坂! 走れ!!」
佐渡君の叱責が飛ぶ。
「でも、佐渡君! 岸川君はボク達の為に、」
「だからだ!! ここで足を止めて3人ともリタイアする気か!!」
佐渡君の叱責に岸川君の事が気になりながらもペダルを回した。
ーそう。それでいいんだ。
そんな風に言われた気がした。
しばらく佐渡君が風除けになって走っていると、今度は佐渡君がマシントラブルを起こした。
「チェーンが切れた!!」
「ごめん! 佐渡君!」
佐渡君に謝罪しながらも前に出る。
風除けになってくれた2人がいないボクの足は重い。それでも、みんなの為に走る。
どれだけペダルを回したかわからないほど走ると、背の高い木々が無くなる。富士山を登り森林限界と呼ばれる境界線に達した為だ。気温や風などが絡むため場所によって違うけど富士山は約2500メートルぐらいらしい。その高さまで登りつめてようやく、
「来たよ白石君!」
『常勝王者』、赤和学園に所属するクライマー。白石翔君の姿が見えた。
「よく来たな!! だが、玉座は渡さん! 王者は赤和学園だ!! 依然として変わらずな!!」
「そうは行かないよ! 玉座はボク達が頂く!」
そう返しながら、ケイデンスを上げて白石君と並ぶ。
「面白い! ならばやって見せろ!」
白石君のその言葉と共に立ち漕ぎで加速する。
「言われなくてもそのつもりだよ!!」
白石君にそう言い返してダンシングをする。
人生って妙なものだよね。アニメやマンガが大好きなボクがロードバイクを乗り回して、富士山を駆け上っているなんて、4か月前のボクは想像してなかったよ。
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