第4話 公園デビューと初めての友達
アンジュは、12歳になっていた。
もうすぐ学校に行くようだ。
珍しく両親が喧嘩をしている・・・どうも、アンジュを連れて公園デビューしたい母とまだ早いと言う父。娘に過保護な父って 何処にもいるよね。どんなに父が頑張っても 母の言葉に勝てるはずも無く・・どこの父も同じです。ふてくれされ・・どこかに行ってしまった。
母は、就学前検査の日に公園デビューするようだ。まだふてくれされている父を 横目でながらいそいそと準備を始めている。
まだ、早いと思うのだが(早朝だし)起こされ・・いつもより早めの朝食を食べさせられる(いっそうふてくされる父)・・お弁当を渡された父を置いて、アンジュと母は、家を出た。
初めて見る外は・・外ではなかった。巨大な体育館?という様な空間に、幾つのも建物が寄り添い、上に継ぎ足され、上空の建物は釣り橋で行き来している人が見える、そんなごたごたとした(これは、スラム街というのか?)街が アンジュの住んでいる所・・・ここは、日本なのか?(かなり疑問に思う)
家を出た母は、アンジュの手をつなぎ・・小さな公園?おばさん達の雑談所?でも遊具があるから公園なのだろう に連れてきた。
母は、アンジュの手を離した・・初めて見る光景に興奮気味のアンジュ。・・幾人もの子供達が遊具を使い遊んでいる。しばらく眺めていたアンジュは・・母の顔色をうかがうように上をみる。ニッコリする母。居ても立っても居られないアンジュは、走りだす。最初に興味を持ったのがブランコ。しばらく眺めていたが・・開いていた隣に乗ると・・勢いよく漕ぎ出した。初めてにしては上手すぎる。俺にドヤ顔(明らかに俺に対してやっているなこいつ)をするアンジュ。
雲梯・鉄棒・・・こいつ、興味を持ったらすぐに実行する。俺では、とても出来ないだろうと思うけど・・アンジュは、軽々とこなしていく。うぅ・・アンジュのドヤ顔がうっとうしい。
しばらくアンジュを見ていた母は、おばさん達の輪にはいって話し込んでいた。アンジュはアンジュで・・他の子供たちを圧倒して遊びに奔走している。よく疲れないな・・・と、思っていたら・・急にアンジュの意思が弱くなっていく。疲れて眠くなったようだ、それでも次の遊びに向かうアンジュ。フラフラと・・歩きながら寝てしまった。
これ幸いと、アンジュの体を乗っ取る。実は、公園に入った時から気になる子がいた。その子は、公園のベンチに座って、アンジュ達が遊んでいるのを 眺めているだけ・・病弱なのだろうか?俺もそうだから辛さは わかっている。
その子の隣に座ると 声をかける。
「俺、アンジュ。よろしくな。」
さっきまで、幾多の子供達を押しのけて遊んでいた女の子に声をかけられた。その子は、目を見開くと アンジュをまじまじと見つめている。よほど驚いているようだ。
「・・・・」
小さな声が聞こえてきたが、聞き取れない。
「えー、もっと大きな声で!」
アンジュの声に幾人かのおばさんが こちらを見るが、喧嘩していないと分かると また元にもどっていく。
「あの・・ごめん・・ぼく、とおる。」
「そう、とおるくんね。よろしく。」
「うん、ぼく ここで声掛けられたの初めてなんだ。」
「そうなんだ。俺も初めて外に出てきたんだ。」
「・・・・」声にならない、驚いたように俺をみている。そんなに珍しいのか?
「どうして遊ばないんだい?」
「よくわからない・・」
「だったらさ、こっちおいでよ。」
おれは、とおるの手を引き、ブランコへ・・・・
しばらく二人で遊んでいると・・次第に打ち解けてくるとおる。疲れたのか、公園の奥に行こうとするとおる。不思議な雰囲気を感じた俺は、何も言わずに後をついていく。
木立に囲まれひっそりとしたベンチに腰掛けるとおる。脇に座ると。
「ねえ、友達になってくれる?」
意外に積極的なとおる。
「いいよ、俺達 友達だ。」
「じゃ、友達に見せてあげる。」
そう言うととおるは、手のひらをアンジュの前に突き出した。何をするのかと?見ていると・・ボッ、火の玉があらわれた。それを握りつぶすと・・・また、手のひらを開く。今度は、水の球が浮かんでいる。
「これ、異能。母さんから人に見せちゃダメって言われている。でも友達だから見せる。」
よほど緊張しているのだろう、とおるの顔がこわばっている。
「大丈夫。俺 誰にも話したりしないからさ。」
「・・・」
みるみる緊張が解けていくとおる。かなり心配していたようだ。笑顔が眩しい。
それからお互いの情報交換がはじまった。
とおるの誕生日が・・・2222年2月22日・・・おい!神様!情報がなくてどうするんだよ。