03.突然のドラゴン
SIDE:シル
私の住む村は「名もなき村」と呼ばれている。
理由は単純で、辺境すぎて国に名前を登録してないから。
この村は、険しい山脈の中にあり、国からしたら
統治するのも面倒。
ということで、国はこの村の存在を黙認している。
一度だけ、国から使者がやってきたのだけれど…
「採算が取れない」
と言って早々に帰ってしまった。
そういうわけで、私の住むこの村は国から解放されている。
しかし、国の統治を受けていないということは、この村で発生した問題は村で解決しなければならないということ。
村を襲う魔物が出たら、自分達で魔物の討伐隊を作って対処しなければならない。
たとえそれが…
最強最悪の魔物と称される、ドラゴンであっても――――
◆◇◆◇◆
「おい!ドラゴンが出たぞ!みんな、避難しろー!」
そんな声が聞こえて、私は目を覚ました。
アイツと違って朝に強い私は、すぐに頭が働いて、こう思った。
「いやいや、嘘でしょ~」
と。
「ドラゴンというのは基本的に神話上の生き物であって、実際に確認されているのは飛竜とか竜人とかの亜竜だけ。だから、本物のドラゴンなんていない、という説もあるくらいなんだよ」
アイツのセリフを思い出した。
そういえば、こうも言っていた。
「でもね、僕は信じてるんだ。ドラゴンは実在する、って。よくはわからないけど、なんの根拠もないけれど、それでもなんとなくそんな気がする。
だからさ、もしシルがドラゴンを見つけたら、ぜったい僕に教えてね!」
そんな幼少期のアイツを思い出し、少し和んだ。
あの時のことは、不思議とよく覚えている。
なんていうか…アイツがドラゴンについて話す時は、目がキラキラと輝いていて、とても楽しそうだった。
私はもうドラゴンの存在を信じていないけれど…
アイツは…リントはまだ、ドラゴンの存在を信じているのだろうか。
そんな感傷に浸りながら、より頭をしゃきっとさせるために、窓を開けて太陽の光を浴びようとした。
窓の外は暗かった。
「…?」
それは、巨大ななにかの翼が、太陽の光を遮っていたからだった。
窓の外にいた、その巨大ななにかは…
ドラゴンだった。
◆◇◆◇◆
家から飛び出し、リントを探した。しかし見つからない。
私は焦った。
ドラゴンを見たことを、一刻も早くリントに伝えたいから…ではない。
ドラゴンは、私の住む家の隣…リントの家があった場所で、いびきをかいて寝ていた。
最悪の場合が…リントはドラゴンの下敷きになっている、なんて可能性があるのだ。
そんなのは嫌に決まっている。
仲の良い幼馴染を…そんな唐突に失いたくはない。
そんな気持ちが、私を焦らせる。
村の人の避難所にいるかと思ったが、そこにもいなかった。
思いきって、そこにいたリントのお母さんに聞いてみる。
「リントを知りませんか?」
「いえ…わたしは朝から森に行っていたから知らないの…もしかしたら…」
その先は、言葉になっていなかった。
私だって聞きたくない。
だからその先は聞かずに、黙って避難所を出た。
そして私が向かったのは、魔物討伐隊の会議所だった。
そこにいたお父さ…隊長は、少し心配そうな表情で私を出迎え、私を止めようとした。
「お、おいシル…いくら活躍してるからって、今回ばかりは危険すぎる…ドラゴンだぞ?いくらなんでも…」
でも私は、おと…隊長の言葉を遮って、こう言い放った。
「私も、ドラゴンの討伐隊に編成してください!!」
もし、もしも「続きが気になるかもしれない」とか「もっと面白かったらなぁ」とか思っていただければありがたいです…!
そう思っていただけたならば、ぜひとも助言、アドバイス、誤字報告、いやもうなんだって構いません!書いていただけると嬉しいです!自分にできる全力で活かしますので!