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14.スライムの金属

スラミニウムとは、伝説の鉱石を除き、もっとも硬い物質である。

しかしその硬さゆえ、加工も難しい。


また普通の火では溶かすことすらできないため、精錬技術の発達していない地域ではその硬さを活かし槍先に使われたりしている。

なんとも格好がつかない。


また、前述の『伝説の鉱石』とも関係があると言われているが、最近では否定派が多い。


まだまだ謎の多いスラミニウムだが、唯一解決されている謎が一つだけある。

それは、世にも珍しい金属のスライムを構成する物質であることだ。…


――――――とある考古学者のレポート

スライム金属の回収は難航した。

ドラゴンの炎で溶けた部分を回収しようとしたが、とっくに冷えて固まっていた。

もう一回溶かそうにも、なぜだか僕は変身できなかった。

固まってしまった金属は採取が難しく、諦めて村に帰ろうかと思った矢先、

「呪文じゃ溶けないの?」

というシルの一言を受け、藁にもすがる思いで「ファイア!」と唱えると、銀色の部分なら僅かに溶かすことができた。

そして長い格闘の末に小さなひとかたまりを回収し、村に戻る頃にはすっかり日も落ちてしまった。


◆◇◆◇◆








スライムの金属を持って帰った僕達は、とりあえずチョローさんの家を訪れた。


「どうしたんじゃ?こんな時間に…」

「ちょっと聞きたいことがありまして…」


事情を説明。


「ほう、スライムの金属とは。珍しいこともあるものじゃ」

「そんなに珍しいんですか?」

「勿論だとも。わしでなければ間違いなくその価値に卒倒しておるぞ」

「それは、一体どういうことですか…?」

「簡単に言うと…。その持って帰ってきた分で、一生遊んで暮らせると言っても過言ではない」

「…」

「えぇぇ?!」


思わず黙る僕と、驚いて声をあげるシル。

対照的な反応だった。


「そもそも金属のスライムを構成する金属、その名も『スラミニウム』は、その希少性や優秀さからとても高価なのじゃよ。金属スライムは、地下深くの鉱石を食べて育った珍種なのじゃが、こいつがなかなか地上に出なくてのう。五十年に一度発見されるかどうかというところなのじゃ」

「はあ…」


残りの大部分を真っ黒にしてしまった事はこの際忘れよう。

一生後悔しそうだ。


「そんなに珍しいなら、村で利用することは不可能ですか?」


この村には鍛冶屋や工房に当たる施設がない。

だから金属の流通が少なく、生活に使うものは専ら木で作っていると思われる(他の村を知らないから言い切れない…)。

そんな村でスラミニウムを利用することは可能なのだろうか。


「むむ。難しい質問じゃな」

「…?」

「結論としては可能、かの。というか、言ってしまえば銅や鉄よりも加工しやすい」

「そうなんですか?」

「スラミニウムは、他の金属よりも低い温度で溶けるという性質がある。液状にするのは他の金属よりも容易かのう」

「どおりで…」


火に弱いわけだ。


「何か言ったか?」

「いえ、何も。続けてください」

「それならいいが…話を戻すぞ。

しかし、スラミニウムは、普通の炎では溶けないのじゃ」

「じゃあ、何の炎なら溶かせるのですか?」

「…知らん」


そんな答え方ある…?


「『知らん』の炎ってなんですか?」

「それは流石にわざとだよね…?」


天然でやってたら嫌だなぁ…。


「役に立てなくてすまんのう…わしにはこれが限界じゃ」

「いえいえ、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「こちらこそ、面白いものを見せてくれてありがとう。

ところで、そのスラミニウムはどうするつもりなんじゃ?」

「家に飾っておこうかなと思います。役に立ちそうもないので」

「値打ちのあるものでも、辺境の村の人間にとっては石ころ同然というわけじゃな。面白いこともあるものだ」

「全くですね…それじゃあ、家に帰るとしますか」

「そうか。…おっと、突然で悪いが、明日の夕方にわしの所へ来てくれんかの?」


本当に突然ですね。


「…なんでですか?」

「それは明日のお楽しみとやらじゃな。おっと、シルは教えてはならんぞ?」


え、シル?


「あ…はーい」


うわ、なんか知ってるし…。


「じゃあ、さようならー!」

「痛い痛い、引っ張らないで…というか、勝手に話を終わらせないで?」


しかし普段から鍛えている(主に重い盾を振り回している)シルには抗えず、されるがままにチョローさんの家を後にするのだった。


◆◇◆◇◆








「けどさー…あれだけ頑張ってたのに、溶かせないからただの石ころだなんて。くたびれ損の骨折り儲けだよね」

「いや、逆逆。骨折ったら何も儲けてない」


せめてくたびれくらいは儲けさせて。


「あれ?そうだっけ。どっちでも良くない?」

「面白いからそのままでいいと思う…待って待って、溶かせないって本気で言ってるの?」

「え?だって溶かせないって…」

「溶かして持ってきたじゃん…」


もう忘れたのだろうか。


「…あー、そういえばそうだった…」


そう。僕らはこのスラミニウムを二度も溶かして持ってきた。

ドラゴン…もとい僕の炎で。


「ドラゴンの炎は何か特別なのかも知れない…」


ドラゴンの学者になりたいと思っていた僕からすれば、とても重要な情報だ。


呪文が特別なのはなんとなく分かるけれど。


「でも溶かせたからって何に使うの?あ、裁縫の針作ってよ!」

「そんなに細かいものはできないかなぁ…」

「なんだー…」

「落ち込み過ぎじゃない?!」


そんなに針が欲しいの?!


「だって少ないし…」

「考えとくよ…」

「で、針は無理だとして何作るの?」

「それは明日のお楽しみとやら、かな。大丈夫、針より使うものを作るから」

「長老様の真似だ…」

「まあ、明日にならないとできないし…。そうだ、教えるからシルの盾を借りてもいい?」

「いいよー!それで、何作るの?」

「もう答え言った…」


鈍いなぁ…。

古代魔法→呪文

に変えました。

今まで自分でしっくり来てなかったので。


あ、今回の一言思いつきあらすじは

「HP初期値ゼロで転生…いや転死した」

バグ的な何かでHPで死なない主人公が出来上がります。

どれだけ攻撃を受けようと死にません。

今の所それだけです。

既にあったらごめんなさい。

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