九十一ノ怪 お前かぁー!!
ぽつ…、ぽつ…、ぴちゃ…、ぴちゃ……
異様且つ、独特な静寂に包まれた世界感が…
ここは、謂わゆる「廃ビル」と呼ばれる場所。
この建造物は経年劣化で荒れに荒れ、壁、床、階段…と、至るところが崩れかけていました。全ての窓硝子は割れており、全く機能しなくなった空いた窓からは外気が常時吹き抜け状態に。そこから湿気を含む冷たい空気が飄々と吹きつけてきます。
「カ、カビ臭いし…、いきなり天井崩れたりしないよな…?」
コンクリートが剥き出しのほんのり異臭漂う室内…
カビの所為?
建物内は薄暗いだけで、かなり頑丈な作りでもあります。しかし何処からか滴り落ちる雫の音が絶え間無く聞こえ、この部屋中に不気味な不協和音が奏でられているのでした…
「寒い…」
懐具合もろとも…、ここ最近で一番の冷え込みでは…?泣
初めてくる森に、初めてきた場所。
…頃は初冬。今は、ここに″二人″以外誰もいなくて…。昼飯時に何が悲しくて男二人でこんな場所へ来てしまったのか…?
建物外で見上げた時は、てっぺんの遥か頭上にしか青空が見えない、遥かに高い木々に囲まれた何百坪とある広大な土地。外観はコンクリート製の頑丈な二階建ての、やたら大きな建造物。
ふむ。軽く推理すると、この建物はバブル全盛期の名残か何かだろう。
腐食した接合部分から外れ落ちた看板らしき物が地面に転がっているが、表面の痛みが酷くその文字を読み取る事は出来ません。
見た目、ここの雰囲気はスラム街。室内のクロスは風化したのか剥がれ落ち、剥き出しのコンクリート面がホボ全面に露出している状態でした。
…え?ホ◯が前面を露出してるワケではないのであしからず…(誰も言ってません…)
…で、外壁の彼方此方に蔦が鬱蒼と生い茂り、至るところにカラースプレーか何かで描かれた、痛い落書きが目につきます。…今時、相合傘って…
「今日来たのは、釣り場の下見で…だろ?さっさと川場を探しに行こうぜ…」
今は何故か…、本来の目的とは全く別の行動をしている最中で…。「だぁ〜かぁ〜らぁ〜さぁ〜」…という感じに、自分こと″ケイジ″は少し子供っぽく口を尖らせ、そう″友達″にボヤきます。
「いやいやぁ〜…。まさかの、こんな山ん中に。ポツリと廃墟な建造物があったら……な?″普通″は探検だろ?」
友達の普通の定義って一体何でしょう…
ウキウキ、ワクワク…
一人だけハイテンションで、こう呟いた男の名は″ワダ″…。数多いる友達の中でも、トップクラスのトラブルメーカーなのです…。我がで勝手に問題を引き込むからデンジャラスブラックホールの異名を持つ男…(嘘です)
だから小指で耳の穴をホジホジするなって…、あ〜…、何か無性に腹が立ってきた…
「入らねーし、お前の言う普通は…″絶対に普通じゃない″からな。それに、そんなテンションの時は必ずロクな事が起きない。いや、マジで…、頼むから俺を巻き込まないでくれ…」
「はぁ…、相変わらずケイジはノリが悪いな」
ちょいムカッ…
某有名アニメみたく『黙れ小僧っ!』…と、美◯明宏風に心の中で叫ぶ自分。
この時は…確か齢も二十代中頃くらいだったでしょうか…?
大阪と奈良の大地を割る形で連なる山々…、取り敢えず大阪側から奈良方面へ山頂に向かって車を走らせていて。とある河内の田舎道、釣りポイントを探しながら川沿いの道路を上流へと移動していました。
路面はかろうじてアスファルトでしたが、左右から雑草がわんさかと生い茂り、ガードレールにもビッシリ苔が生えているような場所。オマケに立ち並ぶ高い樹木の所為で、やたらと薄暗い道に誘い込まれた様な感があります…
正直、かなり不気味でした…
高所の岩肌が崩れ落ちたのか、道路が荒い砕けた石と砂利まみれになっている「車のタイヤがパンクするぞ…!?」…と、そんな道に迷い込んでしまっていたのです…
これは山道の途中で、変な狭い脇道に外れたのが原因…。永遠と続く車の車幅しかない一本道。当然、対向車なんて一切すれ違う事なんてなくて……と、その道中。突然ワダが叫びました…
「あ、あれは…!?」
ここにきて一番ヤバいヤツが、一番ヤバいフラグを立ってしまったのか…
ワダの頭上には嬉し恥ずかし、異様にピカピカ光るビックリマークが点滅中…。そして、その先で見つけなくてもいいのに、わざわざ見つけてしまった、この異様な″廃ビル″…
「おぉ…」
そう…、ここが今回の″不穏な空気の発生源&原点″とも言える場所だったのです…
一応建物内を探索しましたが、中は朽ちた家具と瓦礫以外何も無く、どこぞのカップルが頑張った後がある位で…
う〜む、しかし…、いやいや、それにしてもアレがいっぱい落ちてるな…はぁ…
「……。」
…ってかさ?一体ここで何人頑張ったんだよ…
そんな呆れ加減に、気温もテンションもダダ下がり中。急にスー…っと、うなじから頬にかけ気温が下がり、何かに触れられた感がしたのです…
これは一体何っ…!?
…と。眼はパッチリ、背筋はシャキーン…、全身がゾッとした、その瞬間…
(ガシャーンッ!!)
突如ワダのいた方から、何かしら吹っ飛んだ様な激しい衝撃音がっ。
ワナワナ、ドキドキ、バクバク…
それは酷く鼓膜を震わせ、吃驚、驚嘆。そして振り向いたその先にはっ…
「い、椅子…?」
ボロボロに朽ち果て座る事すら出来なくなった椅子が無惨にも転がっています…
…ってかワダッ、いきなり黙ったまま″それを蹴った″のかよ!びっくりするじゃねーかっ…
…と、そんな感じにワダを睨みつけたのですが…
「あははは。ケイジ、悪い悪い…」
そこで、もう一度転がっている椅子を見た直後…
『″はぁ……″』
自分の耳元へ微かに聞こえてきた、小さな″溜め息″を吐き捨てる様な声…
おいおい…、マジかよ…いきなり?…てかさ?お前が「ココを探索したい」って言ったから付き合ってやってるのに。普通はさ?言い出しっぺが嫌だ、面倒臭い…的な態度をとったり、思いっ切り″溜め息″を吐き捨てるか?
「……。」
「ん?ケイジ、何?」
我が首をくるり。少し腹が立って再びヤツの方へ睨みながら振り返ってはみたが……あれ?ワダからは溜め息を吐き捨てた様な仕草や雰囲気は微塵も感じられない…
いつも通り魂が抜けた様、バカみたいな痛過ぎるワダの笑顔だけが目につきます…。それはそれでイライラするのですが……と。今度は、己が視線はワダの方を向いているのに、再び自分の背後から…
『″はぁ……″』
と、非常に重い溜め息を吐き捨てる声がハッキリと聞こえてきたのです…。感覚的に耳で聞いた…ではなくて、″直接脳に語り掛けられている″様に感じました…
え〜、確か今…。ここには俺たち二人しかいなかったよね…?…って、一体誰に聞いてるんだよ俺っ!?
確実且つ決定的に…謎の第三者のヤバい吐息が原因だと、我が脳内は警鐘を鳴らしたのです…
それに合わせ身体は急遽警戒態勢、すぐさま腰と視線を落とし、自分の足元周辺を見渡しました…が。その″発生源″であろう霊的な影は全く目視&確認する事が出来ません…
よって無意識下、表情は青褪めて完全に狼狽えてしまっている自分がそこに…。それに気付いてしまったワダが、何かを察知した様で…
「ケイジ…。お前の顔…、思いっ切り血の気が引いてるけど…、ま、まさか…??」
その問いに頷こうと首を上に上げたと同時。奴は自分を放置し、猛ダッシュで一目散にこの場から逃げ出したのです…
(ダダダダダッ……!!)
「アカン、アカン、アカンッ…!!」
「あっ、酷いっ…!コイツ、俺を一人置いて逃げやがったっ!!」
まさに後手。
最低男の後を必死に追い掛ける事になってしまった自分…。その建物の二階から転げる落ちる様にドタバタと階段を降り屋外へと逃げ出し、駐車してある車の方に向かって必死に走りました…。しかし、あの怪奇現象は一体何だったのでしょうか…?
″物理的″な可能性としては人間が来たから、危険を感じ身を潜め隠れていた山の獣の吐息?もしくは吹き抜ける風の音が溜め息っぽく聞こえたとか?その真相は今も不明…、謎のままで…
「はぁはぁ…、ワダ…。お前は友達を放置して、いつも一人ダッシュで逃げてる記憶しかないよ…、ったく…」
「はぁはぁ…、何だよケイジ…?何か見えたりしたのか…?」
「ち…、はぁはぁ…違う…。耳元で『″はぁ…″』…って、吐き捨てる溜め息が2回も聞こえたんだよ…。お、お前には聞こえなかったのか?き、聞き違いかもしれないし…、ど、動物かもしれないし…、風の音かもしれないが……」
そこで返事をせず。″じっと…″自分の顔を見つめ、言葉の続きを待っているワダが…
「…………それか…、世の理に反する″ヤバいヤツ″だったかもしれない…な、はぁはぁ…」
″霊的″な話をしたら、やっとニヤリと笑って表情を返したワダ。
パワースポットや年季の入った廃屋、廃ビル、廃病院なんて経験上、行くと絶対にロクな事が無い…
じゃあ、何で入ったんだよ…と、それはさて置き…
「さ、さっさと車に乗ろう…。俺は絶対…二度と、あの建物へは行かないぞ…」
「あぁ…」
…で、二人は車に颯爽と乗り込み。まだまだ続いている未知なる道路の先…、更にその奥へ進もうとしました。
しかし車を少し走らせると、左手の山の斜面から太さが直径1メートルはあろう大木が右側へ倒れ、道路を完全に塞いでいたのです。
その倒木はガードレールにガッチリと食い込み。朽ちている樹皮と共にビッシリと苔が生え、その一体化している様は、まさに「ここには何年も人が入っていない」という証左であり…。「″これ以上先に進めば、命に危険が及びますよ…?″」…と警告されている様でもありました…
「行き止まりか………。じゃあケイジ、ここから歩くか?」
「はぁ?マジで!?」
アホか?真に…本物のアホなのかコイツは…??ワダのこの暴言に対して、必死になって首を横に振っている自分。…とか、やってる傍から…
(ガチャ!)
「あー、外は空気がうめぇ〜なぁ〜」
(スタスタスタスタ…)
「あ…」
一人で車を降り、倒木の下をくぐって、さっさと先に行ってしまったワダ。ちっ、あの野郎…。俺が逃げない様、ちゃっかり車の鍵を抜いてやがるし…
「はぁ…」
今度は自分が溜め息を一つ。仕方なくドアを開け、車外に出る事にしました……が。
『ガァ〜、ガァ〜…』
この独特の鳴き声は…?絶対に鳩だったり、小さくて可愛い雀や椋鳥ではない。恐らく…このイガらくてイヤらしい鳴き声…。そう…、あの真っ黒でデカい、ご近所さんの家庭ゴミを散らかすオカンの宿敵…ブラックバード…
「″カラス″……か」
しかも…
『ガァー、ガギャー、ガガァ〜、ガーッ…』
空から大量の鳴き声が聞こえてきました…
一体何匹いるんだ…?その姿は大木の遥か頭上あって、全く見えない…。まさか謎の侵入者である人間たちを警戒してるのでしょうか?人間なんて、さっさと出ていけ…と威嚇しているのかも?
あ…、もしかすると仲間同士で「下にカッコいい人間とトラブルを引き起こす変態アホ男がいるぞ!気をつけろ!」…とでも言ってくれているのでしょうか?ウホッ…
「最悪だよ…」
さっきの廃ビルの件といい自分は置いてけ堀だし、森の中だから薄暗くて不気味だし…。何か″ゾッ″とする要素が満載なんだが…。もう、嫌な予感しかしないよ…
「ワダ!待てってーっ…」
仕方が無い…、ワダについて行くか…
しかし本来の目的だった川…。その道を進むにつれ横に並行して流れていた川は、やがて右側の山間に大きく外れ完全に見えなくなってしまいました。オマケに道は砂利道へと変わり、落ち葉だらけの先が全く見えない木々に覆われた真っ暗な山道が延々と続いていて…
「ワ、ワダ…。もう引き返さないか…?目的の川が行方不明になってるし…、この高さだと川の源流に着いちまうぞ?そんなトコに魚なんていないだろ…?」
すると細目でワダがひと言…
「ケイジはもう探検するのがイヤなのか?」
嫌も何も…「友達数人と穴場で魚釣り。」が出来る場所を探すのが今のミッションだろ。しかも懐中電灯も何も持ってきていないのに、陽が落ちたらどーすんだコイツは…
「YES、NOとか、そんな話じゃなくて…。俺は、もう一度川があった分岐点まで戻って釣り場を探索してみるわ」
「そっか…。じゃあ何かあったら、また電話してくれ」
「ま、まさか…。マジに一人でこの先に行くのか?」
「おう。あと少しだけ探してみるわ」
「わ、わかった…」
会話のキャチボールは互いに投げっ放し状態に…。早い話しが、二人は完全別行動になってしまいました。ワダは先へと進み、自分は戻って川沿いに釣り場を探す事に…
『じゃあ、一旦別れよう…』
結論から言うと…。自分はワダと別れ、釣り場を探しに行きましたが。かなり上流に来ていたので川幅は凄く狭くて、非常に浅い…。いても生き物はサワガニ程度しか見つからない場所しかなかったのです…
「あ〜あ、ワダに″ついて行った″方が良かったかなぁ…」
仕方無く、先に車を停めている場所まで戻った自分。しかし…
「あ…。ワダの車だから俺、乗れないじゃんか…。立って待つしかないか…」
鍵はワダが持ってます。湧き水か?下は雨も降ってないのに濡れ濡れで座れないし…。一応、ドアが開くか試しましたが、それは無為に…
「ぼ〜…」
わざわざ口で、そうボヤきながら…
(ウロウロ…、ウロウロ…)
ジッとしているとリアルに寒いから、あっちでウロウロ、こっちでウロウロ…。身体にエンジンをかけ、ボトムスのポケットに手を入れたままワダを待ち続ける事、約30分…
「ーー…イジ〜……」
「ん…?」
小さく誰かの声が聞こえたので振り向くと、ワダが遠くから此方に向かって手を振っているのが見えました。案外早く帰って来てくれて助かった…。あと数分遅れてたら、俺の体は人間冷凍サンプルと化していたぞ…
「ケイジ。ただま〜」
「おかか〜…は美味い」
そして彼のニヤけた表情から、探索の手応えを感じ取っていた自分。
「ケイジッ、あった、あったっ、あったよっ!小さな池だけどな?水面に波紋が出来てたから、魚はいると思う。」
「おぉ、やったな!」
『ーーワイワイガヤガヤ…』
ワダの根性で探検した甲斐あり。二人は皮算用的に、皆で魚が釣れた時の話をして、勝手に盛り上がっていました。しかしです…
『″はぁ……″』
「…!!?」
再び、自分の背後から聞こえてきた、あの溜め息を吐き捨てる声…
「……。」
盛り上がっていた会話を自分から一方的に止め、気持ち体を低く身構え、再び溜め息が聞こえるか待ちました。
「ど、どうした?ケイジ…」
「しっ…、ワダ。ちょっと静かに…」
………
……
……
『″はぁ……″』
「…っ!?」
トータルで4回目の溜め息。この声が一番ハッキリと聞こえました。ですが、ワダには全く聞こえていない様で…。恐怖を紛らわしたいのと、聞こえた仲間を増やしたい一身で…
「ほ、ほらっ…。今まさに、溜め息が『はぁ…』って聞こえただろ!?」
「い、いや…、わからん。ホントか…、ケイジ…?」
ちょっと待て…。まさか″憑かれたのは自分だけ″か…?外で歩いたりしていた所為か、ホットな身体への重みや倦怠感は無いが…。アドレナリンの所為??
しかし現状は明らかに非常事態でした。そこへ追い打つかの様に、再び大量のカラスの鳴き声が聞こえてきて…
「ワ、ワダ!か、帰ろう!!頼むっ、今すぐにっ!!」
「あ、ああ……」
(バタン!ぶぉ〜ん…)
………
……
ーーそしてワダに、妻と子供が待つ我が家へと送ってもらって「はい、さよなら」し…、今度はマイカーに乗り込み。自分の実家に行って、霊感の強い兄…、ナガ兄にその事を相談してみたのです。
「ーーカクカクシカジカ…って事があってさ?ナガ兄?俺…、今憑かれてないかな…?」
「う〜ん…」
「……。」
「…わからん」
「へ?」
「とりま、簡単にお祓いしておいてやるから。ケイジ、背中出せ」
そしてナガ兄は、手首の数珠を右手に握りしめ。自分の背を…
(バンバン、バンバン…)
「いたい…」
(バンバン、バンバン…)
「ウホッ、凄く痛いです…」
…とかは言ってないですが。スッキリした様な…、してない様な…。只々、背中が痛くなっただけでしたが。気持ちの問題だったのかな…?
「ありがとう、ナガ兄…」
「気にすんな。また、何かあったら来いよ」
「うん、わかった」
そしてまた我が家へと帰り、充電をしようとポケットから携帯電話を取り出すと。着信があったのか、いつの間にか携帯がチカチカと点滅していて…
「ん?誰だろ……ナガ兄かな?……ん?」
それは今日、一緒に釣りポイントを探しに行った…
「ワダ…?」
彼からの着信履歴でした。そしてこちらから電話をかけ直したのですが…
『あ″…ゲイジが…?じづわ…ーー』
電話口のワダの声はまるで風邪をひいたみたく、酷い有り様でした。まさにハスキーボイス。しかし聞き取りにくいながらも頑張って聞いていると、その話の内容はかなりヤバ目で…
自分を送った後、ワダが自分の家に着いたら。部屋の明かりをつけて中に入るなり、フッ…と勝手に消灯したり…
自分が部屋で座っているだけなのに、空気の流れを肌で感じたり、床が彼方此方でやたら軋んだり…
窓が風で震えているのか、凄くカタカタと鳴るので。窓を開けて外に手を出し、確認してみたけど全くの無風だったり…。これの確認中にも部屋のドアが急に「バタン!」と閉まったり……と。
ワダの身の回りは、まさに″怪奇現象、ポルターガイスト″のオンパレード状態に…
「マジで…?寒気は?風邪じゃないのか?」
『全く、ざむぐないし…。喉だげが痛だい…』
「う〜ん…」
『ど〜じょう…?』
取り憑かれていたのは…「お前かぁーっ!!」恐らく廃ビルで椅子を蹴ったり、余計な事をしたワダの方が憑かれてしまい、その霊からの″声?″を一緒にいた自分が感じ取っていたという事か…。そう言えば、コイツも幽霊と縁が切れない人間だったな…
取り敢えず「″憑かれていたのはワダ″」…というオチで。めでたし、めでたし……最低だな、俺。(はあと)
「ふむ、『どーしよう?』…も何も。◯◯神社へ、お祓いに行け…」
『ゔん……』
自分が簡単に数珠拳や塩タオルで祓ってやってもいいが。正直、伝染ったら嫌だし…。まぁ…結局ワダは、ケイジ流お祓い術で自分の背をブルー◯リーのヌンチャクばりに、ビシバシビシバシと塩タオルでシゴき、無料で済ませたとか…
ホントにセコい奴だな…、俺も人の事言えないけど……テヘペロ。
そしてワダは、次の日には身体全快、頭は全壊…。その週末に、他の友達と一緒に見つけた池へ魚釣りに行った″らしい″です。
ん?どーして「″らしい″」…なのか?勿論、怖がりな自分はそこへは行きませんでした…。色々なハプニングを期待していた読者様方々、情け無い作者をどうかお許し下さいませ…
いや…、いっその事「このカス!クズ野朗がっ!」とか「さっさと死ね!アホッ!」とか「でべそ、へタレ!!!」とか…「このっ、甲斐性無しっ!!」…とか罵ってもらった方が、まさにご褒美……
……ん?
だ、誰だっ!最後の「″甲斐性無しっ!″」って言った奴わ!!!はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……照。
…と。今回は微妙なお話となりましたが…、読者様。人間には″霊的なモノを引き寄せるタイプ″が存在ます。案外、それを無自覚で生きている人はたくさんいるのも事実です。風邪を引いた程度で済めば御の字ですが…、出来れば少しでもハプニングを回避する為に、パワースポット的な場所には極力近付かない様にして下さいね。
ご静聴?ありがとうございました。笑
完。




