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短編とかその他

優秀な人達の引き立て役

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私は地味で、さえない容姿の女性。

 一般的な人間の、模範のような存在だ。


 身分は学生だけど、青春らしい青春は一般的な事しかした事が無い。

 誰かとつきあって恋をしたり、何かの大会に出て勝敗を競ったり、目標校に進学するために勉学にはげんだりもした事が無い。


 とりたてて素晴らしい部分のない私は、その存在が示す通り、地味な人生を送ってきた。


 私は今高校3年生。

 きっとこのまま何も特別な事は起きずに、高校生活を終えて、まあまあなランクのごく普通の大学に進学するのだろう。


 けれど、そんな私にある日、転機が現れた。


 学校の通学に利用している、いつものバスの停留所。

 田舎だから、私一人しかいない。


 そこに、一人の男性が加わる事になった。

 彼は、私に気があるようなそぶりをみせ、毎回はなしかけてきた。

 一般的な私には不釣り合いな、恰好良い男性が。


 それから少しずつ、バス停以外で会う事も増えて、やがては彼と付き合うようになった。


 それから、時をおなじくして、学校で部活に誘われる事になった。

 大会に出場した経験のある部活だ。

 専門性の高い技術が求められるはずなのに、なぜか私に声をかけてきた。


 それで大会にも出場する事にもなったけど、結果はもちろんふるわなかった。

 けれど、他の部員達と触れあいながら頑張るのは、達成感があった。


 しばらくすると教師に声をかけられた。

 もう少し、ランクの高い進学校を目指さないかと言われて、背中を押された。

 けれど、他に目指したい高校もなかったので、断る理由もなかった。

 その後私は、二番目の志望校として、進路希望用紙に書く事になった。


 どうせ無理だけどと頑張った私は、無事にその学校に合格してしまった。


 大学生になった今は、それなりに満ち足りた生活を送っている。

 格好良い彼氏もいて、新しい同好会にも顔をだしつつ、聞く人が聞いたらちょっとだけ羨ましがられるような学校生活を。


 正直、どうしてこうなったのか分からない。

 今まで地味な生活をおくってきたのに、一体なにが原因だったのだろう。


 自分が頑張ったから、などとうぬぼれるつもりはない。

 人間は、そう簡単にはかわらない。

 ごく普通の人間として生きていた私は、そのまま普通の人生を歩むつもりだった。


 たぶん、明確な理由なんてない。

 めぐりあわせが良かった。

 運が良かった。

 その程度の事なのだろう。





 なあ、君は、引き立て役って知ってるか?

 主役を引き立ててくれる存在だ。

 アニメやマンガなんかでいうと、敵の存在がそうだよな。

 敵が醜かったり頭が悪かったりすると、その分主人公が引き立つ。

 こう言えば、よく分かるだろ?


 創作物での話は人生にだって、あてはまる。

 イケメンがイケメンに埋もれてても、宝の持ち腐れ。

 少しはランクダウンした人間と付き合わないと、人間がロクに輝かないんだ。


 だから俺は、ごく普通の女の子を彼女に選んだ。

 すると、俺の存在が際立つ際立つ。


 きっと、彼女の周りにいた妙に優秀な他の連中もそうだったろうさ。


 晴れ舞台でより自分の力をアピールするために。

 優秀な生徒を輩出した実績を作り出すために。


 彼女はまんまと利用されていたってわけだ。


 でも、別にこれでもまあいいよな。

 誰にも迷惑かけてないし。


 持ちつ持たれつ。

 ギブ&テイク。


 不幸になった人間なんていないんだから。



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