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四十五ノ怪 住めば都

これは知人男性″シュウ″が引っ越した先。とあるボロアパートで体験した恐ろしい心霊現象です。季節はスイカが美味しいのに、全く買う金が無い真夏のお昼時…って長いよ。

内容は良く聞く、ありきたりな事故物件話なのですがーー





「ふぅ。これで荷物は全部だな?ケイジくん。手伝ってくれてありがとう。ホント助かったよ」


「そんなの、いいですよシュウさん。運ぶ家財量も程々でしたし。しかも車載ナビまでタダでいただいて…。こちらこそ、ありがとうございまし…た………?」


「ん?どうかしたか?」


「い、いえ。引っ越しで玄関開けっ放しだったから?蚊がフワフワと…。だから何でもないですよぉ…」


「そうか、蚊を退治するスプレーをプッシュしとくか…」


突然、首筋に感じた生暖かい感覚。思わず自分ケイジは返事する言葉尻がおかしくなってしまいました。

それは何故か?実はこのアパートで、とてつもなく嫌な悪寒と違和感を同時に感じ取ってしまったからです。

そんな時は必ず視線を下に落とし、周囲に彷徨いしれいの足元を探すのですが…。今回、それらは全く見当たりません。だからこの話は本人から恐怖体験談として後日、改めて聞く事になりました。


「じゃあ用事も済みましたし。そろそろ帰りますね?シュウさん、また」


「おー、ケイジくんもお疲れ様。ありがとう、またな?」


……



新しい住居となった1Kのボロアパート。その部屋の前で一人茫然と立ち、訝しげな表情でシュウは入り口の方を見つめていました。

実は彼もまた言い様のない何かをその身に感じ取っていたのです。まぁ、至る所の壁がひび割れていて見た目にも建物自体が崩壊寸前の所為かもしれませんが…


「家賃安いけどヤバいな…」


ここの天敵は大地震や暴風雨か?見た感じはまさに酷い欠陥住宅…

しかし家賃が安くて駅まで約500メートル程と近くて。

何せアパート向かいは、だだっ広い空き地があり。そこも大家さんの所有地なので車を駐車し放題だとか。

しかもそこの井戸水を幾ら使っても良いらしいので、日頃からの洗車や友達を大勢呼んでバーベキューパーティー…なんて事も容易に楽しめます。

こんな良い条件下。シュウは平家で五部屋並んでいる一番左側の部屋に。その反対側…一番右側の部屋に、たった一人で住む中年男性の合わせて二人だけです。

残りの間にある三部屋は全て空き部屋でした…

案外ここは人気が無いのか?


「一番奥…、確か反対側だったよな?」


引っ越したら、まずは近所付き合いから。横が鬱蒼と生茂る木々に囲まれた薄暗く物静かなボロアパート。その反対側に住む男性の部屋に、引越しの挨拶へと向かいます。

でもシュウは少し喜んでいました。だって一番面倒な挨拶回りが、たった一軒で済むのですから。更に大手ディスカウントショップで安価購入した洗剤セットを手に、いざ出陣!


「こんにちはぁ〜…」


(ガチャ…)


『……。』


見た感じアラフォーも後半か?酷い癖っ毛パーマ頭の男性。まるっきり手入れされてないボサボサ頭で肌は荒れに荒れ、おでこはテカり、その表情は何故か此方を鬱陶しそうに見つめてくるのです。


「あ、初めまして。今日から反対側の奥の部屋に住む事になったシュウと申します。これはつまらない物ですが、どうぞ…。そして、これからも宜しくお願い致します。」


『……。』


(頭ボリボリ…)


この人の衛生面の無さが我が部屋まで被害を及ぼさないか心配になってきます…


『……反対側…、一番端っこの部屋か?』


「え、ええ。そうですが…」


『……。』


(バタンッ!)


そう質問だけして返事も無くシュウから挨拶の粗品を奪う様に取りあげ、扉を叩きつけるかの如く閉めた薄気味悪いお隣さん。ふと表札を見てみると彼の名は″エン″でした。

名前が″エン″なのに人間には全く″エン″が無さそうな人物。まぁ人間の中には対人を極端に嫌う方がいますから、彼もその内の一人なのかもしれませんね。

だからシュウは出来る限り彼とは「関わり合わないでおこう」…と、そう心に誓うのでした。


「はぁ…、何やら気分が優れないな…。いやいや、やる事はちゃんとやらないと。よしっ、後は荷物を配置して、さっさと片付けようっ」


出発の門出を挫かれ少し憂鬱。でも、まだまだ片付けが残っていました。そんなかんだで部屋に戻ったシュウは自分ケイジが手伝った棚や冷蔵庫等の重い荷物以外、小物等を順に収納し整理していきます。

先のマンションでも一人暮らしだったので、量的にもそんなに時間は掛からなくて済むでしょう。


「よし、これで完了っと。簡単とか言っておいて、汗をダラダラ出てるぞ、俺…」


そのボロアパートは実は共同トイレ。出来ればそこで、あの″エン″とカチ合いたくないと思いました。

しかも風呂は無く、立ったままで入る狭小シャワールームのみ。まぁ風呂へ浸かりたくなったら大衆浴場に行けば済みますし、凄く家賃が安いのが魅力的で本人は既に納得済みだったとか。だって前の家賃より月、四万円も安いのですから。四万ですよ?年間にして簡単計算、五十万くらいお得かと。


(ジャァー…)


「ふぅ…」


お待ちかねの読者様サービス。

独身中年オジサンの悩ましいシャワーシーン。…って、ソコをわざわざ書かなくていいから、ケイジ

…と、油断していたら。シャワールームの足元で少しづつ水嵩が増し始めました。要は排水管トラブルか?気付くのがもう少し遅れていたら、段を越え廊下側に水が溢れ出し、大変な目に遭ってた事でしょう。何というか…、住み始めた初日からとても幸先不安な…


「な、何で″ハイこれからっ″…って時に…。普通、初日から排水管詰まるか…?本当に大丈夫かココ…!?」


そんな″ココ″を選んだのは″あなた″です、はい。

取り敢えずシャワーを止め、床の中心にある排水ドレンから少しづつでも水が引くの目視で確認。頃合いにシュウはその蓋を開け、そのドレン内部を目で確認しました。

しかしここはザ・スーパーオンボロアパート。狭小スペースだからか自身の影が邪魔をして弱い暖色球一つの明かりでは奥まで見えません。


「確か懐中電灯はテレビの横に置いたよな…?あっ、そう言えば、バスタオルを出すの忘れてるぞ、俺…」


いつも、よく独り言を言いながら悩んでるシュウ。

シャワー室に着替えだけ持ってきて、肝心なバスタオルの用意を忘れていたのです。

仕方無く一生懸命手で必死に身体中の水を切り、少し濡れたままシャワールームのドアを開けました。すると


(ゴボボボ…、ゴポッ、ゴボボボ…)


ドレンの下、下水に繋がる排水管の中で何か奇妙な物音が…

状況からして中で鼠やゴキブリの死骸でも詰まっているのでしょうか?まさかの初日から丸裸で通路や畳を濡らす羽目になりましたが、すぐさまバスタオルと懐中電灯を持ってシャワールームへとカムバック。

そしてシュウは懐中電灯でドレン内を照らしながら、ゆっくり中を覗き込みます…


「っ…、うわっ!?」


咄嗟に後ろへ飛び退き尻餅をつくシュウ。彼の恐れ慄く恐怖を含んだ、まさにそんな叫び声でした。

何故か?有り得ないはなしですが、一瞬ドレンの奥から此方を覗いている誰かの目が見えたのです。

しかしこんな小さな穴だし、物理的にも誰かが下から覗くとか有り得ません。だけど恐る恐る、もう一度じっくりと覗き込み…


「や、やっぱ気のせいか…。でも、何か詰まってるな…」


中には不気味で何か黒っぽい大量の異物が…

シュウはとてもじゃないですが、素手でその中を探る勇気はありませんでした。でも、ちょうど引越しの時に小荷物入れに使っていた、青いビニール袋が洗面台に置いていたので


「これでよしっ…と」


まぁこれで直らなかったら大家さんに相談するしか無いのですが、こんな事で業者なんて呼んでいられません。

取り敢えずビニール袋を利き手に装着し、そ〜っとドレン内に手を入れると、指先に何かワサワサとした異様な感触が…


(ズル…ズルズル……)


「ひゃあっ…!?」


なんと中から排水の異物がこびり付いた、カピカピ&カビカビな薄汚く長ーい髪の毛が大量に出てきたのです。それを一旦ドレンの横に置き、もう一度シャワーを試し出ししてみますが


「やっぱ、ダメか…」


再び水が詰まってしまいます。

こうなってしまえば、シュウはとことんやる気になっていました。だって″ココの家賃は凄く安い″んですから。


(ズルズル…、ズルズルズルズル…)


「っ……。」


コレはワザとか?そう考えさせられる程。その中から大量の髪の毛がわさわさわさっ…と出てきたのです。

″コレ″は女性でしょうか?ちょっと天然パーマが入っていて、やたらと長い大量の黒髪。シュウは半ば絶句状態ながらも、再度シャワーの排水具合を試しました…


「おおっ…………流れた…ってコレ。前の住人の抜け毛か?こんなに抜けたらヤバいだろ?いや、もう手遅れか…。この人確実、絶対、完全にハゲてるな…うん。早く病院行けよ…」


無事、水は排水される様になったのですが。その詰まっていた髪の毛の量が尋常では無く。軽くカツラ一つ作れそうな量が出てきたらしいです。しかしそれをビニールに捨てて立ち上がった瞬間。再び気味の悪いあの奇妙な音が…


(ゴポッ、ゴボボボ…、ゴポッ、ゴポッ、ゴボボボ…)


「……!?」


やはり排水管に問題があるのでしょうか?それとも、この家に巣食う何かが…?その後はシャワーの排水に何ら問題無く、そのまま使えてるそうですが。この不気味な音は今もずっと鳴り続けているらしいです…。そして身体も気分もリフレッシュしたシュウは、部屋の奥にたった一つだけある窓に向かいました。


「酷い目に遭ったな…。あっ、そうだ。今のうちに手洗いした衣類を干しておこう」


(ガラガラ…)


アパートは少し高台にあり、サッと窓を開けると流れてくる爽やかな風と共にこれ以上ないという程の景色が視界に飛び込んで来ました。

町を遠くから一望出来る美しい景色。各有名店の大きな看板。この地方特有の古墳群が彼方此方に見え、走る線路の様子までハッキリと窺えます。ひょっとしたら夜景はもっと綺麗かも?そしてこれからの生活を楽しみに、鼻歌ながら身を乗り出し、窓の外の物干し竿へ洗濯物を干していると…


「ふん〜、ふふん〜……、あれ…?」


横を向くと隣の部屋の窓枠が見え、中からじっと外を眺めている女性の姿が見えました。齢は三十歳くらいでしょうか?しかも結構美人か?


「……。」


でも、確かこのアパートの残り三部屋は無人の空き部屋だった筈。だとすれば、ここを新しく下見に来た方でしょうか?

見た角度的にも着ているのはピンクっぽいワンピース…かな?位しか分かりませんでした。

だって窓の外からは光の反射加減で少し見辛く、その全体像は確認出来ませんでした。

しかし新しくやって来る隣人女性なら凄く気になりますし、独身の自分にとってはまさにウエルカム。取り敢えずシュウは手洗いした衣類等を干し終え、物音たてず、テレビもつけず、ただじっと、沈黙の中、静かに隣の部屋へ耳を傾けました。って、まるでストーカーだ…


(………………。)


やけに?し〜ん…としています。何故だ?確かに女性が部屋にいた筈です。でも話し声や玄関の扉を開閉した音も無く。このアパートは周辺はホント静かなものでした。ただの見間違い?いやいや″ピンクっぽい服を着た女性″と容姿やポイントがハッキリと記憶されています。


「おかしいなぁ…」


すると今度は…


(ギリギリギリギリ……、ギリギリギリギリ……)


不気味に木の軋む音が何処からともなく聞こえてきました。それは木に紐か何かを引っ掛け、引っ張ってる様な音?とでも言えば分かり易いでしょうか?


(ギリギリギリギリ……)


シュウは頭上を見上げ、次は足元…

天井かな?もしかして床下から?それらは違う気がします。じゃあ玄関先や屋外から?


「ど、何処で鳴ってるんだ…?まさか、隣にいる女性が何かのトラブルに……!?」


その異音怪音は建物の内から聞こえているのです。じゃぁ原因はさっきの女性!?


「隣の………部屋からか?」


そこは隣の部屋。唯一隣接する壁に寄り添い、シュウは静かに耳を澄まし、再度ストーカーを…


「やっぱり、違う……か?」


(ギリギリギリギリ……、ギリギリギリギリ……)


「っ!?」


酷く脳や鼓膜に突き刺さる、何かを引っ掻いた様な音。発生源はまさに隣の部屋でした。結構大きな音でかなり薄気味悪く。こんなのが頻繁に続くのなら、とてもじゃないけどここには住んでられないレベルです。そしてシュウは思わず玄関から飛び出し、息荒く隣の部屋の前で身構えました。


「ハァハァ……」


そして、勇気をもってもってベルを…


(ポチッ…、し〜ん)


「…って、このベル壊れてるし!全く音が鳴らないじゃないか。くそっ、このオンボロアパートめっ!」


いや、だから″ここを選んだ″のは″アナタ″です。

…と、もう成り行き上。仕方無くお隣さんのドアを叩くシュウ。


(ドン、ドン、ドン)


「今、この部屋に誰かいますかぁ〜?」


(し〜ん…)


……無反応。


すると扉からこっそり此方をジーッと見ている反対側の住人エンとバッチリ目が合います。そして彼は半笑いで一言


「″クククッ、やっぱりな?いるんだよ、ソコには…″」


(バタンッ!)


と、思わせぶりな台詞を残し。エンは再び自分の部屋に閉じ籠もってしまいました。

しかし何故笑う?「やっぱり」?「いる」って何!?

「ソコ」って言った時点で今俺シュウ立ってる場所…。要は…この部屋の事か!?


急遽予定変更。シュウは小走りにエンの部屋へと急ぎ、隣人という事もあり、その扉を軽めに叩きました。


(コンコンコン…)


「エンさん?シュウです。さっきの言葉の意味を教えて下さいっ!エンさん、いるんでしょ?お願いしますっ!」


しかし…


『……。』


それ以降、彼は姿を現す事はありませんでした。

寧ろ彼が「いる」と言った時点でホボ確定。そうです。ここには″いる″んですよ、このアパートには例の″アレ″が…そう思った瞬間


(バタンッ!バタンッ!)


物凄い音と共に、例の部屋の玄関扉が二度開閉しました。おいおい鍵はどーした…!?って、問題はそこじゃない…


「っ!!?」


目の前で容赦無く繰り広げられる、恐ろしきポルターガイスト現象。シュウの脳内は今、九割半、ある漢字に占領されています。

引っ越したばかりだぞ!?どうしよう、言いたくない、これを言ってしまったらお終いだ、言っちゃダメだぁー、絶対ダメだぞっ俺っ!!


「じ、″事故物件″やろぉー!!」


…と叫び、めでたくご回答。はい、大正解です。

シュウはアパートの手摺りを乗り越え、隣の部屋の前を通らない様にグルリと遠回りし。自分の部屋へと戻りました。恐らく服を干す時に見た、あの女性が幽霊げんきょうの可能性大。

「こんなに落ち込んだのは初めてだ…」…という顔を見せる相手もおらず。真っ青且つ陰鬱な表情のまま部屋で、ヘタリと座り込んでしまうシュウ。

ただ、ラッキーかは分かりませんが事故物件は恐らく隣の部屋。ちょっと辛抱すれば、家賃が安いこのアパートはまさに天……


(ギリギリギリギリ……、ギリギリギリギリ……)


いえ、完全無限地獄です。合掌…


「うおおおお……っ…」


シュウはまるで四足動物の様に四つん這いで布団に潜り込み、両手で耳を塞ぎながら丸まります。そんな中、何故か冷静になっている脳内で


(事故物件は隣、事故物件は隣、事故物件は隣、絶対、事故物件は隣……)


…と、繰り返し叫びます。ですが…


(ミシミシ…、ミシミシ…)


明らかに枕の上辺りで誰かが歩いてる足音が…

という事は…この部屋が事故物件なのか!?いやいや、隣の部屋にあの女性の霊がいたのです。よくよく考えると端に住んでいる住人エンはここから一番遠い部屋。つまり残りは全て空き部屋…。脳内で切れた線と線が繋がった瞬間…


「ここは人気が無いんじゃなくて…。新しく住人が入っても恐ろしい心霊現象の所為で、すぐに引っ越すって事なのか!?」


その通り、またまた大正解。

ここの大家に騙された感がハンパなく、頭にきたシュウはガバッと布団から飛び出ました。すると、この部屋からスー…っと、隣の部屋へ壁をすり抜けるあの女性の後ろ姿が…


「も、もももっ、文句言ってやる…」


そう言ってシュウは大家に…ではなく。玄関を飛び出し隣の部屋に入りました。やはり、さっきのポルターガイスト現象で鍵は開錠されたままだった様です。靴も履かずに部屋を出たものですから、そのまま裸足でお隣の部屋へと突入し…


「出て来いっ、この幽霊っ!!」


電気はつきません。しかし時間ときは夕暮れ刻。部屋はまだ少し明るいですが。ついに彼は、そこで見てはいけないものを見てしまう事になりました…


「何処に行っ………た!?」


クルリ。部屋の真ん中からサッと玄関の方へ振り返ると。手前の敷居上にある太い柱に紐を掛け、今にも首を吊ろうとするあの女性の姿が…


(……!!)


その女性ひとの眼差しは、まるで人生に疲れきった感じに表情は酷く青褪め。その姿は全体がぼやけていて足元が全く見えなかったとか…。一体何に悲しみ、打ち拉がられ、彼女は死へと追いやられてしまったのでしょうか?

とか書いてますが、勿論そんな事を考える間も無く、彼女はシュウの目の前で首を吊るその瞬間を見せてくれました…


「はわっ!?はわぁわわわぁーっ!!」


(ギリギリギリギリ……、ギリギリギリギリ……)


ギリギリと…。これは彼女が死を迎え入れた時の木が軋む音。いわばレクイエムの様なものでした…


後に大家から聞いた話では、彼女が自殺した本当の理由は不明のままとか。ただシュウには何となく、その理由が分かっていました。ワンピースに似た服は実はマタニティ、妊婦用の服なのです。後日、自分のお腹に手を当てる彼女を何度か目撃したとか何とか…。でも妊娠して日が浅いのか、そこまでお腹は出てなかった様で。

大凡ですが紛糾した不倫、痴情のもつれ。最後に彼女は妊娠した事で男に捨てられ、それを苦にここで一人寂しく自殺したのではないでしょうか?


…って、何故その幽霊の多彩な目撃情報があり。そこまで事細かに推察出来るのか?

そうです。知人シュウは何故か″今でもその事故物件のボロアパートに住み続けている″のです。しかも、あのエンとは『えん』があったのか。後日″大親友″になったらしく、今や仲の良い遊び友達だとか。本当に驚きです…

いざ慣れてしまえば、家賃の安い事故物件ここは住めば都。居住する二人は彼女ゆうれいに対する悲しみや哀れみで意気投合したとか何とか…。面白くもあり、怖くもあり、悲しくもあって、人生とはどう転がるか全く予想出来ませんよね…

ちなみに今も残りの三部屋は人が入れ替わり立ち替わりが多く、二人の様に落ち着いて暮らせる人はおらず最後は必ず空き部屋になってしまうらしいです。


…と、今回はここまで。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。




完。

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