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六十二の怪 たけしくん

″たけしくん、たけしくん、次は何して遊ぼうか?″


山腹を利用した長さが50メートルはある緩やかな傾斜の鉄製滑り台


たけしくんは笑顔でそれを指差した


(にっこり…)


小学生の二人の遊びには暗黙のルールがある


″じゃあ僕が先に行くね″


たけしくんは必ず後に回る


経年劣化でかなり老朽化がすすむその滑り台


小さな手で両サイドの鉄枠を掴み、″漕ぐ″様に引かないと前へと進まない滑り台


″たけしくん、コレ、全然滑らないね?″


前を見たまま、ズルズルズルズル、スルスルスルスル


やがて滑り台の終点に着くと


(にっこり…)


でも、たけしくんは既に目の前に立っていた


次に彼はクルリ左へ向いたかと思ったら、遠くのブランコを指差す


″うん、行こう″


トコトコと走り、先にブランコに乗る自分


そしてやっと到着したたけしくんは、後からブランコに乗ってきたけど棒立ちのまま


ギーコ、ギーコ、ギーコ、ギーコ


″楽しいね?″


(にっこり…)


ずっと絶えない、まったりとした笑顔。


そんな彼はブランコに乗ったまま、馬乗り出来るバネ式パンダを指差した


″次はアレだね?″


遊ぶその遊具のりものに視線を振った、たけしくんの方へ再び振り向くと彼は既に消えていて、無人のブランコだけが虚しく静止していた


(……。)


″……?″


でも今度は遊具の方を見ると。たけしくんが既にその乗り物の横に立っていて、こちらへゆっくりと手招きしていた


″ごめんねっ″


遅れて遊具前へと駆け寄る自分


(にっこり…)


でも、たけしくんはやっぱり笑顔


でも、今回の遊具は一つ


でも、あのルールも一つ


″じゃあ僕が先に乗るね″


ギコギコ、ガッチャン、ギコギコ、ガッチャン


でもいつの間にか、たけしくんがいなくなってる事に気付く


自分は一分も経たない内に乗り物から飛び降り


″たけしくんっ、たけしくんっ″


彼の名を呼んでも返事が無い


でも、でも


ギコギコ、ガッチャン、ギコギコ、ガッチャン


いつの間にかたけしくんは、その揺れたままなの遊具に乗っていて


″たけしくん、いたんだ″


たけしくんを見つけてホッと一安心


でもその瞬間、ふと我に返った自分


どうして、一つも話さないたけしくんの名前が『たけしくん』だと分かったんだろう?


どうして、たけしくんが後から遊びに参加するというルールが有るんだろう?


(じゃり…)


そんな事を考えていると、急に何故か自分の口には砂利が入っていてそれを噛んでしまう


″ぺっ、ぺっ″


(にっこり…)


でも、そんなのお構い無しだ

たけしくんはいつも笑顔、そして遠くに見える木陰の砂場を次に指差した


ここの公園の砂場はちょっと大き目


でも、やっぱりたけしくんは先にそこへ着いていて


″はぁはぁはぁ、たけしくんは走るのが早いね?″


(にっこり…)


息も切らさず、絶えない笑顔で応えるたけしくん


″今度は、この砂場で何をしようか?″


(にっこり…)


聞いたけど、たけしくんの答えはやっぱり笑顔だけ


″じゃあ、砂のお山を作ろうか?″


(にっこり…)


同じ事の繰り返し。仕方無く自分は周囲の砂を手でかき集めてみたり


″よいしょ、よいしょ″


再びたけしくんの方を見ると「違う、違う」と言わんばかりに首を横に振っていた


でも、何故かその視線の意図が自分の心に伝わってきて


″もしかして…、穴掘りがしたいの?″


(にっこり…)


と、彼の考えを射抜いた様だ


″よいしょ、よいしょ″


何気に足元の砂を掘る自分


でも、たけしくんは再び首を横に振る


″じゃあ…、どこを掘るの?″


(……。)


やっぱり、たけしくんからの返事は無い


だから自分は適当に彼方此方を指差して


″ここ?…ここかい?…えっ、ここも違う?…ここかな…?…う〜ん、ここだっ!!″


最後に、ちょっと砂が山盛りになってる部分が目にとまり


(にっこり…)


″やった…!″


やっと大当たり


砂が少し山盛りになってる分、掘り返すのに手間が掛かるけど頑張って、頑張って、必死に掘り進めた


(じゃり…)


すると、何故か再び自分の口の中で砂利を噛む


″ぺっ、ぺっ…″


何故かな?何故だろう?あんなにゆっくり砂をかいていた筈なのに


どうして口の中に砂利が入ってしまうんだろう?


そして何気に見たたけしくんからは何故か笑顔が消えていて


何か沈み込む様な寂しい表情に


しかも早く砂を掘り返せとばかりに冷たい視線


ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ


どれだけ掘ったのだろう?すると自分の指先が


(カツンッ)


″痛っ″


ある固いものに当たってしまう


これは一体何だろうか?よく見ると白くて丸っこい大きな石だ


″たけしくんっ″


振り向くと、さっきよりま近くに立っているたけしくん


いや、顔と顔。少しでも動くと接触しそうな距離だ


『″ソレを…持ち上げて?ねぇ…早く…″』


そう、たけしくんが言った気がした。僕にはそれが分かる


″うん…″


口は動いてなくても彼の声が聞こえ、少し離れて、また笑顔に戻ったたけしくん


でも追い立てる様に


『早く…ねぇ、早く…』


″……?″


『早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く…』


″…!?″


物理的な枠を超えた動きで、たけしくんの顔が再び目前まで迫ってきた


それを避けようとめいいっぱい背骨をそらしたので、その白い石をスポッと引っこ抜き、その反動で砂場へ尻餅をついてしまった自分


(トスン…)


″石?これは軽っいし、お尻ついちゃった……!?″


その手にした″モノ″は異様に軽く


これは真っ白な石では無く、異様なくらい真っ白で綺麗な頭蓋骨だった


″…??″


その頭蓋骨の中には大量の砂利が詰まっていた


″べっ、ぺっ、また砂利が口の中に…″


もう、たけしくんは何処かに消えしまっていて


気付けば代わりに、たくさんの警察官が周囲を取り囲んでいた


今は何故か、周囲に張られたブルーシートで周りの木々が見えない


「可哀想に…」


そんな中、警察官の一人が誰かの白骨化した亡骸を見下ろし悲しげにそう呟いた


″…あのー…″


「たけしくん待ってろよ…、今″そこ″から出してやるからな…」


もう一人の警官がそう言った


″お巡りさん、すいません、お巡りさん…?″


自分の事を無視する警官に痺れを切らし、手を伸ばすも


(スーッ…)


すり抜けてしまい、呆気に取られる自分



『″君だよ、君がたけしくんだよ…″』



と、再び現れた″たけしくん″


″僕…、僕がたけし……くん?″


その瞬間。たけしくんが接近してきて自分と重なる様、フワァッと体に吸い込まれ


″…!?″


すると自分の体が消え失せ、まるで空気の様な見ているだけの存在になっていて


そこへ、ある警官二人の会話が聞こえてくる


聞きたくなかった、その会話内容


「犯人がここに死体たけしくんを埋めたって言ってたけどさ…?」


「ああ…」


「それが原因かはわからないけど。公園ここには″アレが出る″って噂があるらしいぞ…」


「も、もう止めてくれよ…」


「いや、だから聞けって。夜な夜な遊具がひとりでに動くらしいんだよ。『ギィー、ギィー』って、本当に怖いよな…?」


「あー、聞こえない、聞こえない…」


相方の警官は顔面蒼白、必死に両手で両耳を塞ぎます


………?


でも、この警官たちは一体何が怖いんだろう?…あれ?この人たちは一体誰なの…?


そもそも、ここにいる自分は誰なんだ…?


すると、いつの間にかブルーシートは何処へやらと消え失せ


遠くに見える鉄棒の横で″たけしくん″という名の友達が「こっち、こっち」と、手招きしていた


″あ、″たけしくん″待たせてごめんねっ″


(にっこり…)


″誰か他にも友達欲しいね…″


(にっこり…)


″もっと、もっと…″


(……。)


″誰か来たら誘いたいな…ずっと、ここで一緒に遊びたい…″


(……。)



″あ、あの子に声掛けてみようか…″



″ずっと…、永遠に…、一緒……″



″えへへ…″





ギィー、ギィー、ギィー………ーー





ーー糸冬



ご閲覧感謝感激、今回は特別編。

真実か否かは、あなたが″たけしくん″に直接聞くか、ご想像にお任せという事で…





完。

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