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二十四ノ怪 あなたはだぁ〜れ?

この話は自分ケイジが大阪市内に住んでいた時に、とある幼稚園に通っていた頃の話。一番よく遊んだ友達の″キキくん″。情けない事に、あれだけ仲が良かったはずなのに、今は彼の本名を思い出す事が出来ません。更に住所録、アルバム等は父親に引っ越し三昧という調理上の過程で美味しく処理され昇天…。渾名しか分からないままの友達のキキ。そんな彼の悲しき物語から入らせてもらいますーー



「え?キキくんのお母さんが?」


「そうよ。だから今日、キキ君はお遊戯に来なかったでしょう?」


まだ自分でも人間の生死。所謂「亡くなる」という意味が理解出来ない年頃。そして真っ黒な喪服を着た母に連れられ、キキの家、…そうです自分ケイジキキの母親の葬式に行く事となったのです。死因はまさかの交通事故死。まさに、突然の不幸に遭われたのでした…


「……。」


自分は一週間ほど前に、親戚の葬式に行ったばかりだったので大体の手順を理解し。こっそりと他の人の真似をしていました。ですが状況をちゃんと把握していない自分は、皆と違う席に座っている親族側にいたキキへ声を掛けに行ってしまったのです。


「ねぇ、キキくん。一緒にあそこに並ぼ?」


「……?」


しかしおもてを上げた彼の表情はとても暗く、目元は真っ赤になっていました。

…って。まぁ、当然そうなりますよね…


(ゴッ!)


唸る鉄拳、飛び出す目玉。その瞬間、自分の頭部へ母の本気の拳骨が炸裂しました。リアルに目から火花が飛び散ると言いますが、まさにそんな感じに。

今思えば自分の息子が同じ事をしたら『そうなるな…』と納得ですが。しかしキキくんや彼のお父さんはそんな自分にも優しくしてくれて


「あ、ケイくん…来てくれたんだね。ありがとう」


「ケイジくんのお母さん、いいですよ?そしてお忙しい中、来ていただいて本当に恐縮です…。ケイジ君?また後日、キキが幼稚園に行ったら一緒に遊んであげてね?」


「…ふぁい」


幼いながら、自分は友達に凄く迷惑を掛けてしまったのだと深く反省させられてしまいました。そしてそんな非礼に対し、どうしようと困惑の表情をしていたら、キキは頑張って自分に笑顔見せてくれたのです。


「…?」


すると途中でキキの視線は自分ケイジの方から少しづつ逸れ、背後の方を見つめた後。彼は急に立ち上がり一心不乱に走り出したのです。


「母さ……」


キキは自分の横を通り過ぎざま、確かにそう言っていました。母親の眠っている棺桶は、反対側のお経を唱えるお坊さんの前にある筈。やがて玄関から飛び出していったキキ、その言葉の真意とは?

そして自分は咄嗟に


「ボクがキキくんを呼んでくるっ!」


と、そう言ったのです。


「ありがとうケイジ君…、頼んだよ?」


「ケイジ…。優しく連れて帰ってきてあげてね?」


「うん…」


自分はキキの後を追いました。しかし玄関を出て道路は二手に分かれており、もう彼を見失っていたのです。


「どっちかな…?」


キキが飛び出してからすぐに追いかけ、道路側に出たのに。その背中が見えないという事は有り得ません。よって最初の二つの選択肢を即除外。自分は家の真正面を見たのです。

そこには側に金網を張り巡らせた少し高く幅の大きな用水路があり。二十センチ幅?細いコンクリート製の橋を渡れば先にある、ここからは見えない畑へと行けるのでした。ただ今は夜で高低差からその先の畑の様子は窺えません…


「いっつも二人で遊んでいた場所だし…、きっと…」


自分ケイジは思い切って金網をよじ登り、用水路の細い橋の上に立ちました。すると


「キキくん…?」


畑の辺り一帯には、色々な種類の野菜が植えられており。茄子にトマト、じゃがいもや人参、胡瓜等もあったと思います。そんな野菜の間に挟まれた道で、彼は何故か更にむこう向きに立っていました。しかも小さな声で何かを呟きながら…


『…てよ?』


『…ん……ょ?』


自分は何も考えず、用水路を越えキキの傍へと近づきます。するとその有り得ない話の内容が少しずつ聞こえてきました…


『母さんなんでしょ?…こっち見てよ…?ボクだよ?キキだよ?分からないの?』


彼は誰もいない空間に向かって、一人そう呟いているキキ。

でも彼の話し掛けている相手が自分にはどうやっても見えません…。キキは何か変な夢でも見ているのでしょうか?だから理由が気になり、彼に近づいて軽く肩を叩いて声を掛けました。


「キキくん…そこに誰かいるの?」


そう言って、そこに何も無ければ自分は彼を連れて帰ろうと思ったのです。しかし…


「ケイくん…、キミには母さんが見えないの?ほらっ、ここっ、ここに母さんがいるだろっ?」


彼は両手を広げ、見えない人間をそうやって形作り、必死にそう訴え掛けてきました。何も無い空間をなぞる様、手を使って必死に…


「ほらっ、いるじゃないかっ。母さんっ、ケイくんが来たよ?だから顔をこっち向けてよっ」


何も無い空間に何か有ると言うのは、頑張って話し合っても只の堂々巡りでしかありません。ただ、それが″この世のモノだったら″の話ですが…


と、その時です。


「おい、キキ。何やってるんだ?早く帰るぞ〜っ」


畑に現れたのはキキの父親でした。あまりに遅いから、心配になって迎えに来てくれたのでしょう。自分たちは背が低いですが、大人ならこの場所は丸見えなのです。ですが、しつこくキキが


「父さん、ここに母さんがいるよ?見えないの?」


と、自分ケイジに言った言葉を父親にもそのまま伝えていたのです。しかし納得のいかないキキは、さっきとは違う行動を取り


「母さん、父さんが来たよ?ね?一緒に帰ろ?」


と言って、まるでキキは空間にその見えない人を利き手で掴む様な仕草をしました。すると次の瞬間


「!!!?」


キキは父親の方へ駆け寄り、その背後へと身を隠してしまいました。そして一言…


「か、母さんじゃない…」


そう呟いたのです…。恐らくキキにはその霊がハッキリと見えていたんだと思います。ただ母と雰囲気が似ているだけで全く別の霊だったのでしょうか…


「キキ…、バカな事言わないでくれ。俺も辛いんだよ…」


キキの父親はそう言って、ぐるり遠道で葬式中の家に戻って行きます。


「ケイジくんも、早くおいで」


やはりキキ以外に、その霊は見えてはいない様でした。しかし彼がその霊に刺激を与えた所為なのかは分かりませんが、葬式へ戻ろうとして畑の凸凹な足元を確認したその時です。その″霊の足元″が薄っすらと見え、更にその霊の靴の爪先が此方へと向いている事に気付きました…


「っ!?」


そして顔を上げ、女性らしき霊の上半身部分に目をやりましたが


「…いない!?」


怖くなった自分は即、キキたち親子の後を追いました。そして後日、それからも何度か彼の家で遊びましたが、その謎の幽霊を見る事はなかったのです。

それは友達のキキも同じ。あの心霊現象は一体何だったのでしょう?もしかすると、亡き母親を求める子供の叫びが、あの悍ましい浮遊霊を呼び寄せたのかもしれません…





完。

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