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七人目の勇者はなぜ仲間に殺されたのか?  作者: はまだ語録
世界を愛し、世界に愛された者『大魔法つかい』
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古代遺跡

『予知能力者は将来を知る者ではない。将来を創る者だ。そうは思わないか?』

「あなたはそれほどの能力者でもないのです」

『では、ルチア・ゾフはどうかね?』


「……ルチアもそこまでではないのです。その域に達するのは、単なる人間種のルチアには不可能なのです。そこまで世界を変えられる存在は『旅人』だけなのです」

『しかし、我らでも事実として未来をねじまげられる。つまり、本来の歴史に対する責任というものが我らにはあるのかもしれない。そうは考えないかね?』

「考えないです。本来の歴史なんてものは存在しないのです」

『本来の歴史がないというのもおかしな話だと思うがね。我らが干渉しなければ、そうなったはずの歴史だよ』

「ルチアたちにできることは可能性のあることだけなのです。奇跡は起こせても、可能性が存在しないものは起きないのです。つまり、少しばかり干渉してもそれは起こり得た現実でしかないのです」

『ふむ。なるほど。そういう見解かね。それでも我はやはり責任があると思うがね』


「では、あなたは『料理人』アダム・ザッカーバードを殺した責任があるのです?」

『当然。そして、世界を救った矜持も持っているつもりだよ』

「……その強さだけは、二流のあなたを尊敬できるのです」

『むしろ、二流の我が、世界を救ったことの方が偉業といえるのではないかね』

「それはその通りだと思うです。ルチアがあなた程度だったら、英雄の一人になろうなんて思わなかったのです」

『あまり褒めていないようだがね』

「ルチアは本心で褒めているのです」


『ま、我は世界の崩壊を延期したに過ぎない』

「十分すぎる仕事なのです。ただ、あれだけの勇者が揃っていたなら、もう少しやりようがあったと思うのです」

『確かにな。もう『大魔法つかい』は君の時には手伝ってくれないかもしれない。将来の彼女は人類種に絶望している。滅びを享受してしまう可能性が高い』

「ですです。人類種最大戦力の損失は、とても痛いのです。もちろん、ルチアなら彼女も再起させられるとは思うです」

『可能なら、あの子はそっとしておいてあげて欲しいがね』

「了解したです。ですが、それが叶わない可能性も受けいれて欲しいのです。それほど余裕はないのです。現代は、あまりにも勇者が減っているのです」

『もちろん、我も分かっているがね』


「ただ、ルチアなら『料理人』の件だってもっと穏便に済ませられたと思うです。もちろん、この仮定が無意味であることも理解しているです」

『無論だよ。君が愚痴を言いたくなる気持ちは分かる。故に、謝罪をしよう』

「ぬいぐるみの姿で謝罪されても困るのです。というか、ルチアの大好きなネコさんに取り憑かないで欲しいです」

『その件も謝罪しよう。すまないね』


「ふぅ。仕方ないです。でも、本当に現状のままではかなり厳しい戦いになるです」

『そうだがね。だが、平和な時代になったから勇者が生まれにくくなった現実はどうしようもない。一体、どうするつもりだね?』

「……まずはナタリア・サバトさんです」

『サバト……。アメデオの子孫か?』

「ひ孫になるのです。ナタリアさんには『竜騎士』でなくなってもらうです」

『? それでは戦力ダウンにならないないかね? 『竜騎士』は貴重なはずだ』


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   +++


 マクシムたちが旅立ち、ようやくたどり着いたその古代遺跡は、どう見ても人類種の手が加わっているように見えた。

 正確には、道中見た暗黒大陸の生物が作ったものには見えなかった。

 なぜならば、暗黒大陸の生物が暮らすのに、家のような形をした施設が必要とは思えなかったからだ。

 少なくとも人類種のように、通路があって、扉があって、部屋があって、そこで暮らすような生物は今までいなかった。


 いや、あるいは、かつて存在したのかもしれない。

 だが、かの英雄『案山子』が暗黒大陸で人型の生物は殺戮したというではないか。

 その結果かもしれないが、古代遺跡は誰も使う者がいなくなっていた。

 しかし、マクシムにはどうしても気になることがあった。


「大きいね」

「巨大です」

「ちょっとサイズ感分からないや。それに多分、かなり古いよね」

「ですです」

「でもさ、その割には綺麗すぎない?」

「です。ルチアもちょっと驚いたのです。こんなにしっかりと残っているとは思わなかったのです」

「本当に、ほとんど原形保たれているんじゃない、あれ」


 古代遺跡がどれくらい昔から存在しているかは分からない。

 だが、土埃の堆積はあっても、建物自体には汚れや傷が見えなかった。

 暗黒大陸の植物に見える動物もついていない。


 古代遺跡は、まるで世界から独立したように存在していた。


 ひどく頑丈な、まるでお城のような堅牢な造りに見える。

 ただ、完全に綺麗なのではなく、部分には綻びがあるため空洞も多いから遠目にも中が分かる。

 通路は上下鋼鉄のような素材で囲まれているし、よく分からない配管なども張り巡らせられている。

 暗黒大陸までやってきた艦に近いかもしれない。

 イメージとしては、巨大な戦艦の骨格のようだ。


「こういう遺跡って他にもあるの?」

「多くは残っていないと思うのです。ただ、どうやらそういう処置がされているようなのです」

「特殊な加工なのかな?」

「いえ、時間軸から切り離された結果、現象の固定化が起きているようなのです」

「ごめん、さっぱり意味が分からない」

「ルチアにも言葉の意味がよく分からないのです」


 ルチアが困ったように首を傾げている。

 珍しいが、奇跡のような『予言者』の能力にも当然ながら限界はあるのだろう。


「入れるのか行ってみようか」

「あの、ルチアも少し不安なので様子見を提案するです」

「そっか。でも、何か標識があるけど、読めない字だね」

「です。ルチアにもすぐには読めないのです。古代言語の一種であることは間違いないと思うのです」

「角張った字だね。でも、どこかで似たような文字を見たことがある気がするんだけど……」

「どこか一部地方でだけ使われていた言語だとすると、ルチアでも読解できる可能性がないのです」


   +++


 ――そこには掲示された文字は現在の世界には存在していないし、読解方法も残されていない。

 ただ、マクシムは少しだけ似た言語を教わったことがある。

 それはハセ・ナナセの名前を聞いた時のこと。

 その正確な名前は、『初瀬七瀬』と表記するという話を聞いた時のことだった。

 それとよく似た文字が使われていた。

 ルチアでも知らない一つの真実が書かれてある。


 对异世界人战略要塞第十七号『真业』


 対異世界人戦略要塞第十七号『真業』――と。

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