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独白
私は目の前に広がる光景に胸が躍っていた。そこは自殺の名所と名高い崖で足元は安定しないが、少し視線を上げれば真っ黒な海が一定のリズムで轟音をあげる。今はそれが心地よく心強い。幸いにも今日は晴れており、綺麗な星空が広がっている。まるでこれから海の一部となる私を歓迎してくれているようだ。走馬灯のように今までの人生が思い出されている脳内をよそに、私は冷静に「ここで飛び込んだら死因は溺死か、はたまた岩に当たり失血死でもするのだろうか」と私には関係のないように思えることを考えていた。命を投げ出す時くらい何か壮大なことでもして生まれた意味を探したい、なんて思っていたのに、一人の人間にできることなど限られていて、命が散る瞬間は驚くほどにあっけないのだ、とこれまでの人生で学んだ。真っ黒な水面に描かれた白い道は息をのむような美しさだ。私はそこを歩くかのように崖の端から足を踏み出す。浮遊感と本能的な恐怖に気持ち悪さを覚えながら、私は海の一部になった。