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五十六ノ怪 死の漂流

もう、助からない……



浜辺にいる人たちが、少しずつ、少しずつ、まるで米粒の様に小さくなっていく


海面から出ている幼く小柄な上半身、絶え間無く吹きつける強風。柔肌に酷く打ち付ける潮で流れに流され、徐々に陸が遠のき、浅瀬とは違う、その荒々しくも表情が豹変した海面は更に波が慄き立つ。それと共に涙と入り混じった潮を、顔から手で必死に拭う自分。そんな高波の海の中を漂流しているのです…


(″誰か助けて…″)


子供用の小さな浮き輪に、か細く短い両腕で必死にしがみつき。解決に至らないとわかっていても、幼く力の無い細い手足を無為にバタつかせます。

しかしいくら涙が出ても「助けて」の簡単な一声が喉から出ても悪魔の様な荒波がその叫びさえ掻き消してしまうのです…

今まさに、早過ぎる自分の人生の幕が下りようとしているのでした…



……今回は遠い昔。自分の身に起きた不思議な体験談を書かせていただきます…ーー



まだ世の中の仕組みというものを全く理解していない。自称「可愛らしい能天気な園児」…だった自分ケイジ

常時家庭は浪費のちちの所為で生活困窮。家賃滞納も重なり、仕方無く母親は大阪から伊勢に住む実の姉の所へお金を借りに行く事になってしまいました。

でも、そのお出掛け時のメンバーが超大問題だったのです…

母親とその三人の子供たち。なんてエグいチョイスだろう…。今回は自分の天敵である次男タメ兄と長女ワカ姉が一緒に来る羽目になったのです。タメ兄は六歳上、ワカ姉も三歳上…

特に常時、己が凶暴性を曝け出しているタメ兄が恐ろしくて恐ろしくて…


「おぃっ!ケイジッ!母さんにくっ付いてばかりじゃなく、頑張って一人で歩けやっ!オラァ!」


「そうや、そうや!この臆病ケイジッ!」


母親から引き剥がそうと自分ケイジの脹脛を蹴り、か細い弟の腕を母から力任せに引き剥がそうとするタメ兄。

更に声を上げて″そうだ、そうだ″と同調しながら便乗し、捲し立てまくるワカ姉。過去に腕を何度も脱臼させられていて、いつの間にか自分の肩は脱臼癖がついていました。このままだと、また肩が抜ける可能性が高いのです…


「いぎっ!い、痛いっ!!」


もう、こんなに痛いのは嫌だ…

この世に″神″は存在しないのか?いっぱい?たくさん?ぎょうさん?…いや、星の数ほどいるちっぽけな一生物を気にする、そんな都合の良い″モノ″など存在すら疑わしい…


………とか言いながら、本当に困ったら必死に神頼みする自分は置いといて…


(神様…たす…け…)


「コラ…、タメッ。あなたはお兄ちゃんでしょ?やめなさいっ。それとワカ、あなたも煽らないのっ」


そう″兄妹てんてき″に対し、優しく怒る母親。おお、神よ…


「ちっ!」


「はぁーい」


母ちゃん。頼むから自分ケイジが被害を受けた時みたく、タメ兄やワカ姉の腕を引っ張って脱臼させてやってくれ…

…とか心の中で叫んでると、タメ兄とワカ姉は殺す様な眼差しで自分を睨んできていました…


(ひょえ〜…)


「これっ…、二人とも…。はぁ…」


恐らく父親アレの所為で家庭はぐちゃぐちゃ。その影響からか、性格がひん曲がってしまっているこの二人きょうだい

ある意味、彼等も被害者なのですが…。でも第三者で何の落ち度も無い脆弱な自分に、いつも八つ当たりする加害者側に変貌するのはどうかと…


(きょ、今日も地獄の一日になるかも…?)


不思議と嫌な予感は的中するものです…

朝も早く、取り敢えずローカル電車の始発から家を出たマイ家族ファミリー御一行。今は祖母の面倒見の為、優しいナガ兄が家でお留守番に。

要は、今日は自分の逃げる退避場所が全く無いのです…。そして電車を乗り継ぎ、どれ程の時間が経過したでしょうか?長く長く電車に揺られ、やがて母親に手を引かれながら知らない駅で降りました。


(プシュー……)


まだまだ幼く無知な自分。

ホームと電車の溝がやたらと大きく感じ、怯えてしまっている小さな歩幅。何気に下から空や遠方を見上げると、見た事が無く、不安になる程の広大な風景。

その全ての視界にやたらチラホラ入り込む恐怖のタメ兄との相乗効果で、ただでさえ真っ白な自分の白髪が、アルビノの方以上に白くなってしまいそうです…

…って、そっちの方がストレスで白髪まみれの白黒斑らになった中途半端な自分の髪色ではなく、美しくて綺麗な白色になるのかも…?


間も無くして…。見事な門構えの、とある屋敷の玄関先へと到着しました。


(大きい家だなぁ…)


自分ケイジは小さいながらも、伯母の家は昔住んでいた自分の家みたく、かなり大きな家だと理解に至ります。そう言えば鬼祖母と浪費親父が、伯母夫婦の事を雇われリーマンだの、穴の空いた靴下を縫ってまで履いていると卑下し、嘲笑っていたのを思い出しました。

…で、馬鹿にしてきたその人へお金を借りに行く事になってますが…?この勝者は…、軍配はどちらに上がるのか?自ずと分かりそうなものです…

そして母は


「さぁ、着いたわよ。あなたたち?ちゃんとご挨拶するのよ?」


『はーい』


ワカ姉と自分ケイジは声を揃え返事します。それに対し、母親が玄関の方へ向いた直後。油断していた自分の後頭部へタメ兄の強烈な張り手が飛んできました。


「あだっ…」


飛び出す両目玉…。はい、飛び出ません。嘘ついてました。大袈裟でごめんなさい…


「……。」


自分の悲痛な声を聞き、母は一瞬振り返り掛けましたが。家の中から姉…要は伯母が出て来たので、その件は有耶無耶に…まさに殴られ損です。

まぁ、母親に直訴してもタメ兄に「″あとで倍返しだ!″」と、その想定を超える″百倍返し″となる為。基本的には黙ったまま、マイへッドの白髪が数本増加して騒動が沈静化するのを待ちます。

だって六歳上の兄と自分は、まるで大人と子供ほどの身長差があるのですから、力では絶対に勝てません。

同時に周囲は仄かに″潮の香り″が漂っている事に気が付きました。

そうです…、伯母の家は海の近くにあったのです。


「じゃあ、母さんたちはこれから大事な話があるから、あなたたちは海で泳いでらっしゃい。ケイジの事、頼んだわよ…?」


「……。」


…と、超最悪なメンバーで海水浴へ行く事になりました。母の言葉に対し、タメ兄とワカ姉は返事しなかったし。嫌な役を押し付けられたとばかり、こちらを睨んできます…。兄弟なのに凄い酷い嫌われようです。リアルな話。本当は血が繋がってないんじゃないか…?今考えてもそう思えるなんて、かなり重篤なんでしょうね…


そして自分は海水パンツなんて無く、兄弟からのお下がりブリーフ一丁。それと伯母が貸してくれた子供用の浮き輪を装着させられました。この時にやっと…現在の自分の置かれた状況を理解。まさに孤立無援、四面楚歌。

その幼き二つの双眼には溢れんばかりの涙を溜め、半泣き状態のまま上二人の兄妹に両手を強く引っ張られ、強制的に海へと向かう事になるのです。


(ひょえ〜…)


しかし…


「ワカ、あっち行くぞっ!」


「うん」


家から浜辺まで五分ほど歩いたでしょうか?ここは人気の無い海水浴場なのか人は疎らで、ライフセーバーも見当たりませんでした。

で、自分はこれから地獄のショータイムが始まると思い覚悟していたのですが、意外とタメ兄とワカ姉は真新しい海の探索でサッサと視界から消え去ってしまったのです。

その浜辺に小さな自分ケイジを、ポツンと一人残して…


「よ、良かったぁ…」


置いてけ堀を食らった幼い園児。

普通なら一人取り残されると泣き喚きながら怖がるでしょうが、既に兄妹から日常的な虐待でそれ以上の恐怖を味あわされてきた自分。この状況をラッキーとしか思っていませんでした。


「海は……、ザッパーンッ…って音が怖いし。砂浜で遊ぼう…」


自分は小柄な背を海に向け、ちょこんとヤンキー座り。

まるで取り憑かれたの様、必死になって砂を掘りながら遊んでいました。

だって、する事無いし…


でもその時。自分の周囲に海水浴客はいなかった筈なのに、やたらと海側…。自分の背後から何か言いようの無い違和感を感じたのでした。


「……?」


だから、くるり…と海の方へ振り返ってみて…


「はへ?」


…誰もいません。キョロキョロと周りを見渡しても、一番近くは30メートル位離れた場所に一組の親子連れがいるくらい?他の海水浴客はもっと遠くにポツポツとしか確認出来ませんでした。なんて人気の無い海水浴場だろう…

そもそも、ここは本当に海水浴場なのか?


「まっ、いいや。兄ちゃんいないし」


その後、タメ兄がいない事に浮かれていた自分は、背後に違和感を感じても一切振り返らなくなりました。

一生懸命穴を掘り、その中に海水がしみ出してきたら「小さな海だ!」と一人喜悦し。小蟹を捕まえて、そこへ入れたりしながら楽しく遊びます。


「あとは、ここに小魚を入れたいなぁ…」


そう言って、再び海の方へと振り返った自分。

すると瞬きした刹那、赤いビキニ姿の女性が立っているのが一瞬見えたのです。見間違いかな?と思い、手は砂まみれなので腕を使って両眼を擦りました。

…ですが


「あ、あれれ…?」


すぐに海へ潜ったのか?幻覚だったのか?その女性は何処へやらと消え去ってしまいました。息継ぎしてる感もないし、時間的に窒息レベルの長さ…。だから潜ってはいないでしょう。そしてこの頃の自分はまだ幼くて、今までにも同じ様な体験を何度かした事があるので、あまり違和感を感じていなかったのです。


「″いつもの…かな?″」


小さな頭の中で自分はクエスチョンだらけになりながらも。そんな漠然とした謎の現象より、今は目先の気になる小魚を捕まえたくて海へと…


『ザッパーン!』


「……。」


怖い…、超怖い……

容赦無く浜辺に吹きつける強風が比例して、必要以上に波を荒立てていて…


「魚は……。よし、諦める…うん、いらない…」


ヘタレな自分はさっき捕まえた小蟹で妥協。しかし、さっき作った小さな海を見ると、捕まえ筈の小蟹が消え去っていたのです。


「何で!?何で!?」


大人になった今なら分かりますが。あの時、恐らく小蟹は砂の中に潜っていたのでしょう。しかし幼くてバカな自分はそこまでの理解には至らず軽いパニック状態に。そして悍ましくも背後に忍び寄ってくる、その怪しい影に気付く事が出来なかったのです。


「おいっ」


「!?」


振り返ると、そこにはタメ兄が一人で立っていました。何故かワカ姉の姿は何処にも見当たりません。ワカ姉はトイレかな?それか、これから家に戻るのかな?もしくは今からタメ兄にボコられる!?

自分の小さな脳内をフル回転させながら、恐怖を含む色々な想像的ビジョンが錯綜します。

しかしーー


「こいっ、ケイジッ!!」


「痛っ!!?」


力任せに腕を引っ張られ、そのまま荒れた海に連れて行かれる自分ケイジ。そしてこの日初めて海水に接触したのですが、予想以上に冷たくて全身鳥肌状態に…


(冷たっ…)


辛うじて浮き輪で海面から半身浮いてましたが。タメ兄に泳ぎながら容赦無く沖へ沖へと連れて行き。次第に陸が小さく見える程の遠い場所まで来てしまったのです。


(こ、怖いよう…)


生まれてこの方、海水浴では足の届く浅瀬までしか行った事がなかったのです。


(ジタバタジタバタ…)


必死に抵抗したのですが、その短い手足では抵抗力も無く、海中で空を切り続けました…

よって自分は混乱し、されるがまま、そのタメ兄の暴挙を真横で黙って見ている事しか出来なかったのです。

やがて安全ラインを超え、更に沖へと連れて行かれ。そこでタメ兄は自分ケイジに対し、人間として絶対に言ってはならない有り得ない一言を言い放ったのです。


「お前なんか…、ここで死んでしまえっ!!」


″死″とは何か?この時は年齢的にも理解し難い言葉だと思います…。そして最後にタメ兄は、更に沖に向け足で自分ケイジの浮き輪を足蹴にしながらUターン。一人陸に向かって泳ぎ出したのです…


「!!!?」


目撃者のいない場所で卑劣かつ残虐な行為…


タメ兄は一切振り返る事もなく、やがて陸にいる人たちの様に小さくなり、浜辺からその姿が完全に消えてしまいました。

更に自分ケイジの置かれた状況は最低最悪。そして、この日は風が強く結構な速さで体が流されてるのが分かりました。自分は何故これ程までにタメ兄から憎まれているのでしょうか?親父の所為なら、その本人に矛先を向けてくれればいいのに…

…って、親父は常に不在だから…?いつも行方不明で文句を言えないからなのか…?


「……。」


徐々に沖へ流され、強風が潮を巻き込み、それが小さな体の弱い皮膚に激しく打ち付けられます。知らぬ間に出ていた涙、それが潮と入り混じり小さな頬を濡らしていました。顔を手で拭い取ると鼻水も垂れていて。けど頭の中は…

このままだとどうなるの?今日は早く帰りたいな…。晩ご飯は何だろ?もしかして、あの伯母の家で一緒に食べたり寝たりするのかな?いや、そもそも家に帰れるの?まさか……ボク、″ここで死んじゃう″のかな…?


「嫌だ…、死にたくない…死にたくないよ…」


そう初めて言葉に出した時。そこは波が畝る沖合い、既に陸は横一本の細いラインになってしまいました。実はお◯っこもチビってましたが…


『どうしたの…?』


すると、どうした事か…。いきなり目の前に水着姿の女性が姿を現したのです。

さっき浜辺で見た女性ひと?まさか自分を救出に?

年齢は見た感じ三十歳位だったでしょうか?顔に打ち付ける潮と涙目の所為でハッキリとは見えなかったのですが…


『大丈夫…ボク…?』


幾ら波が荒いといってもクロールや平泳ぎで助けに来れば、水面を叩いたり蹴ったり「バチャバチャ」と何かの音がする筈です。それすら無く急に現れた彼女の声は、耳にではなく心に語り掛けられている様な気がしました。


「ぐすっ、おばちゃん?」


本人は「お姉さん」…と言ってもらいたかったかもですが…、気が利か無くて本当にごめんなさい…。でも、彼女は優しい笑顔を見せると


『もう安心していいからね…?』


と、言った気がしました…


「う、うん…」


そう返事した後。自分は背後から浮き輪を押され、進行方向である浜辺の方をずっと眺めていました。

すると今まで見ていた景色の流れとは逆に陸が段々と近づいてきて…。でも相変わらず、その女性が水面を叩いたり蹴ったり、その泳いでいる音が一切聞こえなくて…


「あ、あの…」


女性はまだ背後にいるのかな?と、急に不安になった自分は女性に声を掛けようとするも、先に…


『安心して、″まえだけを見て″いたらいいからね…』


…と彼女は言ってくれたので、ホッと一安心…


「うん…」


まるで機械的な動き?まさに水面を″滑る?″とでも言えばいいのでしょうか?浜辺に着く迄に、五分と掛からなかったと思います。やがて短足の爪先が水中の砂利につく位の浅瀬へ到着し、彼女にお礼を言おうとして背後へ振り返ってたのですが…


「ありがとう、おばちゃ………ん?」


何故か、そこには誰もいなかったのです…

しかもかなり流されていたのか、先に見ていた海の左右反対側。最初見た近くの親子連れが今は遠くに見えていました。そしてこの近くにいるのは若い男性客ばかりで


「あ、あれ??」


自分を助けた後、黙って姿を消してしまった謎の女性。もしかするとその人は浜辺に到着時、一瞬だけ目に見えたあの赤いビキニの女性れいだったのかもしれませんが…


「あ、ありがとう!おばちゃんっ!!」


でも、お礼を言いたかった自分ケイジは。聞こえてなくとも海の方へ手を振りながらそう叫びました。すると横にいたお兄さんたちがクスクスと…。まぁ、誰もいない海に向かって、いきなり「ありがとう、おばちゃん」と叫べば当然そうなるでしょう…


(スー)


そしてそれに対しての返事か。いきなり頭部に流れた微風?強風とは違う生暖かく優しい風?…それは何か「気にしないで…」と、そう言われた気がしました…

しかし相変わらず横でお兄さんたちにクスクス笑われていたので、自分は顔を真っ赤にダッシュし一目散に元いた場所へと向かいました。

でも自分ケイジを助けてくれた彼女ひとは一体誰だったのでしょうか…?


(ありがとう…、おばちゃん…)


すると元いた場所には既にタメ兄とワカ姉が立っていて…。何故かワカ姉だけが大泣きしており、自分を見るなり急に抱きついてきたのです。これはかなりの想定外な出来事で…


「わぁあああああんっ!!」


嫌いで虐めていても。まだワカ姉には、ほんの少しでも弟を想う気持ちがあったのでしょうか…?そして泣き噦る姉の断片的に聞こえる言葉から、自分ケイジは遠くに流されてしまったとタメ兄から聞かされたらしいのです。

その時のタメ兄が自分ケイジを見て、まるで死人を見た様な顔をしたのを、今だ忘れる事が出来ません…

流され死にかけた…いえ、殺そうとしてきたのはこのタメなんだ…

やがて、事が事だけに母や伯母から連絡が入り、救急車や警察、地元の方々がやって来て。事故の経緯を根掘り葉掘り聞かれて、注意された上に怒られて…

知らぬ間にかなりの大事件に発展していました…。確か浜辺に、人は疎らにしかいなかったのに、事件、事故のギャラリーならわんさかと集結してきて…。こんなに人が隠れてたのか??

そして自分は覚えてない、わからないの一点張り。リアルな話、兄の報復が恐ろしかったので実の兄に殺されかけた内容は一切話せませんでした。

まぁ…結果として後日、何度か実兄あれに殺されかけるのですが…


そして最後にもう一度。何気に見た砂浜に、かなり薄っすらと透けた体でピンクのビキニ姿の女性が立っていたのです。恐らく彼女が再び現れたのは自分と何らかのシンクロをしたからに違いありません。


その表情は″何か切なくて、少し寂しげな笑顔?″と言えば分かり易いでしょうか?ただ、沈黙を守り静かに立っていたのです…

荒れた海で漂流していた時に助けてくれた女性とは、高波の所為でちゃんと顔を見れてはいません。でも、自分ケイジには分かるのです。彼女は間違いなく″海で彷徨っていた自分を助けてくれた女性ひと″だったと。いえ、そう思い込んだのかな…?


これは自分の勝手な想像ですが…

彼女はあの海で小さな我が子が行方不明になり、探しに探して自分も同じ海で我が子に対する″念″を世に残したまま亡くなられたのではないでしょうか?もしそうだとしたら、いつか彷徨える母子の魂が巡り会える事を祈りたいです…




完。

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