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なんか強かった~魔王、ワンパンでした~

才能がなかった。

魔法も使えなかった。剣もうまく振れなかった。

スキルもステータスも、全部平凡以下。


それでも、俺はあきらめなかった。


「筋トレだけなら、誰でもできる」


そう言って、ただひたすらに鍛え続けた日々。

山にこもって、岩を砕き、丸太を投げ、滝に打たれて――気づけば10年。


気づいたら、

俺、なんか強くなってた。



1.山奥の男

山の奥で、一人の男が腕立て伏せをしていた。


「998……999……1000! よし、次スクワット!」


彼の名はいつき

魔法の才能ゼロ。戦闘スキルもゼロ。知識も……まぁ、ゼロ。


でもただ一つ――筋トレだけは、毎日欠かさなかった。


朝:崖登り

昼:丸太投げ

夜:川泳ぎと腹筋500回


それを十年。他になにもせずに。


本人は気づいていなかった。

それがもう、とんでもない強さになっていたことに。


2.村からの頼み

その日、ふもとの村に降りたのは、なんとなく米を買いに行こうと思ったからだった。


だが、村はざわついていた。


「魔王が復活したらしいぞ……」

「勇者たちが次々とやられてるって……!」


「ふーん」とだけ言って、樹は米を買って帰ろうとした。

そこへ、泣きながら子どもがすがってきた。


「お兄ちゃん……たすけて……! お母さんが魔王に連れていかれたの……!」


樹は思った。


「……それ、ムカつくな」


3.魔王の城にて

魔王は豪華な玉座に座っていた。


「貴様が……人間の代表か?」


「いや、米買いに来たついで」

と、樹は真顔で言った。


魔王は笑った。

「愚か者め。我が魔力で地も空も焼き尽くしてくれる!」


ズオォォォォ……!


黒い火柱が樹を包み込む。だが――


「熱くねぇな。滝修行のがマシだったわ」


無傷だった。

魔王の顔がひきつった。


「な……なんだ貴様……!」


「筋トレしかしてねぇよ」


ズドォンッ!!!


次の瞬間、樹の拳が魔王の顔面に叩き込まれた。

天井が吹き飛び、魔王の体は城ごと山を突き破り、空の彼方へと飛んでいった。


静寂。


「……あれ? 終わり?」


村の人たちは言った。


「……世界、救われたぞ」


4.エピローグ

「筋トレは、裏切らないな」


樹はいつも通り山に帰り、今日も丸太を担いでいた。

世界を救っても、筋肉を鍛える日々は変わらない。


また何か来ても――

多分、なんとかなるだろ。


だって、なんか強かったし。

努力は報われる。

その証拠に、筋トレしてただけの男が、魔王をワンパンで倒した。


筋肉は最強。世界を救うのは、剣でも魔法でもなく――努力の塊だったのだ。



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