目覚め
目が覚めると私は病院のような施設のベッドに横たわっていた。おはよう、と隣から聞こえた。隣には女医のような風貌の女がいる。彼女は私との会話を始めた。
「気分はどう?」
「まあ、普通です。」
「そう、なら悪くはないのかな。私はデフレシアで死者対応を担当している横水です。あなたの名前はリリさんで間違いないかな?」
「ええ、間違いないです。」
「よかった、じゃあせっかく目が覚めたことだし体を綺麗にしてもらおうかな」
女医は体を起こした私にこっちに来て、と言い私の前をゆっくり歩いて行った。私の体はまるで生きているみたいだ。しかしさっきあの女医は死者対応と言っていたし、死んだのだろうか。彼女のハイヒールを考え事をしながら追いかけていくと、シャワー室が何部屋かある無機質な部屋に着いた。ここで体綺麗にしておいでね、と女医は言い残し、彼女のハイヒールとともにどこかへ行ってしまった。私はおとなしく指示に従い、シャワーを浴びることにした。その間、私の頭の中には死に際の景色がフラッシュバックされていた。どんな瞬間よりも濃い時間を過ごしたあの数秒に私は魅了され、ここがどこか、シャワーを浴びた後どうすればよいのか、先ほどの女医はどこに行ったのか、普段なら考えずにいられなかったであろうことが今だけはどうでもよかった。