第7話 クロネコ騒動
アンジュととおる、もう1年で卒業となった時。とおるの何気ない行動が・・・
その日 とおるが当番だった。ゴミを集めて・・学校の裏に行き、焼却炉で燃やす。いつもやっている何ともない行動・・その日、とおるは、マッチを忘れていた。戻ろうかと思い、キョロキョロ、周りを見渡すが・・誰もいない。
体で焼却炉を囲い・・誰にも見えない様に・・手のひらに火を・・素早く中に流し込む・・燃えたのを見てから蓋をしめ・・振り返った。数歩先に、学校のクロネコが見ていた。目と目が合い・・気まずい雰囲気が・・。
何故かこのままではいけない。とおるの中で警告が鳴り響く・・体の向きを変え・・静かに、近づく・・お互い目と目が合ったまま、距離が次第に・・。
手を伸ばせば・・まだ届かない。捕まえて、どうしよう?このネコ、いつから学校に居たっけ?確か、入学からいた気がする。そう言えば、先輩たちの雑談で このネコが凄い長生きしているとか。もしかして化けネコ?
とにかく、普通のネコじゃない事を思い出した。絶対捕まえて・・それからどうしよう?とにかく、捕まえないと。お互いの距離が・・手を伸ばせば・・
人間とネコ。余程間の抜けたネコでない限り、はい どうぞ捕まえて。とは ならない。とおるが手を伸ばすと、目を合わせたまま後ろに後ずさり・・・。
「おーい、マッチ忘れてるぞ。」アンジュがマッチを手に持ちこちらに走ってきた。
アンジュが見たのは、とおるがネコとにらめっこをしている・・あいつ、サボってネコと遊んでいる。あたしも・・ネコはアンジュに気づいていない。うまく回り込んで・・
アンジュの声が聞こえる・・でも、ネコから目を離せない。ジリッ・・ネコも数歩後ずさり・・手を伸ばす。
ネコは、向きを変え 脱兎の様に走り・・出せなかった。アンジュの広げた腕の中に吸い込まれていく。
「とおる、ネコとあそんでいないで・・・」
そこで気付いた。とおるの真剣な表情でネコを見ている。
「このネコ、どうかした?」
アンジュの中で暴れるネコ。どんなに暴れても 逃げられない・・諦めたネコは、静かになった。
「そうか、見られたんだ。」
アンジュは、ネコの顔を見る。もう観念したネコは、・・・・。
「だれにも見た事を 話さないって言っているよ。放していいかい?」
「?・・?いいけど・・そのネコと話したの?」
「何となく わかる。このネコ 嘘つかない。」
「アンジュがそう言うなら・・・。」
ネコと話せた?いや、何となく・・・分かった。でも・・・前世ではネコの気持ちなんかわからなかった、今は、・・・どうして?