02.思考会話
描写ってどうしたらできるんでしょうね?
ドラゴンの魔力量は人類よりも遥かに多く、人類の魔力量では不可能とされている瞬間移動や思考会話を使うことができる。
それだけではなく、古代魔法と呼ばれる死霊術、時間干渉術、空間干渉術その他の呪文でさえもやすやすと使いこなし、人類を滅ぼしていく様はもはや蹂躙というほかなかった。
原初の魔法は術者に流れる血によってその効果を変えたというが、ドラゴンにはどんな血が流れているというのだろうか。
ドラゴンと魔法には、切っても切れない関係が存在する…
かもしれない。
魔物図鑑・竜編、魔法適性の章
◆◇◆◇◆
僕は、外にいた。
え?
外にいた。
は?
外にいた。
…なんで?
昨日、僕は家の中のベッドで寝ていたはず。
なのにここは家の外だ。
どういうことなんだろうか。
…だめだ。起きたばかりで頭が回らなくて、『?』しか出てこない。
とりあえず、体を起こしてみることにした。
頭が起きていないなら、体を先に起こしてみよう。
「グウゥ…」
起きられなかった。
なんだこれ。体がめちゃくちゃ重い上に、思い通りに動かない。
僕はいつもうつ伏せで寝るから、今は腕をついて起きようと腕を振り回しているけれど、肩がまともに動いてくれない。
…なんでか分からないけど、「ばさばさ」という音が後ろで聞こえる。
翼でも生えたのかな?
…まさかね。
試しに、ちょっと頑張って「ばさばさ」してみた。
ものすごい風が起こったが、自分の体が浮くことはなかった。
…よかった。
これで飛べたら、人間じゃなくなってるよ。
よく考えたら翼があるだけでも十分に人間じゃない気がするが、このときの僕はそれに気付いてはいなかった。
仕方がないので、今度は目を開いてみた。
村の魔物討伐隊の人たちが目の前にいた。
みんなこっちを向いて、隊列を組んでいた。
魔物の相手をする時のように。
僕が魔物であるかのように。
先頭の指揮官らしき人が、声を張り上げる。
「怯むな!風をおこしたで大したダメージを受けることはない!各自立て直し次第、攻撃を開始しろ!」
後ろの人たちも、返答として大きな声を返す。
…どうやら今の僕は、魔物になってしまっているようだ。
しかも、家からはみ出るほど大きな魔物に。
そして、さっきの「ばさばさ」は、魔物の攻撃の一種『|翼の風』だと思われたらしい。
いや、そんな冷静ぶってる場合じゃない、攻撃を開始されたら大変だ、やめてもらわないと。
そう思って「やめてー!」と言おうとしたのだけれど、
「ガルグエァアア!」
という雄叫びじみた声しか出てこなかった。
どうしよう。このままだと、魔物として討伐されてしまう。
そんな中、僕にとっては女神の一声にも聞こえる、幼馴染みの声が響いた。
「進言です!お父さ…隊長!ドラゴンの鱗はこの世で最も硬いと言われています!各自で攻撃しても意味がないと思われますので、別の指示をしてください!」
その声の主はシル。
その身に似合わぬ巨大な盾を構え、その盾を最大限活用するために、あえて鎧を着けていない少女だった。
誕生日が僕より一ヶ月早いため、この前、〈盾〉の紋章を授かって父が指揮する魔物討伐隊に…
いや、今はそんなことどうでもいいな。
重要なのは、彼女が今してくれたことだ。
一つ目は、討伐隊に攻撃をやめさせたこと。
そしてもう一つは。
ドラゴンの鱗と言ったことだ。
これは、「僕は今ドラゴンである」と言ってくれたも同然。
これが他の魔物だったならば、意思疎通などできるはずも無かった。
しかし、ドラゴンならば。
僕がドラゴンになっているということは。
思考会話が使えるはずだ…!
「シル、それは本当か?!ならば、各自盾部隊を前に出して、防御を固めて様子をうかがえ!」
指揮官であるシルの父親は、いまさら作戦の変更を命じた。
本番だったらどうなっていたんだろうか…と心配になるほどの
ぐだついた指揮だったけど、まあいいや。
僕は前に出てきた盾部隊の中からシルを見つけ出し、強く念じた。
(シル…僕はリントだ…これが聞こえたら…うーん…なんでもいいや、合図を送ってくれない?)
シルならば、このドラゴンっぽくない台詞を僕のものだと分かってくれるはず。
そう祈りながら、ひたすらに念じた。
この思考会話が、届くことを信じて。
もし、もしも「続きが気になるかもしれない」とか「もっと面白かったらなぁ」とか思っていただければありがたいです…!
そう思っていただけたならば、ぜひとも助言、アドバイス、誤字報告、いやもうなんだって構いません!書いていただけると嬉しいです!自分にできる全力で活かしますので!