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壱
小さな離れだった。
八畳ほどの一室に小さな厨と庭がついていて、本邸から伸びる長い廻廊の先にあった。
そこは昔、強大な鬼が封じられていた。
妖のなかでもほぼ最高位にあり、神に等しいとされている一族の誰も倒すことができなかった鬼は長く封じられていた。
しかしもうその鬼はおらず、代わりにそこにいるのは7歳の子供であった。
不死と言われるほど長く生きる彼らは100歳で人間でいう二十歳になる。
それからすれば、7つというのは赤子同然であった。
内にあるものを封じる結界がいまだ張られたままのそこに近づこう者など居なかった。
一族の誰もが恐れ、避けるものが鬼から赤子に代わったというだけのことだった。
封じられた彼女もまた、自分が誰からも望まれぬ存在であることをうっすらと理解していた。
誰も自分を訪ねてなど来ないであろうことも。