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11.魔物の号令

魔物には、「王」が存在するらしい。

その「王」が何かは、まだわかっていない。

その魔物を生み出した存在のことなのか、はたまたその魔物が従っている存在のことなのか。

魔物の言葉がわかる人間が現れたら、是非とも魔物に聞いて頂きたい。


―――――魔物好きな研究者の意見

洞窟の中は真っ暗だった。明かりがないと前も見えない。


しかし、燃え鼠(バーニングラット)を木の枝と合わせて作った松明は予想以上に明るくて、しっかり周りを見通せる。


まあ、僕は暗かったら「ファイア」すればいいんだけどね。

僕とシルは、そんな洞窟を進んでいった。


「洞窟の魔物ってどんなのがいるの?」

「えーと…蝙蝠(バット)(ラット)(ロック)系が多いよ」

「へー…待って、岩系って何?」


初耳だ。

岩の魔物が本物の岩だと、火の玉を出す魔法の「ファイア」が効かない可能性がある。


「大体はそこらへんの石や岩に擬態してるものが…あ、いた」


シルの指の先には、大小さまざまな岩が転がっていた。


「えっと…どれのこと…?」

「それは分からない」

「分からないの?!」

「刺激を与えればわかることもあるらしいんだけど…危ないからやらない方がいいよ」

「というと?」

「ごく稀に…爆発するから」

「爆発する?!」

「そうらしいんだよー…岩系の魔物は鉱物が好物でね、鉱石ごと食べる習性があって…」


珍しく駄洒落を言うシル。

魔物の解説だからちゃんと落ち着いているが、それでも洞窟が楽しいらしい。


「…爆発物を気づかずに食べている個体もいるらしいんだよね。だから危ないって」

「へー…こんな洞窟で爆発が起こったら、崩落して大変なことになりそうだ…」

「というわけで、岩の魔物は素通りが正解なんだって、お父さんが力説してた」

「全部受け売りだったんかい!」


あー、だからちょっと冷めてたのか。

お父さんね。


「なんだか今日は反応がいいよね。いいことでもあった?」


見透かされてるな…。


「幼馴染と洞窟を探検できるだけで、相当楽しくていいことだと思う」

「あー、言われてみればそんな気が…なんかすごく楽しい気がしてきた!早く進もう!」


それは何よりだ。

魔物の討伐と言えど、成人前の子供にとってはただの遊びに過ぎないし、楽しみたいよね。


成人か…


「うーん…」

「どうしたの?」

「いや、僕らもあと一年で成人するから、ちょっとそのことを考えてた」

「なんて気分の落ちることを…」


子供は十五歳で人と成り、大人の仲間入りをする。

だからこの村では、紋章を授かる十四歳の一年間は自分に合った仕事を探すことになっている。


例えばシルは村の魔物討伐隊に参加している。

一旦村から出て都会に行ったりする人もいれば、村に残って仕事を見つけ一生を過ごす人もいる。


思えば僕は、ドラゴンの研究者になりたいと思っていた。

いるかも分からないドラゴンを見つけて、存在を証明したいと思っていた。


それが今や本物のドラゴンだからなあ…

人生わからないものだ。


もはや僕が人かも判らないが。


…やめよう、こんなことを考えるのは。



自分が何かなんて、どうでもいいだろ?



「リント、どうかした?」

「いや…大丈夫…」


しかし、その言葉は遮られる。


『ツイニコノヒガヤッテキタ』


「じゃないっ?!」

「わあ?!」


謎の声が頭に響く。

その声には謎の強制力があり、頭が混乱してくる。


『ワレラガオウヲカイホウスルヒガ』


「ぐうぅ…」

「どうしたの?様子が変だよ?」

「シル…何か、聞こえない?」

「え?何にも聞こえないけど…」


じゃあ、この声は僕にしか聞こえていないのか…?


『ワレワレハドラゴンヲイマワシキニンゲンドモノムラカラミツケダシタ』


三度声が聞こえる。

その強制力は変わらず、頭がおかしくなりそうだ。

しかし、言葉の意味がわからないために、その強制力に屈せずに済んでいる。


『シュウゲキハキョウノニチボツ、レイノドウクツニアツマレ』


一旦声が止んだ。


「リント…本当に大丈夫?」

「駄目かもしれない…」

「じゃあすぐに村に戻ろう、多分洞窟にいて調子悪くなったんだよ」

「ちょっと、待って…」

「待たない」

「あぁー…」


手を掴んで引っ張られて、洞窟の外に連れて行かれる。


仕方がないので、さっきの言葉の意味を考える。



ツイニ…遂に…オウ…王…ニンゲンドモノムラ…人間共の村…。


人間共…?発言者は、魔物だったのだろうか?


ドラゴン…。シュウゲキ…襲撃…?


少しずつ解読できてきた。

ふと、シルの歩みが止まる。

夜空が見えたので、もう洞窟からは出てきたようだ…


「なに、これ…」


シルから少し遅れて、僕も似たようなことを言う。


「…なんだ、これ…」


夜空ではなかった。

それは、数え切れないほどの鳥の魔物の群れだった。

二人で言葉を失った。


「…と、とりあえず逃げよう!多分あいつらはここに来る!」


ショックで喋れなくなっていたシルだが、頷いて返事をしてくれた。


急いで洞窟から離れる。

その間にも魔物は集まり続ける。

あらゆる魔物が洞窟に集まり、なんていうか…

この世の終わりみたいだった。


それくらいの魔物が、洞窟に集まりひしめき合っている。



「遂にこの日がやってきた…我らが王を開放する日が…我々はドラゴンを忌まわしき人間共の村から見つけ出した…襲撃は今日の日没、例の洞窟に集まれ」

「…え?」

「魔物たちは、今夜僕らの村を襲うらしいよ。彼らが王と呼び崇拝する、ドラゴンを求めて」

「なに、それ…なんで、そんなことを知ってるの?」

「さっき、洞窟の中で聞こえたんだ。僕は…魔物でも、あるから」

「そんなこと言っても…ドラゴンなんて、私達の村には…」


僕は、自分の指で自分を指す。


「まさか…ドラゴンって、リントのこと…?」


頷く。


「…そう。彼らの狙いは、僕だ」

「…!」

「だから…」


責任を持って、阻止してこようと思う。

名もなき村編、終盤に突入。

章ごとに分けたほうが良かったりするんですかね?

分かりませんけど。


もし、もしも「続きが気になるかもしれない」とか「もっと面白かったらなぁ」とか思っていただければありがたいです…!


そう思っていただけたならば、ぜひとも助言、アドバイス、誤字報告、いやもうなんだって構いません!書いていただけると嬉しいです!自分にできる全力で活かしますので!

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