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序章

 何が楽しくて生きているのだろう。そんなことを一人家で考える。君がいた頃はこの世の全てが楽しく輝いて見えた。そんな君との日々が大好きだった。あれから何年という時間が過ぎ僕はくたびれたサラリーマンになっていた。あの頃の様な輝きは無く命を浪費して生きていた。

 今頃君は何をしているのだろう。ここ最近はいつもこんなことを考える。あの頃は何をするにも君が近くに居た。近くに居させてくれた。でもいつからか君は僕を置いていく様になっていった。その頃から僕の中で君は段々と大きく遠い存在になっていた。

 僕は昔から何をしても普通かそれ以下だった。それに対して君は何をやっても上手くできた。そんな君を僕は何度も羨んでいた。それでも君は僕の事をすごいと、僕のそばにいてくれとそういってくれた。

 世界は残酷だ。この世界ではどんなに願っても、どんなに努力しても夢が叶う事はない。仮に夢が叶うのがとすれば、才能があって、努力し、その方法があっている奴だ。君が僕を置いていったのもきっとそこに理由があるのだろう。

 君は何の為に僕の手の届かないところまで進んでしまったの。

 もう会えない頭の中の君に問いかける。返事はない。昔の君はどう答えたのだろう。今の君ならどう答えるのだろう。そんな事を考えてしまう。今になって何で君が頭をチラつくのだろう。君は今も僕を置いて何かに挑戦しているのだろうか。

 今の僕はどうだ。”オトナ”になって何か挑戦をしてきただろうか。”オトナ”になって努力はしただろうか。もちろん仕事は覚えた。家事もしてきた。毎日生きてきた。だけど、君が隣にいた頃の様に何か無謀なことにも挑戦する様なことはしてきただろうか。

 していない。

 全くしていない。

 こんな事なら何か形に残る何かをしておけば良かった。そんな事を空想する。もう後戻りは出来ないというのに。何でこんなにも僕は愚かなのだろう。全てを忘れた瞬間に、全てを捨てた瞬間に後悔の念に苛まれる。

 息が絶えそうになりながらも思考は加速する。こんな時に思い出すのも君の事ばかりだ。きっと連絡をすれば会いにきてくれたのだろうか。そう考える自分をよそに、君は僕のことなんか忘れてしまっていると囁く僕もいる。どちらにせよこうなるのだったら、一度くらい連絡をしてみれば良かった。

 後悔が増えていく。楽しくない、苦しい、自分自身が憎い。そんな想いだけでこんな行動をしなければ良かった。軽はずみにこんな事をしなければ良かった。とびらのおとをききながらぼくのいしきはとおのいていく。

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