33話 いつぞやのアイツ
本日一本目。
開戦からおよそ10分がたった。
まわりに人はおらずモンスターの群れだけがそこにいた。
「状況は?」
自衛隊から支給された無線機から飯田の声がする。
あの後飯田は民間の人達とモンスターに当たっている。
流石に俺と一緒にいるのはリスクがデカすぎるからな。しょうがないか。
「現在およそ30体ほど殲滅したぞ。まぁ、後目算で300体ぐらい見えるけど。」
突っ込んできた狼の眉間をナイフで突き刺しながら会話を続ける。
それにしてもだいぶ弱いな。
俺相手として強化されてもこのぐらいなら本当にレベルアップが目的なのかもな。
数が多いのもそれが原因か。
割と萎えてきたんだが。
こうゆう時に魔法使いみたいな広範囲技を手に入れられると便利なんだろうな。
でもレベルが低くて誰一人として〇〇ボールみたいな技しか持ってなかったんだよな。
ボール系統の魔法は単発攻撃だからあんまり使っても旨味がないんだよな。
それに威力も俺の目の前にいる奴らならいいけど民間の方達が戦ってるモンスターとかには普通に過剰な威力だからな。
「そう言えばお前ってなんの職業に就いたんだ?」
「そういえば言ってませんでしたね。
私は銃器兵になりました。」
…名前が物騒だな。
自衛隊に入ってたんだから銃火器の扱い方はお手の物ってわけか。
「ピストルなどの銃器の損傷を抑える[銃器保護]やパッシブで威力を上げる[銃器強化]、あとはアクティブで威力を上げる[チャージショット]なんかがありますね。」
それ弾のことを考えなければ最初に就く職業としては1番強いんじゃないか?
まぁ今の俺なら耐えられるかもしれないけど。
「誤射には気をつけろよー。」
「流石にそんなヘマしませんって…」
「じゃあ一旦切るぞー。」
「了解。ご武運を。」
ふぅ。あえて触れなかったが相当消耗してたな。
やっぱり精神的にくるものがあるだろう。
いくら死体が消えるとはいえ少しの間は残るしな。
とはいえダンジョンじゃ日常茶飯事だ。
なんとか乗り越えて欲しいものだな。
時刻を確認すると30分が経ってた。
時間が24時間だからまだ結構あるな。
どこかで一度拠点に帰らないとな。
そう考えていると大きいモヤが現れた。
「おっ!?」
その場から飛び退きナイフを構え直す。
そうしているとモヤの中からいつぞやのキングゴブリンが姿をあらわした。
懐かしいな。最初に命の危機を感じた敵が目の前にいるのは少し感慨深い。
よし!相手にとって不足なし!
強くなった俺を見せてやんよ。
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