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六十五ノ怪 鬼祖母2

やや夏寄りな春の出来事。

花粉が飛び交う嫌な季節だったり。でも先に雨が降ったお陰か、空気は澄んでおり爽やかで清々しい朝を迎える事が出来ました。そんな最高な日に、小学生の自分はまだ夢見心地でいて…ーー





(コチョコチョ、コチョコチョコチョ…)


「……。」


くるりと、まるで蓑虫ミノムシみたく布団に包まり爆睡中の自分ケイジ。しかし布団に入って視界は真っ暗けっけな就寝中なのに、足元にやたら風がスースーと入ってきます…


特に、足の裏へ無茶苦茶違和感があるんだけど…


…と。そんな感じに、ゆっくりと意識が目覚めていくのです…

んん?足の方の上布団が捲れ上がってる気がしないでもない…。何故だろう…?


(コチョコチョ、コチョコチョ…)


「……。」


己が意識は頭部から背筋を通過し、やがてお尻と脹脛を経て、更にその下側、その足の裏へと全集中する事になってしまいます。

しかも、ちょいと″こしょばい″…。これは「こそばゆい」と同意。何かが足の裏を動き回ってる…のかな?

こしょばくて、足を出来もしないグーで必死に堪えようとしていましたが…

やがて意識が完全に目覚めてしまった自分は、面倒でも上半身をのそりと起こし、足の方をじぃ〜っと見てみました…


(コチョ……)


「………婆ちゃん。何してるの…?」


「……ケイジちゃん早く起きやぁ…、もう学校に行く時間やでぇ…?」


あまりの眠たさに糸より細い細目、その極限に近い意識と薄っすらとした視界の先。

骨と皮のみの細い骸骨みたいな指で、ティッシュを細く紐状にしたモノを握りしめ、それで自分の足の裏を面白おかしくコチョコチョしている齢七十代。古希を過ぎた父方の祖母の姿を捉えました…

部屋が無いから自分ケイジ祖母コレと一緒に寝るしかなくて。しかもこの攻撃は幼少期から中学生になるまで続きます。

いいい加減「〜ちゃん」付けも止めてほしいな…。友達がいる時にそう呼ばれて何度か笑い者になった記憶も…

…と、こんな風に。最高の朝がもっさりとした最悪な朝へと変貌した瞬間でもありました。


「……あのさ?ばあちゃん。いい加減こそばすの止めてくれない?ボクもう起きてるし…」


(コチョコチョコチョコチョ…)


今、会話している相手は珍獣?はたまた宇宙人なのでしょうか?全く言葉が通じない…

よし、いっちょ英語で話してみるか?…いや…、自分の語学レベルは園児以下だし…。じゃあ英語それをノミネートする方がおかしいな…。あ、ノミネートは英語か…、いやいや…。…で、どうするんだ自分ケイジ?…ってか俺、日本人なのに国語が苦手だった様な気がしないでもない…


「ばあちゃんっ。ボク、おーきーたぁーかぁーらぁーっ。おっけぇ??」


(コチョコチョコチョコチョ…)


「……。」


(コチョコチョコチョコチョ…)


「はぁ、ボケてる…」


「誰がボケとるんじゃっ!」


「ごめんなさい」


(コチョコチョコチョコチョ…)


「……。」


耳は遠いが、悪口はちゃんと聞こえるらしい…。まるでリアル新◯劇だ…

取り敢えず寝ぼけ眼。深呼吸し出来る限り心を落ち着かせ、少し音量をアップしながら…


「ばあちゃんっ、今日は日曜日だからさっ、学校は休みっ。悪いけどハッキリ言って迷惑っ。もう一回寝かせてくれない?」


(コチョコチョ…コチョ??)


ブッ壊れた機械の様に動いていた祖母の悪戯が、やっとこさ停止しました。

やっとこの宇宙人と交信かいわが通じのか…?凄いぞ自分ケイジ。これで、何か宇宙の真理を少し齧った気がしないでもない。

そして祖母の手が離れた隙を見て、捲り上げられた布団をパッパッと元に戻し。再び″バタンキュー″…。家内安全、円満具足、大安吉日…という事で再度就寝。

これでぐっすりと眠れる……


……


…筈だったのですが、まさに期待通り?


(コチョコチョコチョコチョ…)


一気に血圧急上昇。「ピキッ」っと、左こめかみ辺りで血管が張り詰める様な音が。確かに俺はさっき「今日は日曜日だから寝かせて」って言ったよな…?言ってたよね?もしかして、ばあちゃんじゃなく俺がボケてるのか?


(がばっ…)


再度、布団から上半身を起こした自分ケイジ。さっきと全く同じ光景が目の前に広がっていました…

これは、まさにデジャヴ…


(コチョコチョコチョコチョ…)


「……。」


自分はこの祖母モンスター相手に、何をこと細かく説明しても無駄&無限ループに陥ると判断。


親父よ…。頼むからさ…。わけのわからん何処ぞの愛人おんなとじゃなく、この鬼祖母ははおやと一緒に、消息不明になってくれないか…?


…と、脳内で愚痴る自分ケイジ

…で。このモンスターと果てしなき闘い&堂々巡りもしたくないし、仕方なく起きる事に…


「………婆ちゃん、おはよう」


「ケイジちゃん。早く起きや、学校やでぇ〜?」


「今日は日曜日だからさ?学校は休みなんだよ…」


「はぁ、そうなんか?おかしいなぁ?」


いや″おかしいのは祖母あなた″です…、はい、確実に。

ビッグバン級アルツハイマーの祖母には一切勝てそうにありません。しかしまだ半分寝たままの自分がいて


(カサッ…、カサカサカサッ…)


「…??」


…と、その時でした。自分の視界外へ、あの台所の闇に潜むと恐れられている全世界の嫌われ者。漆黒の″悪魔アレ″がカサカサと畳の上へと現れたのです…


(ピー、ピピピッ…カシャ!!)


″ターゲットロックオン!″


自分は全く″その存在″に気付いていませんでした。

しかし…、祖母が横で叫び声を上げ、その骸骨の様な右手を天高く掲げたかと思えば。それは止まる事を知らず、一切の躊躇無く、その手を稲妻の如く一気に畳へと振り下ろしたのです。


『キェエエエッ!!!』


(バッチーンッ!!プチュ!!)


「な、何っ!?」


謎の奇声と共に畳へと炸裂した祖母の掌…

同時に、普段聞き慣れない何か潰れた様な薄気味悪い異音が自分の耳へと飛び込んできました…

状況を把握していない自分は、一体何が起きたのか全く理解出来ていません。

結果として、祖母ビンタのあまりの破壊力に″悪魔ソレ″は中身が飛び″自主規制ピーッ″な状態になっていて。その時にソレ叩いた祖母の手は、思いっ切り素手だったのです…


「ブ、ブラックデビル…!?」


自分が寝ていた布団の真横。

祖母のその叩きつけた手の下には、ヤツの亡骸が無惨にも砕け散っていて。それが自分ケイジの視界へ、まざまざと見せつけてくるのです…

ばあちゃん…。早朝からさ…、俺になんてモノを見せてくれるんだよ…

そして祖母はその獲物をハンティングした満足感からか、満面の笑みを浮かべながら軽く両手を″パンッ、パンッ″と叩きました。

そしてすぐさま、室内のミニテーブルに置いてあった果物ナイフに手をかけたのです。ま、まさか今度は″ソレ″で自分オレを…!?ひぇ〜…


「……!?」


ビビりながらも、自分はやっぱり寝惚けまなこ。しじみみたいになった、そのか細い眼を必死に見開きながら両手を前に出し、バカみたく身構えていました…


しかし…


あれ…?

祖母はまるで何事も無かった様に、仏壇にお供えしていた林檎を手に取り、その皮を剥き始めたのです…


「ケイジちゃん。美味しい林檎食べやぁ…?」


「!!!?」


何かの食べ残し?…が、こびり付いた薄汚れた皿に、皮付きのまま雑に切り分けられた林檎たち。しかも、部分部分に林檎内からは絶対排出されない謎の自主規制ピーが付着しています…

いや、″自主規制ピー″か…!?…って、食事中だった読者様…、本当に申し訳ありません…


「ば、ばあちゃん…。せっ、せっかく剥いてくれたけど…、ごめん。いらな…いや、絶対にっ、いらないっ…」


「何や、せーないなぁ?」


″せーない″は「甲斐がない」と同意…

いや、誰が見ても無理だよ?100%ノーサンキューだよ??

…と、思った傍から。目の前でその林檎をムシャムシャと口へと運び実食する祖母…


(うげっ……!?)


朝一から。まだ物心が不安定な幼い自分へのショッキング映像のオンパレード。そして祖母のあまりの悍ましき行為を目の当たりにした自分は絶句、吐き気を催し逃げる様に部屋を飛び出しました…


(ひえ〜…、南無三…)


その後。絶対にっ、多分……恐らく…誰も来ないであろう薄暗い廊下の突き当たりに座椅子を置き、二度寝する事にした自分。

だってまだ無茶苦茶眠いし…。そして体には、自分専用のタオルケット一枚を掛けて準備万端。よしっ!


「ボクには、寝る″権利″があるっ!」


(ぐー、ぐー…)


「権利」の部分だけアクセント高めに叫び。後は動物的本能に身を委ね、自分ケイジは天に召されるかの如く意識が闇に落ちていきました。

これで女の子たちにモテモテだ、しかも百円拾えるし、大好きなコロッケで体が埋もれる夢とか見てやるっ。ウホッ……。ってか、夢まで小物だな自分コイツは……


…しかし、でもしかし…


(べちゃ…)


「…!?」


それは束の間の休息でしかありませんでした。

意識はとっくに目覚めてますが、どんな酷い目に遭っても絶対に目を開けたくない自分が″座椅子そこ″で寝ています。

しかし異様な湿気と鼻をつく強烈な生乾きの臭い、何故か頭部から滴り落ちる水滴が不快且つ強烈なハーモニーを奏でてくれていて…


(べちゃ、べちゃ…)


「…って、廊下で寝てて。何で髪がベトベトに濡れるんだよっ!!」


そこで自分ケイジは、しじみまなこをカッ!と見開きました。


「……。」


おはよう御座います、お婆ちゃん。その手には何を持っているの?酷く薄汚れた濡れ雑巾が握られているよね?あー、それでボクの頭を拭いてくれたんだ。本当にありがとう…


「…て、なるかーいっ!!」


「早く起きやケイジちゃん、せっかく寝癖直してあげたかんやから。これで学校に行く時、恥か掻かんでええやろ?うひゃひゃひゃ…」


「……。」


″ベタベタ、ツーン、オマケにぷ〜ん″…と、かなり異臭を放つマイヘアー。とにかく今は、その雑巾の所為ですんごく生臭くて吐きそうで…

祖母は自分が寝ていると、何度注意してもこれをやってくるのです。だから通学前に何度もシャワーを浴びる羽目になってしまいました…

しかもこれらを、あの寒い真冬にやられたら殺意しか湧かなくて…


(シャー…)


今回はオッサンじゃなく、うら若き小学生で可愛い男の子のシャワーシーン。ドキドキ……って、わざわざ書かなくていいよな?これ…


「ふぅ…」


さっと髪を洗い終えバスタオルで頭を拭きながら風呂を出ると同時。獲物ケイジ待ちなのか。廊下の突き当たりには、頼まれてもいないのに祖母が突っ立ったままでした。

そしてジーっと廊下の奥の壁を見つめていかと思えば、その壁側に向かって何度もお辞儀していたり…


「……。」


連想するに「ばあちゃん、何してるの?」と聞くと「ほら、ここにお客様がいらっしゃるやろ?だからワシも頭を下げてるんじゃ…」と反撃かえされるは明白。

マンネリ化したパターンでも真っ暗な真夜中に″コレ″をやられたら、まるで幽霊を連想してしまいホント怖い怖い、無茶苦茶怖い。

よって、すぐさま体を反転しクレイジー祖母を完全放置。すぐさま台所へ朝ごはんを食べに行く事にしたのです。


(メシ、メシ…はぅっ!?)


ですが…、そこにはハブとマングースみたく。自分ケイジの天敵が先に食事していて…


(タッ、タメ兄が……いる…)


手慣れた感じに、全く音を立てず台所手前からコソコソと逃げる様に立ち去る自分。

更に廊下へと戻ると、今度は突き当たりの壁に向かって祖母が手を合わせながら、お祈りしていました。もしかして怨霊?悪霊?もしくは祖母あなたが崇拝する破壊神かな…?


「……。」


その不気味な祖母に気取られぬよう、そーっと部屋へ戻ると。自分の枕元へ″あのデンジャラスリンゴ″が「食べてね?テヘペロッ」…って感じに置かれていました…

祖母はどうにかして、あの殺人リンゴを自分ケイジに食べさせたかったのでしょうか…?

すると騒々しい物音と共に、次男は食事を終えたのか玄関から出掛けたようで…


「行ってらっしゃ〜い…」


(ガチャ……バタン!)


そう、タメ兄を玄関から見送った母の声が聞こえてきました。天敵である次男が出掛けてくれて密かに喜んでいる自分。しかし、そのお見送りをしていた大嫌いな息子の嫁の声を聞いた姑である祖母が、何故か過剰反応し…


「こっ、このおんなばかりは、ワシにこの家から出て行けって言うんかいっ!!」


「え、ええっ!?」


…と。どう聞き違えたらそう聞こえるのか?祖母は半狂乱でそう叫びながら、年齢からは想像出来ないスピードで廊下の目の前を一気に通過。そのまま玄関にいた母へと掴み掛かったのです。

一体「行ってらっしゃい」の何処が彼女そぼ逆鱗スイッチに触れてしまったのでしょうか?


「お、お義母さん。わたし、そんな事言ってませんよ…?だから怒らないで下さい…」


「誰が怒ってるんじゃあぁ!!人を気が短い女みたいに言いよってからにぃっ!!!ーーうんたらかんたら…」


いや、ばあちゃん。アンタはすっごい気が短いよ…?

一生懸命説き伏せようとしても、重度のアルツハイマー祖母に何を言っても裏目に出るかと…

そしてその祖母のお陰でシャワーも浴びる事になり、すっかり目が覚めてしまった自分ケイジ。軽くため息一つ、この争いに巻き込まれない様、廊下から台所へ静かに向かおうとすると…


「あ、ケイジ?ごはん出来て…痛たたっ…」


「う、うん、ありがとう…」


「こ、このヨメばかりわっ!!先にっ、別の奴にメシ食わせて。このワシには食わさん気かぁっ!!キイェエエエ!!」


「痛たたっ…、お義母さん。さっき一番でご飯食べたでっ、痛っ、たたた…でしょ…?」


自分は、そのバトルに対して一切無関心。少しも振り返る事も無く台所の椅子へ静かに着席。そして用意されていた食事に手をつけます。


「お義母さん、やめて…下さいっ…」


「こんの泥棒猫めっ!!お前は女中以下じゃあっ、家の女房としてやる気も無いじゃろしっ、息子がこっただ家へ帰ってこなくなってしまうんじゃあ!!ーーうんたらかんたら…」


祖母は必死に何か物凄い暴言を吐いている様ですが。いまいち言葉が古過ぎて、その怒り具合が全く伝わってきません…

あ、″息子″とは、もちろんあの″最低最悪ぐーたら浪費親父″の事です。まさにこの親にしてこの子有りです、はい。


「わたしは他人に恥ないくらい、家事はちゃんとこなしているつもりです。それに…、お金は全部ウチだんながずっと持っていて。家族を放ったらかしに、他の女性ひとと何処かで一緒に住んでるでしょ…?これも私が悪いのですか??」


「何ぃっっ!!男はなっ、金を使わな育たんのじゃ!このヨメが、甲斐性が無いばかりにっ!息子は帰って来ないんじゃろがっ!!キィー!」


祖母曰く「″家族以外の愛人を養い、サラ金で金を借りまくり、散財もしまくり、他人の金まで浪費するク◯人間が真っ当な人間″」との事。やっぱり会話は意味不明で泥沼化し、まさに平行一直線でした…


「わたしは家族の面倒もちゃんと見ています。それに、お義母さんは私たちが結婚してから、一日中テレビを見てるだけで家事を手伝ってくれた事なんて一度も無いじゃないですか?お金を無駄遣いするのはいつもあのだんなだけ…。更に他人や親戚のお金まで使い込んで、皆に迷惑掛けてるんですよ?それはお義母さんの教えの責任ですからねっ?」


「ぐぅ〜…。言わせておけばぁ〜!今にみとけよぉ〜…この女狐めぇ〜…」


…壮絶な押し問答。大嫌いな嫁である母に対してだけはアルツハイマーが何処かへ飛んでいく様で…

もう、耳元では某サスペンス劇場のテーマソングが鳴りっ放し状態です…

ん?もしかして、これはリアル昼ドラだったのか?

…まぁそのドラマより、もっとエグいやり取りがあったのですが、これでも軽めに書いているのです。

すると、スタスタと食事中の自分ケイジの元にその祖母がやって来て…


「ケイジちゃん…ちょっと、手ぇ〜出し」


「ふぐっ?んっ」


空いてる左手をサッっと差し出す自分。祖母はその手にキラリと光る百円玉を乗せてきて


「アンタはな?将来、あんな母親オンナの面倒を見るんやないでっ、ウチの面倒だけ見いや?そしたらまた百円コレやるさかいな?」


「もぐもぐもぐ…、わふぁった。もぐもぐ…」


そう言って、やっと気が済んだのか。祖母はさっさと自分の部屋へと帰って行きました。すると、それを見ていた母親は真っ赤な顔をして…


「ケイジ、あなたっ…!」


…と、怒鳴られましたが。


「あ、母さん。ふぁい、コレ。もぐもぐ…ごくり…」


「え?」


「どうせあんなの、ボケてる婆ちゃんはすぐ忘れるよ。あ、コレ、自分はいらないから。少ないけど家計の足しにして」


と、いつも平常心。そう言うだけ言って、祖母から貰った百円を母へ手渡し。残りのオカズを喉へとかき込みました。


(ズズズ…)


「う、ううぅ…、ケイジ…、いつもごめんね…」


横で泣き噦る母親。こんな辛く悲しいシーンを何度見てきた事でしょうか?全てはあの最低最悪一卵性親子…。鬼祖母と、そのク◯息子おやじが悪いのです。


「母さん…。早く父ちゃんと離婚したら?」


「こらっ!小さな子供がそんな滅多な事、言うもんじゃありませんっ…」


「じゃあ、ボクの言ってる事は間違ってるの?だって、いつも母さん泣いてるし家には常に金が無いし、あのばあちゃんがいるし、ロクな事無いよ?」


「……お、お義母さんが家にいるから最低限の生活費は入れてくれてるの。それにトラブルを起こす上二人の兄弟の面倒をみながら子供四人を連れて他の場所で生活するなんて…わたし一人には絶対無理よ…」


「……そっか…」


本人へ言った事は無いのですが。母親が祖母や親父の事で酷く泣き噦る時、必ずと言っていいほど自分ケイジの背筋に悪寒が走り。全身には鳥肌が立ちました。早い話が、霊体験時恒例の「うわっ。背筋がゾッとしたぁ」です。母は幽霊じゃないから原因は全く不明ですが。

そして決して母は表情には見せないのですが、恨みや呪いといったモノを無自覚で体内から放出していたのかもしれません…。まだ幼い自分にとっては日常的な出来事。家族だし、この怪奇現象に関しては全く違和感が無かったのです。


「…でも、あなたが成人し、独立したら…。母さん、家を出しようかしら?」


「うん。それがいいと思う」


母と、そんな会話をしたのを今でも覚えています。結果として家族の中で真っ先に家出したのは自分ケイジでしたが…

独立して社会人となってからも、母から祖母や父親に対しての恨み辛みの電話が何度も掛かってくるので。その都度、その都度、離婚を勧めていましたが…

でもこの時、自分の忠告通り母親とナガ兄が一緒に家を出ていたら、恐らく二人は今でも元気よく生活していたと思います。

九十過ぎまで長生きし過ぎた諸悪の根源たる鬼祖母の面倒をずっと見さされた挙げ句。自分勝手な浪費父親とのストレスから進行性の癌になり亡くなってしまった実の母。

同じく極悪な父親が勝手にブランド物を質屋に入れられたり、クレジットカードを悪用され多額の借金を背負わされたナガ兄は。そのストレスから逃れようと医者に止められていた酒を浴びる様に飲んでしまう事になりました。

後日、母親を追うように肝硬変で亡くなってしまいますが、人の生き様は時として残酷に終わる事もあるのです…


まさに、生と死の境界線を人為的…故意に破壊されるケースです…


いや、この世とあの世が存在するのなら…?…と考えるのは亡き人を想う気持ちから出た発想では?そう考えさせられませんか?

よくよく考えると外国では多種多様、″死のあり方″が有り、日本と全く異る考え方なのです。日本にはクリスチャンもいますが、大半が仏教でしょう。法事に至っては多額の現金が飛び交う事もしばしば…

大金を使い盛大にすれば故人があの世で路頭に迷わない?安心して冥土に逝ける?

その理論は強引且つ矛盾だらけな上、それらを実証、証明出来る人なんて存在しませんから。

だって、死人に口無し。

現世での金の亡者たちが好き勝手に″死後の理由″を決めても誰も分かりはしませんからね。盛大な葬式なんて、金に目が眩んだ者の考える錬金カラクリではないでしょうか?


僕なら、そんな誰かも分からない他人さんに大金取られて色々してもらうより″生きてる間に家族から色々としてもらったり、してあげたい″と思いますね。


埋葬後に墓前でお祭り騒ぎをする国も多々あるようで、沖縄もそうだったと思います。そっちのが絶対に楽しいんじゃないでしょうか?

だから自分は前もって妻や子供たちに頼んでいるのです。墓はいらないから低料金の火葬を済ませたら″ある場所″へ遺骨を◯◯してくれと。この内容を見て不快に思われた方がいたら申し訳ないです。作者の戯言だと思ってスルーして下さい。


そして自分ケイジの考えは虫や動植物の様な、生きとし生けるもの、全ての生物を含む地球規模での考え方で。もし範囲を宇宙に広げれば、高度な文明を持つ宇宙人もいて…、もっともっと新たなる発見が…

考えれば考えるほど人間はちっぽけな存在に…

まぁ、自分は「お前はカスだ!」とか「このクズ野朗っ!」とか罵られるのがご褒美だったりしますが…(違)

…で、そんな中なら自分は更にちっぽけな存在となるのですが…

しかし霊感が弱くても、もっともっと人間の常識を超えた怪奇、心霊現象の核心。その謎に触れれば幸いかと。それでいつか理解、解明する事が出来れば。自由な思念体で物理法則を無視出来る存在になったり。今は亡き母やナガ兄に出会えたり。宇宙人が乗る宇宙船の様な、火力、電力を必要としない″新しい動力源″が見つかったりするのかもしれませんね。そして、いつか自由に空を飛びまわってみたいものです…


…って、ないない。やっぱりケイジって馬鹿で幼稚だな。…って、ケイジと園児エンジって似てないか…?レベル的にも幼くって、まさかオチがコレ?…って、全く落ちてない…まっ、いいか……お後がよろしい様で…。…って、全然よろしくないけど終わります…。泣…





完。

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