童貞発足! ダンジョン童貞処女狩り組織!その名はDCVH!
DCVH──ダンジョン、童貞、処女、狩り、それらの英語の頭文字を一文字ずつ取った物を名前にした。
冬子から安直だのなんだの言われたが分かりやすいほうがいい! とごりおした。
そんなDCVHのメンバーをSNSで募集している間、俺たちはダンジョン攻略を進めるべく一日を準備期間に費やした。
そして……
「さて、いよいよダンジョン三層に潜るわけだが……準備はいいか?」
「ええ、問題ないわ。帝也こそ大丈夫? 忘れものとかしてない?」
「ああ、大丈夫だ」
いよいよ俺たちはダンジョン三層へと挑もうとしていた。ダンジョン三層、調べたところ一層と同じく草原が広がっている層らしい。
出てくる魔物も一層と似ていることから、魔法使いにとっての一層とも呼ばれているようだ。
受付で手続きを済ませた俺たちは三層手前へとつながる転移門をくぐり、三層へとつながる穴の前に立っていた。
転移門とは違いやはり不気味なもやがかかっている。とはいえツアーで潜ったのもあり、俺は前回よりは気楽な気持ちで入ろうとしたのだが冬子がストップをかけてきた。
「待って帝也! 一緒に手をつないで入りましょ」
「ん? 別にいいけど……もしかしてまだ怖いのか?」
「違うわ。そうじゃなくて……初めて三層に行くわけだし、せっかくなら同時に一歩を踏み出しましょ? ってことよ」
「なるほどな。ああ、いいぞ」
冬子はこういった初めてにこだわるところがあるよな、と思いつつ俺たちは手をつないで穴に入っていった。
パッと景色が切り替わったと思うと目の前には草原が広がっていた。調べた情報と一致している。二層から入ってきたのでなければ一層と間違えてしまいそうなほどだ。
さて、いよいよ探索者としての活動が始まるぞ! とちょっとした高揚感を抱いていると冬子が今日の目標について確認を取ってきた。
「帝也、念のため今日の目標を確認するわ。三層の魔物全部と戦う、で合ってるわよね?」
「ああ、合ってる。まずは三層で活動可能かを確かめなくちゃならないからな」
初めて二人だけでダンジョン三層を探索するので、まずは問題なく魔物と戦えるかを図るのが今日の探索の目的だ。
三層に出現する魔物は角が回転させながら突撃してくる角うさぎ、群れで集まって電撃魔法を使ってくる羊、三メートルはある巨大なオオカミ、といったものだ。
一層に出てくる魔物と見た目こそ似ているものの強さは比較にならないらしい。情報によると戦車の装甲もこの層から通用しなくなってくるため、魔法使い以外は探索が不可能とされている。
魔法使いであるならば問題なく対処可能らしいが、やはり実際に確かめてみないことには不安だ。
「よし、じゃあ早速魔物を探すぞ。最初は……角うさぎからだ」
角うさぎを探すべく三層の第一エリアを地図──受付でもらえた──を見ながら進んでいく。第三層も一層ほどではないにしろ道が整備されており、迷うことはなさそうだ。
それにしても……
「浮遊魔法、買って大正解だな! 移動も全然疲れない!」
「いや、普通に歩きなさいよ……魔力の無駄遣いじゃない?」
「魔力なら有り余ってるから問題ない! 冬子こそ飛んだらどうだ? 魔物と戦うときに疲れて戦えません! なんてことになるんじゃないか?」
「魔法使いになってから運動しても疲れることがなくなったのよね。だから問題ないわ」
こうして道を進んでいるだけでも魔法使いとしての力が実感できた。魔法使いになる前ならこんな風に飛べることはなかっただろうし、運動したら相応に疲れていただろう。
30歳を超えて童貞か処女であるだけでこんな力を手に入れられるとは……
そんな風に考えながらしばらく道を進んでいると角うさぎを見つけた。入り口付近では角うさぎは狩りつくされているらしく、探索者の姿しか見かけなかったのでようやくといった感じだ。
「さて、やるか。冬子、準備はいいか?」
「ええ、問題ないわ」
そう答えると冬子が二人に増えた。冬子のユニーク魔法だ。効果は一定時間自由に操れる分身を作れるというものだった。分身の方は真っ黒な影のようになっているため見分けはすぐにつく。
便利そうでなかなか羨ましい……いや、俺のユニーク魔法も負けてないがな!
「打ち合わせ通り、まず俺が一発撃ちこむ。反応して攻撃してくるだろうから冬子は迎撃を頼むぞ」
「了解、任せなさい」
確認も取れたので早速魔法を撃っていく。十メートルほど距離があるので氷結魔法で氷の塊を作り出して放つ。着弾すると同時に冷気を放ち周囲を氷漬けにするようにしたのでだいぶ躱しづらいだろう。さて、どうだ……?
「……!」
飛んでくる魔法に気づいたのか角うさぎが横っ飛びに跳ねる。しかし、着弾した後の冷気を躱しきれなかったのか片方の足が一部が凍っている。
動きづらそうにしながらも角うさぎは角を回転させてこちらに突っ込んできた。凍っている足が使えないため片方の足のみでの突撃だ。だが、三層の魔物というだけはあるのか片方の足しか使っていないにも関わらず十メートルほどの距離を一気に詰めてきた。
「ふっ!」
が、あえなく角を冬子にキャッチされて止められた。
抑えているところに分身が手刀を繰り出して角うさぎの首を両断する。絶命した角うさぎの体が溶けるように消え、残ったのは冬子がつかんでいた角のみだった。
さて、そんな初戦の感想だが……
「……これ俺いる? 冬子一人でよくね?」
俺の魔法は大して効果がなかったように見える……
足を凍らせたから動きを鈍らせることに成功したと思ったのだが、あの距離を一気に詰めてきた様子を見るにあまり意味がなかったんじゃないか?
そんな風に思っていると冬子が否定してきた。
「そんなことないわよ! 足が片方凍ったからまっすぐに突撃しかできなかったのよ? 凍ってなかったらそこら辺を動き回って、あたしたちの隙を突いて突撃してきたはずだわ!」
確かに、そう考えると効果はあったってことでよさそうだ。
ほっと胸をなでおろしていると冬子が片手をあげてきた。ハイタッチをしようということらしい。
「初めての勝利おめでとうってことでね?」
「ああ」
そうして俺たちはパチンッっとハイタッチを交わすのだった。
「さて、角うさぎは倒し終わったわね。次は電撃魔法を使ってくる羊だったかしら? 第二エリアにいるらしいし走っていきましょ? 魔法使いになった今ならあっという間に着けそうだわ」
「いや、その前に一つ試したいことがある。俺のユニーク魔法のことだ」
そういって俺は手を掲げる。分かるだろう? という風に目を向けると冬子も思い出したようだ。
「ああ、記憶を覗くってことね」
「そうだ、一匹くらいさっきみたいに捕まえてから記憶を覗いてみようと思う」
「分かったわ。じゃあ次のを探しましょ」
そうして次の角うさぎを探すこと約十分。今度は氷結魔法をホーミングさせることで下半身を完全に凍らせ、身動きを止めることに成功した。
早速記憶を覗いてみると……
「こいつ、今から十分前くらいに薬草の群生地を見つけてるな。近いしちょっと採取していこうぜ」
「薬草、ギルドで買い取ってくれる資源の一種ね。採取するのは構わないけど……帝也、あくまで今日の目標は三層の魔物全部と戦うことよ? それは忘れないでね?」
「ああ、大丈夫だ」
大丈夫じゃなかった。採取に夢中になった俺たちは調子に乗って薬草を取りすぎてしまい、荷物がいっぱいになってしまった。
これ以上何かを持ち帰ることができなくなってしまったので、ダンジョンからの一時撤退を余儀なくされたのだった。
「だから言ったじゃない。目標を忘れないでねって」
「すまん……予想以上にいっぱいあったからつい夢中になって……だけど冬子も忘れてなかったか?」
「うっ……それは、その、あたしも悪かったわ……」
「あー、じゃあお互いさまってことで」
「うん、そうしましょ」
お互いに反省しながらも換金所へ向かった俺たちは薬草の精査が終わるのを待っていた。予想以上にすぐ帰ってきたのもあるのでまだ昼頃だ。
『125番の方、換金が終わりましたので換金所受付のほうまでいらしてください』
「おっ、アナウンスがなったな。冬子、一緒に受け取りに行こうぜ」
「ええ、行きましょ。どのくらいになったのかしらね?」
「結構な量だったし期待が持てるんじゃないか? 探索者は儲かるって言うし」
そうして受け取りに言った俺たちだったが……提示された額は結構なものだった!
「おお、マジでこんなに儲かるのか……草取ってるだけで生きていけるな……」
「そうね……この短時間でこんなに……」
薬草の群生地を一つ見つけるだけでここまで儲かるとは……薬草取りを専門とした探索者もいるかもな。
とりあえず受け取った資金はDCVHの運用費に一部を割いて、残りは山分けということになった。
事前にパーティでの報酬は完全な山分けにすると決めていたのだ。再びダンジョンを探索しに向かおうとも思ったが時間的に切りが悪い。取り合えず今日の探索は終了と相成った。
そして、昼から酒が飲みたい! という俺たっての希望により俺たちは近場の飲み屋に飲みに行くことにした。
「さて、今日の探索で分かったことだが……とりあえず生活は問題なさそうだな。あの短時間であの稼ぎなら問題なく生きていける」
「そうね、何なら薬草だけでも前の職より普通に稼げるわ」
俺たちは飲みながら今日の探索について振り返っていた。探索者になるうえでいろいろと不安もあったのだが、そのうちの一つである稼ぎについては問題なさそうであった。
それに……
「あの薬草の群生地……正直あの角うさぎが見てなかったら簡単には見つけられないようなところにあったな。つまり俺のユニーク魔法あっての発見ってわけだ……俺の見立ては正しかった! この魔法さえあればダンジョンに眠る宝は見つけ放題! 探索者としての成功は間違いなしだ!」
換金所の受付の人は薬草の群生地を見つけたという俺たちの報告を聞き、あの探索時間で見つけられたのはとても運がいいと言っていた。
普通はなかなか見つけられるものではないらしい……だが、俺のユニーク魔法があれば別だ!
やはり俺のユニーク魔法は探索者という職業と合っている! 今回の探索で確信が持てた!
俺がそんな風ににやにやしているのを見つめながら、冬子もにこやかに笑っている。
今回の稼ぎが嬉しいのだろう。冬子はあんまり金銭に執着があるわけではない。しかし、探索者の稼ぎは探索者ランキングに影響してくる。
俺と同じく探索者のトップを目指す冬子にとっても今回の成果は朗報だったはずだ。
「三層でこの稼ぎだ、今後探索者ランキングを駆け上がれるのは間違いない……案外十位以内もすぐかもな!」
「ええ、そうね。帝也、最初はいろいろ不安だったけど終わってみればこの成果……すごいじゃない!」
「ありがとうよ! ただ、今回の成果は俺だけじゃなく冬子合ってのものでもある。前衛がいるっていうのはすごく安心感があった。薬草の採取の時も分身が見張りに立ってくれてたおかげで採取に集中できたしな! 助かったぜ、ありがとう」
「そう?それならよかったわ!」
そうしてお互いに礼を言い合った。
ダンジョン……最初は一人で潜ろうとも思っていたが、やはり人数は大事だと実感できた。
一人で行動するにはやることが多すぎるからな。分担できるのはでかい。
しかし……
「俺たちは前衛後衛に分かれた良いパーティだと思う。同盟を結んでいる間だけってのが惜しくなってくるな」
「それは仕方ないわよ。お互いにリーダーを譲る気はないしね。まあでも先の話よ、四天王の童貞と処女を散らすまでの間に時間はたっぷりあるはずだわ。その間にパーティメンバーを探せばいいわ」
「まあ、それもそうだな」
まだ見ぬメンバーに幼馴染の冬子と同じくらい信頼できるメンバー、とまで求めると贅沢な話になってくるのは分かっている。
だが、譲れない条件として探索者として上を目指すという志は持っていてほしいものだ……
「パーティメンバーと言えば募集の件はどうなったの? DCVHのメンバーから選ぶのよね? あれから二日立つけど……」
「探索が終わった後の楽しみにしようと思ってまだ見てないんだ。一緒に見ようぜ」
そういって二人でDCVHのアカウントを見てみる。募集は……ゼロ件……
「まあ見るからに怪しいものね……本当にこんなので集まるの?」
「こ、こういうのは焦っちゃ駄目なものなんだ……始めたばっかりでいきなり成果が出るなんて思っちゃいけないんだよ……」
しかし、二日経ってゼロ件とは……いや、今メッセージが来た!
そのメッセージの内容は……童貞乙! というものだった……
「……しばらくは二人で活動することになりそうね!」
「そ、そうだな! ま、まあ始めはこんなもんだろ! とりあえず五日間待ってみよう! その間にダンジョンで運用資金をためようじゃないか!」
そうして俺たちは五日間、途中で休息日を設けながらもダンジョンを探索していった。
初日の目標であった三層の魔物全員と戦うという目標も羊とオオカミをあっさりと倒すことで達成、その記憶を覗くことで換金できるアイテムもどっさりと入手していき、探索者としての活動は順調そのものだった。
探索者としての活動は……順調だった……
「えー、あれから五日間が経過しましたが……DCVHの参加者、新規メンバーは、誰一人、来ませんでした!」
「おー、よしよし。そんなこともあるわよ、元気出してー」
「ううっ、慰めならいらない……頭を撫でないでくれ……」
あれから五日間、DCVHの発足を宣言してからで数えると一週間。
DCVHの新規メンバーは一向に集まっていなかった。来るメッセージと言えば、童貞乙だの30歳越えで童貞!? だのと言ったイタズラメッセージかダンジョンの神を信じましょう! といったダンジョンの神を信ずる会の宗教勧誘のメッセージしか来なかった。
そのあまりの惨状に俺は酒を飲みながら涙を流していた……
見かねた冬子が慰めようと頭を撫でてくる始末。30歳にもなって撫でられるのはさすがに恥ずかしいのでやめてもらうように言ったのだが、勢いが増すだけで一向にやめてくれない。
仕方ないので撫でられながらどうしたらメンバーが集まるのか考えることにした。思うにDVCHのアカウントを見る人が増えればメンバーになろうという人が出てくる可能性も上がってくると思うのだ。
ではどうすれば人目につくのか……やはりプロフィールの写真が俺のピース写真では弱いか……犬とか猫とかかわいい動物のアイコンに変えてやろうかな……
そう考えながら撫でてくる手を振り払うべく頭を横に向けると冬子の顔が目の前にあった。そのまま少しの間見つめあう形になった。冬子って美人だよな……いけるか?
「なあ冬子、お前って本当にかわいいよな」
「おーよしよしどうしたの……ってええ!? 本当にどうしたの急に!?」
「目はぱっちりとしていて綺麗だろ? 鼻も高くてシュッとしてる。髪もきれいな黒でさらさらとしてるし、スタイルもいい」
「えっ、あっ、ううっ、えと、その、あ、ありがとう?」
「礼なんかいいよ。事実を言っただけだし」
そういうと冬子は顔を赤くしながら照れていた。昔から素直に褒められるのに弱いのだ。なので、頼みごとをする際にはこうして冬子のことをべた褒めすることにしている。
「なあ冬子、お願いがあるんだがいいか?」
「な、なあに?」
「冬子のかわいい顔を写真に撮りたいんだ。笑顔でピースしてくれないか?」
「えっ、あっ、ピース? い、いいわよ!」
「ありがとう。じゃあハイ、チーズ」
まずは写真を取ることには成功した。あとは許可を取るだけだ。
「よし、かわいく撮れた。ありがとう」
「ど、どういたしまして……ううっなんか恥ずかしいわ」
「事実なんだから恥ずかしがることないさ。冬子、この写真なんだがちょっと使ってもいいか?」
「つ、使うって何に? ま、まあよっぽどのことじゃなければいいわよ」
よし! 言質は取れたな!
「ありがとう! じゃあ早速DCVHのプロフィールに使わせてもらうぜ!」
「ちょっと待ちなさい」
「はい」
これは駄目っぽい。さっきまでの照れた表情とは打って変わって冷たい表情になっている。さっきまでが常夏の島といった温度感だとすれば、今はまるで北極だ。
「DCVHのプロフィールに使うって言った?」
「はい」
「駄目に決まってるでしょ!?」
失敗パターンだ……いつも頼みごとをするときより二割増しくらいで褒めたのに……!
いや、諦めるのはまだ早い。駄目な理由を聞いてみれば案外解決策もあるかもしれない。
「なんで駄目なんだ? 冬子もDCVHのメンバーなんだからプロフィールに顔写真があったっていいだろう?」
「言っとくけど同盟を結んだだけだからあたしは違うわよ。そんな冗談みたいな組織のメンバーになった覚えはないわ。よってあたしの顔写真を使うことは許しません」
「ええっ!? そ、そんな……もうメンバーとしてプロフィールに記載してるんだぞ!?」
「消しなさい」
くそぅ、まさかメンバーじゃないとは……とっくにメンバーに入れていたつもりでいたのに。
仕方ないのでサブリーダーとして記載していた項目から削除する。ああ、まさかメンバーを増やすつもりで打った策のせいでメンバーが減ることになろうとは……いや、最初からそうじゃなかったんだけど……
そうして打ちひしがれていると冬子が理由を尋ねてきた。
「全く、どうしてあたしの写真を使おうなんて発想になったんだか……理由を聞いてもいい?」
「アカウントを見る人が増えればメンバーが増える確率が上がると思ったんだ……冬子は美人でかわいいから広告塔にぴったりだと思って……強引に写真を使おうとしてごめん、本当に悪かった……」
「そ、そう……まあいいわ。未遂に終わったしね」
「すまない……ありがとう」
DCVHのあまりの惨状に動揺していたとはいえ少々強引にことを進めすぎた。焦っちゃ駄目だと自分でも言っていたのにこの始末だ。反省しなくては……
それに、冷静になって考えてみると冬子の写真につられて寄ってくる探索者が上を目指す意思があるとは思えない。
異性につられてやってるくような輩では童貞を保つのは難しいだろう。長い活動になるだろうし、その間は魔法使いでいてもらわなくては困るのだ。
しかし、そうなるとどうしたものか……
先ほど冬子が冗談みたいな組織といったのを考えると、DCVHのアカウントを見ている人も同じように考えているのだろう。
もしかしたら架空の組織と思われている可能性すらある。いくら人目についたところでこの部分を解決しなければ新規メンバーは見込めないだろう……
「なあ冬子、さっきDCVHのことを冗談みたいな組織って言ったよな」
「え、ええ、言ったわね。まあ、さすがに言い過ぎたわ。ごめんね?」
「いや、いいさ。今のままだとそんな風に見えるのは当然だしな。そうじゃなくて、どうしたらそういう風に見られないと思うってことを聞きたいんだ。俺が思うに、架空の組織だと思われてるからDCVHはこのありさまなんだろう」
「そうねえ、何かしらの活動実績があれば少しは冗談だと思わない人も出てくるんじゃないかしら」
「なるほどな、ありがとう」
活動実績か……
探索者としての活動とか全然載せていなかったな。それは載せるとして、あとは童貞か処女を散らした実績も欲しいな。
仕方ない、これはメンバーが集まってからDCVHの成功として分かち合い、メンバー間の信頼を深めるために取っておきたかったが……
「よし、俺は決めたぞ冬子。活動実績を載せてアピールする。まずはここ五日間の探索者としての活動を載せる」
「いいじゃない、そういうことなら同盟を結んでいる相手としてあたしの名前も使っていいわよ」
「ありがとう。遠慮なく載せさせてもらうことにする。あと童貞狩りの実績も載せる」
俺がそういうと少し疑問に思ったのか冬子が訊ねてくる。
「あら? まだ狩ってないわよね? これから狩るってことなんだろうけど、ターゲットの目星はついてるの?」
「ああ、既に情報をゲットしてる童貞がいるのさ。好みのタイプも把握してるし練習がてら狩ろうと思う」
「へえ、やるじゃない。誰なの? その童貞って」
「ああ、それはな?」
俺は少しもったいぶってからターゲットの名前を宣言する。
「宇津井栗田! この間のツアーガイドがターゲットだ!」
~TIPS~
魔法は魔力を使って使用する。基本的には飛ぶだけ、氷を出すだけ、肉体の機能を高めるだけ、といったものだが通常より魔力を多く使うことである程度のカスタマイズが可能である。
帝也が使っていた氷結魔法もホーミングさせて飛ばす、着弾すると冷気を放って周囲を凍らせるといったカスタマイズを行っている。