七十八ノ怪 桐箱怪収…
これは自分が若干、オッサンっぽい感じがし始めた…三十代中頃?…に体験した心霊現象の話です。
…って、誰がオッサンやねんっ!冒頭から暴走すいません…、いや、暴走から冒頭?どーでもいいっ…
…で、仕事は朝から工場で部下の仕事の采配予定を発表します。そして昼の三時になると休憩時間に、大阪市内へ配達に向かいました。
管理者と配達員の一人二役…
ブラックもブラック…自分が労働基準法違反、人権無視な度の過ぎる無償残業をさせられまくっていた頃の話ですが…
そして朝から行く工場とは違い、色々と理由があって会社本社は二カ所存在し。片方…本社は大阪市内、立ち並ぶアンティーク系の街並みが有名な北浜辺りにあったのです。しかしその本社は市内の中でも、見た感じはボロい″ほったて小屋&廃墟″?みたいな建物で…。その前へロングの箱車を駐車しながら、駐車禁止キップを気にしていました。オマケに中で仕事まで手伝わされてから、市内配達へと向かうのです。そんな中、今回は「いざ出陣!」…って時にいきなり″社長″から呼び止められて…ーー
「おぅっ、悪いがケイジ君。◯◯◯◯堂に寄って箱を一つ預かってきてくれないか?社長の◯◯氏には話を通してあるし、仕事的にも道中だし、″ソレ″も軽いから影響しない筈だ」
「あ、はい。わかりました」
ーーこの社長の依頼から少し話しが外れ…
この雇われ社長な彼。
自分より15歳ほど上でしたが態度だけはやたらとデカい…。後日、会社の上層部で社長が行った何かの不正が発覚?し、経理の人間まで巻き込みながら、彼は形だけの自主的な円満退社…となってしまうのです。
「ケイジ。待ってるから急いで取りに行ってくれないか?」
「あ、急ぐのなら、先にそれだけ引き取ってきましょうか?」
「ん?分からん奴だなぁ…、お前の仕事が増えて目一杯…って事だから。全部終わってからでいいよ」
″急ぐ″のか″急がない″のかどっちだよっ…
会社内でも『あー…、この人が社長になったのかぁ…。もう、ダメだなこりゃ…』と社員一同、この人は凄く評判の良い方でしたから。
ーー上とは別件ですが。「急ぐから」と言われ慌てて″ソレ″を引き取ってきたら、単に大量の″エ◯ビデオ″だったり…。Blu-rayやDVDが無い時代。デカい紙袋に四袋、嵩張るVHSのビデオテープがたんまり入っていて、すんごい重かったしっ…
「ケイジ。お礼に一本やるから持って帰れ」
いりません……ってか、恐らく数が百本は超えてるのに一本だけ!?
その社長は得意先の客と不倫し離婚、前妻の子供は放ったらかし。その不倫相手と再婚した既婚者のアンタらも、50歳くらいだろ?精力的にも、どんだけ頑張ってエ◯ビデ見るつもりだよっ…
それよか俺を早く工場へ帰らせてくれっ…、さっさと家に帰りたいんだよっ。この後、誰もいない真っ暗な工場へ一人で帰り、社用車とマイカーを乗り換えないといけないんだぞ?アンタと違って、僕は家で大事な″子供たちが待ってる″からなっ!
そして次の日。社長がソレを一晩で見終えたのか…
「おいっ、ホラッ、コレ…。会社の皆んなで分けろ」
″皆んな″…って、まさかの女性社員にもか?処理に困ったら、すぐコレだ…
で、ウチの子供に見つかったら思いっ切りアウトだろっ、いらないしっ。紙袋を上から覗いたタイトルも「ザ、熟れた女」等々…、『熟女』系ばかり?い、一応。僕は変態系の方が…、、、オホンッ…。いや、まぁ、一応会社の男連中には持って帰ってあげましょう…
次の日の朝、車内の荷下ろしの歳。紙袋の匂いを嗅ぎつけたのか。フラフラと我が社で一番変態でエロい事を自画自賛する″ダラハ″がやって来て、それを一人で全て持って帰ってしまいました。アーメン…
「え?全部持って帰るんですか…?ダラハさんのトコ…、奥さんや娘さんは怒らないんですか?」
「ん?ケイジのトコは怒るのか?」
「多分怒りませんが…、ウチはそこそこ大きい娘が二人いるし、もしバレたら家の長たる親父の沽券に関わるから絶対に無理っす…。そして扱いが″ゴミ親父″から″カス親父″になっちゃいますし…」
「お、俺にはその差が分からんが…」
実は自分で言っていて、その差が全く分からなかったのも秘密です…
ーーと、かなりの愚痴&脱線してしまいましたが。ようやく社長が得意先から″ある箱の引き取り依頼″を自分にしてきた話に戻します。
「ケイジ。待ってるからな?急いで取りに行ってくれ」
「あ、じゃあ先に。それを引き取ってきましょうか?」
「ん?分からん奴だなぁ…、お前の仕事が増えて目一杯…って事だから。全部終わってからでいいよ」
「……はい」
…と、毎度よく似たやり取りばかりしていた気がします。で、試しにワザと対応しなかったら…
「ケイジ。待ってるからな?急いで取りに行ってくれ」
「いつも通り最後でいいですか?」
「ダメだ、急ぐって言ってるだろっ。いい加減、俺の言う事くらい察知しろ。…あ、中は見るなよ?」
「……はい」
この雇われ社長相手に、正解の無いこんな問答の繰り返し。まぁ、これが社長になった日から分かってた事だからな。よって文句を後から言われると鬱陶しいから″先にこの依頼を優先″したのです…
「◯◯社長〜、毎度ぉ〜…」
「おー。ケイジくん、待ってたよ。コレを社長に渡しておいてくれるか?」
「あ、はい。お手数お掛け致しました」
(ペコリ)
何で仰々しくC◯ANELの紙袋に入ってるんだ?まさか本物が…?
ちょい覗き込むと、その中には一つ横幅15センチ、縦幅30センチ程の″白い桐箱″が入っていました。しかも社長?「見るなよ」って言われたから余計気になるってもんでしょ?
「よいしょ…」
今のこのご時世…、そんな約束事なんて通じないっ。だから「オイラには見る!権利があるっ!!」
しかし…
「くっ…」
桐箱の上蓋と底との繋ぎ目に、しっかり、ベッタリと貼り付けられたカラーテープ…。ちょいと見、期待していたが流石にこれは簡単に剥がせない…。そして意地でも中を確認したかったから、箱を軽く振ってみたら…
(カタ、カタ…)
その音からして…、「角張った固い物が中にある?」…と、そう思った瞬間でした
(ゾゾゾッ……)
腕から全身にかけて急に鳥肌が立ち、自分の生きてきた経験上から。そこで初めて″箱の中から霊的な何かが放出されている″…という認識へと至りました。
わざわざ美しい桐箱に入っているくらいだから、かなり高価な物が入っているのでしょうが…。しかし同時に、自分の霊的な感覚が『これは危険なモノ』だと警鐘を鳴らしていたのです。
「さ、さっさと社長に渡してしまおう…」
それから、わざわざ車を側道に停車させてから荷台後部の扉を開け、ソレを最後尾に乗せました。
既に「一体この中に何が入っているんだろう?」…的な探究心なんてものは掻き消えており、必死に″ソレ″をさっさと何処かにやってしまいたい…と。拒絶するくらい悍ましい恐怖心だけが全身を支配していました…
(キキー…、バタン…)
「い、今戻りましたぁ!社長はおられますか?はぁはぁはぁ…」
「ケイジくんお帰りなさい。あ〜、社長なら◯◯さんと出掛けたわよ?」
「マ、マジですか…!?」
この女性事務員の方が言った『◯◯さん』とは…。謂わゆる社長の飲み仲間でした。早い話が「社長は今日は帰ってこないわよ?」…って事。
…っんのヤロォ〜、仕事中だろっ…
仕方無く、事務所へ社長の依頼品を置いて帰ろうとしたのですが…
「ケイジくんごめんね…?去年の末、本社に泥棒が入ってから、″大事なモノや金品等は置いて帰らない″…って取り決めが出来たのよ…」
「…え!?」
社長に対し、頭の血管が数本キレた音が鳴っている最中。更に年配の本社留守番役で先輩営業マン″オガ″が片手に千円札をヒラつかせながら…
「おーい。ケイジィ〜、悪い″いつものヤツ″頼むわ」
「おっ、今日もイクか?俺も出すわ」
「あ、はい…」
もう一人の年配の先輩営業マン″モト″からも追加のお金が…
これは毎日恒例。近くのコンビニへ酒や肴の買い出し自分に依頼をしてくるのです…
今日はブッチした社長がいませんから止めませんか…?頼むから、さっさと帰らせてくれ…
「今日は社長おらんからスパドラ三つ頼むわ」
「あ、はい。わかりました」
モトはビールを三缶依頼。しかしこの後が問題なのです…
「じゃあ、オガさんは何にしますか?確か禁酒中でしたよね?」
「あー、悪いが。ワシはいつもの…″ポカリス″を頼むわ。あとは″イカスルメ″や」
「……………はい」
自分もレベル的にIQは低いと自覚しておりますが。この人は特に、ちょっと、色々と、いや、かなり…足りていない方で…
ポカ◯スエットを略すのは良いのですが…、惜しい、切るトコが違う…。普通、それを言うなら「″ポカリ″」だろ…
…で、「イカスルメ」って何だよ…。さっきからて、ワザとか?ワザと言ってるのか??まさか…新種か?生物図鑑にも「″スルメイカ″」しか、載ってませんからぁー!逆だっ、逆っ!!惜しいっ!!!
「はい…。買ってきました…、どうぞ」
「おう。ありがとさぁ〜ん。じゃあ、お疲れなぁ〜」
「お、ケイジいつも悪いな?ジュース買ったか?お疲れさん」
三十代中頃のオッサン(なりかけ)が、お駄賃的にジュースを一本。そしてお釣りを返す際、オガの営業テーブルを見て自分は失笑を一つ…
彼は入ってきた注文に対して、商品を発注するのですが。その注文書の品を発注し終えたら、普通なら品名横に「発注済」…と書くのですが…
(にやり…)
オガはいつも「発注剤」…と書くのです…
そんな洗剤あったか?あったら、あったで余計汚れるんじゃないか??普段は医◯品売ってる会社なのに、洗浄剤売ってどうするんだぁ!!定年するまでアナタに間違えてる事を絶対に教えてあげませんからねぇーっ……残念っ!!!
…とか言いながら後日。オガの送別会の幹事は自分だったり…。以外に仲も良かったり…。ホント、面白いオッちゃんでした………
……って!また脱線してるっ!この作者ばかりはっ!ヤバい桐箱の処理を先にどーにかしてよっ!
「あのー…帰る前に。オガさん?モトさん?この社長宛の桐箱の件なんですが…」
『悪い、それは自分で渡せ』
オッサン二人にハモられ、ハッキリと断られ…。仕方無く工場まで″ソレ″を持って帰る事になってしまいました。
(ゾゾゾ…)
治らない悪寒。
高速道路をぶっちぎり、ロングの箱車の最後尾に″いわくの桐箱″を積んでいても、背後から人に見られている感が半端ない…。もう後ろを見れないし、見る気もない。それは純粋に霊を見てしまうのが怖いから、車内のルームミラーは完全に下へと向けていました…
(キキー…)
そして自分が工場に帰ったのは晩の9時頃。約50%の確率で工場には誰もいなくなり消灯しているのです。この日は誰でもいいから人がいて欲しかった…。でも運悪く工場は既に真っ暗になっていて、これは間違いなく社長の依頼で帰りが少し遅れた所為でした…
怖いし車はエンジンをかけたまま、ライトもつけたまま…。手当たり次第に職場の明かりをつけ、さっさとマイカーと会社の車を入れ替えた怖がりな自分…
「よ、良かった…。何も起きなかった…」
会社の電気を一気に消灯し、あとは正面の大型電動シャッターが完全に閉じるのを待つだけでした。
(ウィン、ウィン、ウィン……)
すると、真っ暗な倉庫内に突如見えた大きな淡い光の塊…。見方によっては人型に見えなくもない。だって倉庫内には今、光の元となる様なモノは何一つ置いてない筈…。でも″ソレ″が例の桐箱を乗せていた車の背後に、ハッキリと見えていたのです…
(パシャーンッ…)
「……!?」
完全に仕事が終わり。静まり返る企業団地に大きく鳴り響く閉じたシャッター音。
″アレ″は良い霊なのか、悪い霊なのか?いや、そんな事は問題じゃ無い…。憑かれるか、はたまた憑かれないか…
「明日、″アレ″をどうしよう…」
自分はその日、社長の所為で全く寝付けませんでした。早い話が「明日。再び市内に行って社長に渡すまでの間、″アレ″をずっと持っていなければならない」という事です…
マジか…?これは確実に雇われ社長の所為ですが何か?もし手渡すとしても、彼にその心霊現象を説明する気なんて一切ありませんが。
そして朝一、出社した時に自分は後輩営業マンの一言に驚愕。
「おはよう御座いますケイジさん。社長、今日の三時から関東に出張するらしいっすよ?」
「うえっ!?」
あ、あの野朗っ…
ど、どーするよ?アレをどーすんのよ!?最悪、人気の無い工場内の倉庫にしまっておくしかないか。まさか自分がその手のモノを預かる事になってしまうなんて…
この時の自分は、あの懐かしのポルターガイストなダンシング市松人形の事を思い出していました…。
ちーん…
…だったのですが、意外な面で救済措置が
「だから早出の俺が預かって行くっす」
「へ?」
「いや、ケイジさん。『へ?』じゃなくて…、社長の箱は俺が預かり、ちゃんと持って行くっすから。大丈夫っすよ」
「オー、マイ、ゴッ!お前は何てイイヤツなんだ」
霊感の強い″キンちゃん″や″ユウ″が、この会社で働く前の出来事。よってそれが『いわく付きの品』…という事を知っていたのは自分だけになります。
結果として、その桐箱の中に『何が入っていたのか?』や『どんな経緯のある品』なのかは今も不明のまま。
そしてソレを運んだ後輩や自分には何もトラブルは起きませんでした。
しかし…、そこから慌ただしくも半年間程で社長は再度離婚?借金まみれ?で、雇われ社長をクビになって円満退社されました。(笑)
その時の彼の苦し紛れに言った恨み辛みの断末魔が未だに忘れられません…
『わたしはこの会社の売り上げ、8億くらいは貰っていきますからねぇ。楽しみにぃ…』
これはかの有名な敗者の遠吠え…?
ちょっと下唇を噛み、自分の片方の鼻の穴を塞ぎながらそのセリフを言えば、元社長そっくりなモノマネが出来る自分。何のこっちゃ…
読者様なら、怪しいモノによる心霊現象で、その社長に悪影響を及ぼしたと思われるでしょうか?自分は放っておいても彼の人間性なら、いずれは自滅の道を歩まれたと思うのですが。
余談ですが、人間の脳には使われてない部分が約七割ほど有るとか?超能力や霊感は、その未知なる部分が使用される際に発揮されるやら何やらと誰かが言ってました。
そして、ふと思う時があります。ナガ兄の生霊や霊と遭遇時は全く恐怖を感じませんでしたが。″未練″や″執念″を持った他者の霊なら干渉すれば寒気がし、ゾッとしたりするのです…。自分には何かその手のアンテナ的なモノが脳内にあるのかも知れません…
そもそも幽霊になる原因が強烈な怨みや執念でしょうし、当然そうなる気がします。
しかし幽霊よりも怖い…いえ…タチの悪い自分のリアル親父なら、幽霊じゃなくても絶対悪寒が走りますよ…
…と、今回のオチがこんなのですいません…
完。




