勇者になれって言われたけど
エウレカセブンって面白いよね
黒いローブの一人がこちらに近づいてくる。
「@*@@*@‘*‘++*」
何かわけのわからない言葉を発している。
その男は手の平を差し出してきた。その上には二つの指輪があった。
「つけろって意味かな?」
「多分そうじゃない」
俺たちはその指輪をはめる。
「聞こえていますか?」
聞こえてくる声はさっきと変わらなかったが、しっかりと意味は伝わってくる。
不思議な感覚に驚きを隠せない。
どうやら、この指輪は翻訳装置みたいだ。魔法だろうか?多分そうだ。
「あ、はい、聞こえます」
「私も」
その男は、私たちから離れていった。
その代わりと言っては何だが、王様らしき人がこちらへと歩いてくる。
「召喚されし勇者よ。どうかこの世界を魔の手から守りたまえ」
そういう系か。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
なんか気まずい時間が流れる。
王様は依然として硬い表情したままだ。
え、何。返事待ってるの。
俺と由美子は見合わせる。
お互いいったん指輪を外す。
「どうするよ」
これが本音だった。いきなり勇者になれって言われても、どういたらいいのって話だ。
「いや、私に聞かれても」
由美子は困った表情で頭をかく。
「だって勇者だろ。なんか魔から世界救えって言われてんだけど。これって戦わないといけないの?」
「いやだから、私に聞かれても知らんって」
「どうするよ。全然わからん」
お互い途方に暮れそうだ。
「これってすぐ返事しなきゃいけないものなの?」
由美子が質問してくる。
「わからん」
「わからんかったら聞くしかない」
「王様にか?」
「そう」
「聞くのは提案者に任せた」
由美子は焦ったのか早口で言い返す。
「ちょっと待って。さすがにじゃんけんにしよ」
「しゃーないな」
あんな王様みたいな人間に話しかけたくなんてない。なんか顔怖いし。俺なら勝てる。給食のケーキを勝ち得た男。それが俺。絶対に勝てる。
「じゃんけん、ほい」
俺は渾身のグーを出す。
恐る恐る由美子の手を見る。
手が全開に開いていた。
完全に負けだ。くっそぉぉぉぉぉ。
俺があの王様に話しかけないといけないのか。
ため息が出るぜ。
再度、指輪をつけて話しかける。
緊張を紛らわすために、大きく息を吸い込む。
よし。
「あの、それって今答えを出さなきゃいけないですか?」
言えた。ちゃんと言えた。
「そうか。わかった。そなたたちも急に召喚されて戸惑っているのだろう。従者よ。客室へとご案内しろ」
とりあえず、よしとしておこう。これからどうするか考える時間稼ぎにはなった。
俺たちは通学カバンを肩にかける。
メイドに連れられて、石造りの部屋を出た。
スーパーカー クリームソーダ