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『武道家』の現在

 それは牢獄だった。

 一人の人間が封じられている。

 世界最強の人間だ。


 世界最強の人間――『二十八代目武道家』は厳重な拘束がされていた。

 両手首と両足首には無骨な鉄錠がかけられている。

 鉄錠には鎖がついているが、その鎖は虚空へと繋がれていた。先は見えない。

 ここにぶち込んだ『士』の人間曰く、


「『獣姫』と同等の処置だ。『獣姫』は日常生活を送れるらしいが、あんたは無理みたいだな」


 実際、『武道家』は最低限の動きしかできなくなっていた。

 戦うどころか排尿すら手間取っていた。

 今の『武道家』は戦えるような状態にはない。

 ただ、『武道家』はその膨大な経験から自分の置かれている状況を冷静に分析していた。

 おそらくは何らかの利用価値があるから自分は封ぜられている。

 そのためにあの『絶対』を名乗る美少年を使って捕縛をした。

 あの美少年の正体は分からないが、何らかの法則に従っていることは間違いない。

 その法則を打ち破らなければ勝利はない。

 それくらい圧倒的な敗北を喫していた。

 無論、まだ完全に負けたわけではない。

 『武道家』はそういう観点で勝負をしていない。


 負けても負けを認めない。

 勝つまで戦い、成長を続ける。

 だから、『武道家』は最強なのだった。


 実際、『獣姫』と並ぶほどの封印をされている今でも『武道家』は修行を続けていた。

 五感も鈍く、手足もほとんど動かせないが、それでも彼は鍛え続けていた。

 脳内で敗北した勝負を洗い直し、そして、わずかな筋肉の蠕動で己の動きを高める。

 食事は栄養剤の点滴でギリギリ生存できる程度のものだったが、それでも彼は戦う。

 『武道家』は徐々にやせ細っていったが、そこで死亡したら転生してしまうので、『士』たちの手によって生存し続けた。

 そんな拷問のようなギリギリの状況も『武道家』にとっては修行でしかない。


 それはある晩のことだ。

 月明かりだけが僅かにその牢を照す中、一人の少女が『武道家』を訪ねた。

 一日中『士』の見張りは監視していたが、誰もそれに気づかなかった。

 いや、気づけるわけがないのだ。

 なぜならば、その少女は究極的な魔法使いだから。

 完全空間転移魔法を用いて何の痕跡も残さないから。

 『武道家』は研ぎ澄まされていたので先に声をかけた。


「久しぶりだな」

「……それはどういう意味なのかしら?」

「言葉通りだ。『幻想境』から出てくることはもうほとんどないだろ。『獣姫』サマがいるもんな」

「あんたはバジーリオじゃないわ。バジーリオに似た何か。仲間のフリしないでくれる」

「ヒドいな。俺はそれでも仲間だと思っているんだがな」

「アメデオも逝っちゃった。もうあたししかいないもの」

「本当に俺のことは無視するのかよ。寂しいな」

「………………あんた、アメデオは見送った?」

「一応な。捕縛されたから形だけだが」

「あたしも隠れて見送ったわ。出て行くことはできなかったもの」

「素晴らしい人生だったさ。それに、まだ俺がいるだろ」

「絶っ対嫌! だって、あんたのこと認めたらバジーリオが可哀想だもの」

「俺のことが好きだから認められないのか」

「……うん。少しは仲間だと思うけど、完璧じゃない。あんたはただのチカラの塊。でも、今生きている人間じゃ一番親しみを感じている。だから嫌。分かる?」

「分からない」

「最っ低」

「今の俺の方がはるかに強いぜ」

「本っ当にくだらない! あたし、そういう尺度、どうでも良いもの」

「で、わざわざ隠遁生活から会いにきたんだ。何か、俺に聞きたいことがあるんじゃないのか?」


 その少女は幼い。

 いや、幼く見える。

 とても可愛らしい容姿だが、百年以上を生きている。

 英雄の中でも実は最年長だった。

 少女は世界を救った時から何も変わらない。

 世界唯一のハイエルフ種。

 不老不死を体現した究極の一。

 世界最高の魔法使い。

 『大魔法つかい』クラーラ・マウロはどこか怯えたように質問する。


「アダムの血族があたしを探しているって――本当?」

というわけで、ここまでお読みいただいた方に感謝を。

本当にありがとうございます。


毎日更新は一旦停止で、再開時期はまたいずれ報告します。

カクヨムの方では週2回を目標に更新していますが、

第4部が終わってからこちらでは毎日更新する形を考えています。

(20話ちょっと更新していますが、まだ第4部の半分もいってない……)


これ、なろうに転載する際に、少し手を加えているからです。

本当に誤字とかの修正や読みやすさの部分なので、

ストーリーは大きく変わっていないので安心してください。


転職に伴った資格の勉強など、

いろいろ生活に変化があるのですが、

よほどのことがない限り、最後まで続けるつもりなので、

そこは安心していただければと思います。


マクシムたちの旅の応援をしていただける方は登録やいいねをお願いします。


それと、場つなぎというほどではありませんが、

昔書いた作品とかを更新するので、

気になる方はそちらも応援よろしくお願いします。


ではまた。

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