参
来た。
なぜかはわからない。けれど突然確信した。
その確信だけを頼りに駆けだす。
心よりも体が先に動いていた。
何かに呼ばれるように、全力で駆けた。
そして、辿り着いたそこに、確かに彼はいた。
血まみれの姿で力なく木の下に体を預け、辛うじて意識をつないでいた。
傍にしゃがみこむと、目が合った。
やっと、会えた。
言葉にはなっていなかったけれど、彼はそう言って微笑んだ。
降り注ぐ木漏れ日がまぶしくて薄く目を開ける。
明るい光が目に痛い。思わず目を細めて、ふと考える。
気を失う前に見た光景。あれは、現実だったのだろうか。
そういえば、血の匂いがしない。頭から血を被って血みどろだったはずなのにどうしたことだろう。
それに、体のどこも痛くない。
ただ、まるで自分の体でないかのように重くて全く力が入らない。
ぼんやりしていると、ちょんちょん、と肩をつつかれた。
そちらに視線を向けて思わず息をのむ。
そこにはずっと思い続けていた、「あのこ」がいた。
透ける白銀の髪も、艶のある黄金の瞳も、現実だったのだ。
そのことが嬉しくて、ほっと息をついた。
ずっと傍を離れずに不慣れな手つきで世話をしてくれた。
身体が動かないことがもどかしくて仕方がなかった。