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全部天気予報のせいだ。  作者: 星恋すばる
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第一話 朝の道

我ながら短いな。

私立浜瀬学園中学校。

それが、わたし三崎智花の通う学校だ。中学受験に苦労して入った、中高一貫の共学である。いい学校だと思うな、浜学。家から学校まで、だいたい1時間くらい。自転車通学でも行ける距離だからまぁ、近いっちゃ近いな。

「んーっ」

風が気持ちいい。川沿いをはしっていると、水面がきらきらと光っているのが見えた。二羽の鳥がよりそいながら水に浮かんでいる。うん。今日もいい天気だ。これだから、自転車通学はやめられない。智花はこの、なんでもない道が好きなのだ。

その先にある芥藍橋を超えると坂道に出る。びゅーん。智花の通っていた小学校は、この坂道の丁度終着点のすぐそばだ。今は花びらが散って若葉の茂る桜の木。それは、雲一つない青空によく映えていた。木漏れ日が温かい。鼻歌でも歌いながら、ぽかぽかとした初夏の陽気の中自転車をただ漕いだ。

さて、そのこと一時間弱。

「あっ」

いたいた。智花は車輪を勢いよく漕いだ。

学校から一番近い浜瀬駅をちょっと通り過ぎたあたりに、親友の朱音と鈴乃が並んで歩いていた。

「おーいっ!朱音ー!すーずのー!」

大き目の声で呼びかけると、二人は気づいてわたしの方に振り返った。

「あ。おはよ、智花」

「おはようございます」

よいせっと。

智花は自転車を押しながら二人の隣を歩いていくことにした。

「えへへ。今日もいい天気ですなあ。」

智花がそう言うと、朱音はにやにやと笑う。

「智花、今日は午後から雨降るんだってよ?天気予報のお姉さんが言ってた」

朱音はほれほれと右腕にかけたその薄い赤色の傘を見せてきた。

なんだってぇ。あの、わたしも天気予報見たはずなんですけど。

そういや、わたしが家出るときお母さんが傘持ったー?って聞いてきたような。…あれれ。

「え、それほんとですか?私も傘、持ってくればよかったですかね」

お。鈴乃もわたしと同じように傘を忘れたようだ。

あれ。でも鈴乃って

「置き傘ロッカーに入れてるじゃんかー」

「あっ」

なら私は大丈夫ですね。鈴乃は微笑む。

いや、わたし全然だいしょばないから。どうやらこの三人の中で今日濡れて帰る羽目になるのはわたしだけのようである。とほほ。

「朱音ー、帰り、傘入れてよ」

期待を込めて朱音に聞いてみる。

「智花、あんた今日部活あるじゃないの。それに私と鈴乃は生徒会よ。帰る時間がずれるわ」

「たしかにその通りでした諦めて別の人に頼みます…」

しっかしそうなると同じ部活の人に頼むしかないのか。鈴乃は同じ文芸部だが、生徒会があるならそちらの方が優先されるので一緒には帰れないし…どうしよう。空は部活も一緒だし昔から中もよかったけど、後輩だから頼みにくいよな。傘忘れたから入れてって頼むとか先輩としてどうかと思うし。

「あの、智花さん。凪くんに頼んでみるのはどうでしょう」

はっ。その手があったか。凪は文芸部ではないのだが、弟である空と一緒に帰るために、いつも下駄箱で部活が終わるのを待っている。

「鈴乃天才。そうするよ」

あとは凪が傘を持ってきていることを祈るだけだ。信じよう。

それから学校につくまでの約十分間、わたしたちはたわいもない雑談をしていた。

朝やるであろう漢字の小テスト。

やり忘れていた数学の宿題。

駅前にできたクレープ屋さん。

途中見たかわいい小さな雀。

それは、全くもっていつも通りの朝の風景。

何かが変わってしまう日になるなんて、きっと誰も思っていなかった。

でもそんな日は、きっと突然やってくる。

がらりと教室のドアを開ける。

「おっはよー!」

こんなふうにね。変えたのはほら、

「智花!おはよ」

君だよ。玲丞凪くん。

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