七ノ怪 幽体離脱とは?
これは自分が高校生の頃のお話です。
他者の色々な体験談等からも『幽体離脱』という現象は一概には説明できない思うのですが、まさに個人個人に多種多様。様々な幽体離脱情報がネット世界を錯綜しています。そんな中、今にも先にも一度だけ体験したこの謎の怪奇現象…
恥ずかしながら後日、ネットサーフィンしながら書かれている幽体離脱方法を試行錯誤し色々と試してみましたが、全てその過程で普通に爆睡に至ってしまいまい…
『ぐー、ぐー、ぐー…ちょき、ぱぁ〜…』
よって、その体験後から現在に至るまで、残念ながら二度目の幽体離脱はまだ成功してません。
そして今回の話は、その一回だけの体験談へと移りますーー
かの生涯において、回数が二桁に及ぶ引っ越し三昧な自分。いっそ三桁を狙ってみるか!?
その時は偶々自分の部屋が有りましたが、二畳ほどで狭い、狭い、超狭い。あ、実は物置を改造して部屋にしていたからです…。だから横に箪笥を置けば、″ギュギュッ″っと、まるでホルマリン漬けの死体が寝ているみたいでしたから。
…って、すいません、嘘ついてました。ネタとなる“ソレ”を見た事はないです、はい…
そして兄弟である次男、タメ兄は世間で言うところの、すぐに″キレる″タイプの人間でした。先日も部屋から500円が無くなったとかなんとか、母親に「あー、腹が立つ!!」と、当たり散らしていたのです。はぁ…、怒るにしても金額がセコ過ぎないか…?
そして自分は部屋に入り宿題も終わらせ、そんなこんなでやっとこさホッと一息つきました。しかし…、またまた隣の部屋からタメ兄の怒鳴り声が嫌でも耳へと聞こえてきます…
「俺の部屋の横に怪しい奴がおるからなぁ〜!あ〜、鬱陶しいっ!」
と、兄は横暴にそう声を荒げる始末。十分に聞こえているよ?あ、遠回しに名指しじゃないが、もう俺の事を言ってるんだと分かるように丁寧に怒鳴ってくれていたのか?それは、どうもありがとう。
(はぁ…。いつもブチギレたり、理不尽な八つ当たりばかりしてるから…。そんなだから、タメ兄が車を止めている駐車場辺りで知らない誰かと喧嘩した後。恨まれたその誰かから、夜中にマイカーの窓を全て割られる事になるんだよ?)
と、心の中で格好良く言い返す自分。
ホントこの人に関わり合うとロクな事が無い。それに兄の金が無くなった日は、俺の方が家に帰ってくるの遅かったですからぁーっ、ざんねーんっ!
すると、ガラガラピシャ!とタメ兄の部屋の扉が開いたかと思ったら。そう言ってるそばから自分の部屋のドアが勢いよく開き、タメ兄が乱入してきたのです。
だから部屋が狭いんだって、何故無理矢理入ってくるかなぁ…
「お前だろっ、返せよっ!」
「はぁ…、違うけど?証拠は?」
「お前は部屋が近いだろっ!」
『部屋が近いから?』すんごい理由だな。
そんな小銭、こんな酷い文句言われ、八つ当たりされるくらいならタダであげようか?それに名誉毀損、不法侵入諸々、本気で法律とか勉強した方がいいんじゃないですか?…と、やはり心の中で格好良く言い返す自分…
「酒飲み過ぎたとかで、勘違いしてるんじゃない?」
「なんやとぉっっ!!」
そこで、ここぞとばかりに自分の胸ぐらを掴み右手を振り上げたタメ兄。そんなアタオカな兄へ、自分は冷静に…
「その日は部活後、友達の誕生会にそのまま行ったよ?帰ってきたのもアンタより、ず〜っと後。よーく思い出して下さい。それでどーやって盗むの?友達や母さんに確認してもらっても同じ事を言うと思うけど?はぁ…、もういい?」
「ぐっ…」
ぐうの音も出ないタメ兄はクラッシュされたかの如く顰めっ面。小さくブツブツ言い、扉を叩きつける様に閉めながら自分の部屋から出て行きました。
自分が悪いのに俺の部屋のドアに八つ当たりなんて御門違いだ。その上、謝罪すら無いし。恐らく酒癖の悪い兄の勘違いだと思いますが、彼は他人や近所さん、はたまた家族全員が認める超″癇癪持ち″でした…
それに今現在もそうですが、もうこれ以上、兄とは一切関わり合いたくないのです…
「あーっ、くそっ!何か腹が立つっ!!」
兄は連日こんな調子だから、こっちの呆れ返りと脱力感がハンパない…
…と、その時でした。自分は普段からの疲れも相まって、ふわぁっと身体が痺れだし。やがて顔は下向き加減、意識がフッ…と遠退き、ふらふらっとバックで部屋の片隅へと下がった自分。
そのまま壁を背に、″ストン″とその場へ座り込んでしまうのです。
気を失ったのか?いや、違う…。明らかに自分の意識があるのですが、その視点が少しおかしいのです…
そう。今、見ている自分の視界には…
(誰かいる…)
なんと座り込んでる自分の頭上へと、視界が飛んでいるじゃありませんか。
部屋の隅っこの天井辺りから、真下にいる自分を眺めている?…とでも言えば分かり易いでしょうか?
そしてこの経験で一つ分かった事があります。
″霊体には脳が無い所為か、その場をただボーッと眺め続ける事しかできない″のです。誰が誰とも認識することができず、ただひたすら座り込んでる自分の頭部を見つめているだけで…
(……。)
あーだ、こーだと考える事なんて一切出来ませんでした。
ただただ、その視線の先を見続け、時間の境界線も分からない世界でホケ〜っと場を眺めながら、ゆっくり時だけが過ぎてゆき…
(バンッ!!)
「あー、鬱陶しいっ!腹が立っ!!」
…と。そこで、突然テーブルか何かを叩きつけながら再び怒り狂う兄の声が…。いや…、本当に気が狂ってる気がしないでもない…
するとその怒鳴り声が聞こえた瞬間。急に視界が頭上からスッ…と、座り込んでいる自分の体へと戻りました。
まるでビデオ編集で繋げたかの如く、一瞬で見えていた景色がガラリと変化したのです。
要は頭上にあった視界の位置が猫背で屈み込み、自分の股間をずっと眺めていた元の身体へと戻ったのです。目覚めはもっと良い物を見たかったですが…
やがて遅れ気味な思考も徐々に追いついてきて、次第に回復してくると…
「え?え?何あれ?さっきまでのアレは一体…?」
驚くというより、この摩訶不思議な現象に呆気にとられてしまいます。しかし手足や身体に多少の痺れが残っており、それを気にして身体を摩ろうとした矢先に
「ホンマ、鬱陶しいなぁっ!くそっ!」
(ガシャンッ!)
今度は何かを壁に投げつけた音と共に、兄は再びそう怒鳴っていました。しかもこの後も、よく似た同系の遠吠えを何度も叫んでいましたが…
『八つ当たりしても物は反撃して来ないからな?』と心の中でニヤリ。
取り敢えず触らぬ何やらに祟り無し?黙って無視し続けました。でも、自分はこの時、とても貴重な体験をさせてもらったと思います。
『意識や思念が飛ぶ?』とでも言えばいいのでしょうか?自分はこれが『幽体離脱』だと思うのですが…、そんな離脱中?は考える事がなんて一切出来ず、ただ眺めているだけでした。
そしてこの話はタメ兄にはしていません。またトラブルの引き金にでもなったら大変だから。ひょっとしたら、メディアやSNS上で簡単に幽体離脱出来ると語ってる方々は、本当に色々考えたり何かの悪さをしたり、はたまた好きな場所へ移動したり出来るのでしょうか??(驚)
私個人の体験からの意見ですが『幽体で…、そんな思念体で、あれこれ思考を持つのは不可能』な気がします。
そして『強烈な死に際に、その思念が現場に残ってしまう』のが”幽霊発生の原理”だとも思っていたりします。
まぁ、この答えを自分が死ぬまでに解き明かせれば幸いなのですが、今回のお話は今まで生きてきた中で凄く…一番気になる、まさに『”自己心霊現象であろう”』体験談でした。
完。




