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七十五ノ怪 誘いの一方通行

これは自分ケイジが若かりし頃。仕事の配達でワゴンタイプの社用車に乗って、大阪の市内周りをしていた時の恐怖体験談です。その日は雨が降ったり止んだりの凄く嫌な天気だったのですが…ーー





小口こぐちが多い時に限って雨って…。やっぱり自分ケイジは雨男なのか…?」


小口とは細やかな仕事が多く、手間ばかりで儲けが少ない仕事の事です。

…で、実は妻からは「アンタ、絶対に雨男やわ!」とレッテルを貼られていたり。いや…過去に、結婚前のデートやお出掛けの際は必ずと言っていいほど雨が降りました…。もしかすると神様が「ケイジくん〜、アレと◯婚は止めときなさい〜」と警告してくれていたのかもしれませんが…、「実は嫁が雨女…!?」…と口走った瞬間、自分が真っ先に霊界へ逝ってしまいますので止めときます…


…と、逸れた話を戻して。

大阪市内の道路は一方通行が非常に多く、車では来た道をすぐに引き返せない場所が至る所に点在します。そして、その行き辛い場所にある得意先の一軒から極稀に注文が入るのですが、先輩と市内周りを交代した直後だったので、新しい地図を片手に道を必死になって覚えようとしていた頃でもありました。だって全て配達し終えないと家に帰れませんからね…


「あ、ここは初めてだったな…。◯◯⚪︎◯薬局…か。うわぁ…道細みちほそっ、一通ばっかりだし…。最悪だなぁ…」


市内は大通りの筋を一本外れれば、本当に狭い道が多くなります。しかもその辺りは入り組んだ川も流れていて、橋は引き返せない場合が多く、その上複雑で…


「えー、ここをぐるっと回って…、こう行けば付く…な。よしっ…」


あらかた車で移動するシュミレーションを立て、得意先へと向かいました。で、市内なんて場所は路上に一時停車し配達するのが基本だったので、その得意先からも近い場所へ車を停めたのですが…


(ドンッ!!)


と、誰かが窓ガラスを強く叩く音が…


「は、はい?」


いきなり運転席の窓側に回って来た笑顔で凄く優しそうな方々。それはまるで…


「おいっ、にぃーちゃん。ここに停める気か?(ニッコリ)」


「絶対に停めませんっ!!」


(ブォーン…)


あぁ、配達出来なかった…。…ってか、同じ風貌の人がゾロゾロと…五、六人はいたな…。この暑い時期に腹巻や赤紫色のスラックスって…何?何人か丸坊主で、眉毛が極小か完全に無かった気もするぞ…


いくら無知でも″すんごい怖いモノ″を見たら直感でそれが何なのかくらい分かります。あの時、あの人たちへ文句を言ってたら自分ケイジの五臓六腑は弾け飛んでた事でしょう…


「わちゃぁ…、引き返せない…。◯◯筋はやたら混んでたし…。仕方ない、ここに停めて荷物を担いで行くか…」


全く教えてもらってなかった暴◯◯事務所から少し離れた公園横に車を停め、荷物の加減でその得意先を二度往復しなければならなくなりました。仕方無くその場所から傘を首横に挟みながら、荷物をビニールで包み担いで運ぶことにしました…が。


(ゾッ…)


「え?今、何?背筋がゾッとしなかった…!?」


もしかして自分は知らぬ間に、この降りしきる冷たい雨に打たれ過ぎてしまったのでしょうか?夏と言う事もありクーラーをガンガンに効かせていたからかも知れませんが。まぁ、今から荷物を二回運べば自然と体は温まり…


「ほっ、ほっ、…ウホッ……ふぅ。まいどぉ〜…」


でも、そのお客様は凄く気さくな方で。あらかた事情を知っていたのか、何度も何度も頭を下げ逆にお礼を言っていました。でも正直な話、二度とココへは来たくなかったり…


「″また…″よろしくお願いしますぅ〜…」


…と、やっとこさ配達を終えて車へと戻った、その時です…


(ゾッ…)


「ひゃっ…何だよ…」


嫌でも原因はすぐに判明しました…

″ソレ″は雨雲の間から稀に差し込む陽の光に反応したのか。会社の車の助手席辺りを突き抜けて、寂しそうに立っているサラリーマン風?の男性が見えていたのです。瞬き加減で見えたり見えなかったり…、かなり薄くて消え掛かっている様な存在ですが。確かに″ソコ″にいるのです…


「ど、どうしよう…」


一度視覚し、その存在を認識してしまったら最後。己自身おのれの意識へ嘘なんてつけませんから…

「私はサラリーマン風の霊なんて見てませんよ〜」…とか考えていても無駄…という事になります。まさに前途多難。要は運転席に乗った瞬間、ソレに取り憑かれる可能性があるという事なのです…


(ポツ、ポツ…ポツ、ザザァーッ…)


やがて陽光は消え失せ、再び雨脚が強まってきました。やっぱり雨男は僕なのか…?そこは公園という事もあり、たくさんの桜の木が生い茂り、その下で少し雨宿りをしていましたが。まだまだ配達がたくさん残っているのです。

はぁ…、どうしよう…


「行かなきゃ、行かない…、行けよ…、お前が行けって…、誰が行くって?お前だよっ!!」


そうやって自分と喧嘩する自分…。しかしそんな遊びの様な時間さえ許してもらえず、背筋は…


(ゾゾ………タウン…)


「!?」


すると少し肌が痺れる感じ?に背後から急に違和感を覚え、振り返った自分の後ろに突如現れた老婆の霊。茶系の地味な格好をした小柄な方でしたが、サラリーマン風の霊よりはハッキリと見えており。その両手はだらりと垂れ下がり、腕一本程度の近距離で此方をじぃ〜っと見ていたのです。


「ひゃあ!?」


そんなに寄って来られても、俺はアンタなんかに一切興味は無からな!?で、同じくらい怖い存在の妻ならもう間に合ってますんで!!


もう逃げの一手。後ろ向きに少しずつジリジリと歩き始めます…

それが見えない人からすれば自分ケイジは、かなり滑稽な動きをしている様に見えるでしょう…。でも、こっちは恐怖のあまりリアルに心臓がマシンガンみたく「ドドドドド…」って脈打ちしているのです…


(バタンッ!…ブォーン…)


もう完全に意識外へと吹き飛ばしたサラリーマン風の霊。それよりも、目と目で見つめ合ったハッキリと見える老婆の方が超ヤバくて…。自分ケイジは一気に車へと乗り込み、その場から逃げ去りました…


「も、もう″あそこ″に車を絶対停めないっ…」


自分の経験上の話ですが…公園には彷徨える霊が多く存在すると思われます…。特に有名な大型公園の歩道から逸れた奥まった自殺の名所なんて…、そりゃあもう…ゾクゾクっと…。え?…何故か?それは自分自身あなたさまが現場へ行って恐怖の悪寒、オカンを実体験してみて下さいませ…。怖いよぉ…、チーン…


「なんて日だぁ…」


やっと全ての配達を終え夜の会社へと戻った自分。

工場で働く人たちよりも帰りが遅くなる為、建物内は真っ暗になっていました。

今日は例の霊の霊の例の…動揺…しつこい。霊とシンクロしてしまった恐怖を引き摺ったまま、この真っ暗な職場へと″一人で戻る″のはとても抵抗があります…。だって、会社ここにも落武者の霊等がいるのですから…


(ガチャ…、パチ、パチ、パチ…)


素早く、手当たり次第に職場の電気を付けまくる自分ケイジ

え?経費節約…?フッ…、それがどーした?だって僕、怖いんだもん…泣

そして倉庫内に駐車してある自家用車と社用車とを素早く入れ替えた後、順に全ての電気を消しました。良かった、″今日は″何も起きなかった…


(カチャン…)


……とはならず。


「ひょわ!?」


最後に消灯した事務所内で。

その落下音から推測するに、テープカッター付きのガムテープが床に落ちたのだと推察しました…。これについては怖くて未確認でしたが、同様の現象は普段から日常的に起こりうるポルターガイスト的な職場でしたから…

取り敢えず扉は「バタン!」セキュリティカードを「シュッ」…、鍵も「ガチャリ」

…と掛けて、一目散にマイカーへと乗り込みました。


「ふう…」


しかし、そこで再び…


(ゾッ…)


確か、あの老婆れいは恨めしそうに此方をみていた気がします。あの歳でホント元気だな…(違)

まさか…持ち帰ってしまったのでしょうか?やたらゾクゾクと寒気もするし…、霊特有の雰囲気がヒシヒシとその場に伝わってきます。


(ブォーン…)


こんな時はさっさと家へ帰るに限る。怖がり…と言われようが逃げるが勝ち。家にはもっと怖い鬼…いえ…、や、優しそうな?嫁様が待っていますから…。多分、妻を見れば霊の方が怖がって逃げていく事でしょう…

って、やっぱり他力本願か…


帰り道は車通りが多く明るい国道なので、安心して運転していたのですが。そんな車内でまさかの…


(ゾッ…、ゾゾッ…)


「!?」


ふと振り向いた助手席側…

まさかの予想していたあの老婆では無く、もう一人いた例のサラリーマン風の男性が乗っていたのです。いや、乗っていた…のではなく…、宙に浮きながら自分ケイジの顔を目と鼻の先でジッと此方を眺めていました…


「!?」


(ププー…)


あまりに驚き、腕が勝手に当たりクラクションを鳴らしてしまい。慌てて車を路肩に寄せ急停車させます。そしてもう一度見直したのですが、彼は何処へやらと消えていて…、いや、今は見えないだけなのかもしれません…


「こ、これ…、絶対あかんやつやん…」


素の関西弁…

これが完全に″あぁ、持ち帰ってしまった…″と自覚する瞬間でもありました…。この後の対策は車内ライトを全部つけ、カーステの音楽を大音量で聴きながら、全ての窓を全開にして帰ります。

これの効果有る無しは自分には分かりません。でも恐怖がある程度紛れるのは事実です。おまけに近所迷惑になるのも事実です。

そしてこの頃の自分はまだ若く、霊に対する対処法を確立していない時期でもありました。要は最寄りの神社へとお祓いしに行く事に。別段、身体が重くなったりの違和感は無かったのですが。これからの生活上での遭遇が怖いからお祓いを選択したのです…


そしてお祓い後。家へ帰ると…


「何かボー…とする」


感冒?顔や体がやたらと熱く感じてしまいます。まさか…


「祓ったのに…まだいるのか?」


よっぽどしつこいのか、この霊ばかりは…。あとは数珠を持ったり、塩を盛ったり、嫁に請求書を持たされたり…


「いっ、くしゅん!!」


その後、絶不調の原因は実はインフルエンザにかかっていたからという……。なんてオチだ…。それからは部屋で怪奇現象や変な違和感等も無く。ただ、寒気と感冒を相手に数日間戦う事になってしまいました。

取り敢えず初日以降、そのサラリーマン風の霊は全く見えなくなりましたが…

今なら別話でも書いていましたが、自分で塩タオル除霊とか肩をバシバシ叩きでも結構効果が有りますのでオススメ。出費はなんとか抑えています…





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