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十八ノ怪 魑魅魍魎か、必殺こ◯だめ地獄

あれはそう…、自分が小学校六年生の時の話。


約半年前に父親の所為で未知なる地。ここ、大阪の羽曳野に引っ越しをし、友達も知人も少ない。そんな寂しい小学生生活最後の冬休みが終わりを迎えようとしていました。しかしそんな短い期間でも仲良く遊びに来てくれた友達がいたのです。

※尚、食事中や食事前の方々は、これから先を絶対読まないで下さい。(警告)


「ケイジ、遊びにいこーぜっ」


「ダマツ?あ、ちょっと待ってて。すぐ出る用意するから!」


遊びに行こうと家へ誘いに来てくれたのは友達になったばかりのダマツ。彼は物凄く頭の良い友達だったので、今は弁護士にでもなっているんじゃないでしょうか?そんな彼とは学で雲泥の差があるバカな自分と何故か仲が良かったのです。ある意味これもミステリーですが…。

けど約束も無く来たので、二人の行き先はまだ決まってません。

寒い冬休み中に目的も無く自転車を走らせていると、誰か捨てたのか畑にピンク色のゴムボールが捨てられているのを発見しました。

それで二人は稲が刈り取られた後の凸凹畑で、キャッチボールを始めます。ですが畑には稲を刈った下の部分が残っているから、それが更に足場を悪くしているのです。いつ捻挫してもおかしくない状況下…


「あ、ケイジごめんっ!」


投球時、その障害物に足をとられたダマツは明後日の方向にボールを投げてしまいます。


(コロ…、ガッ、コロコロ…)


土ボコの歪な地面ではボールが転がりません。そんな足下に注意しながら拾いに行く自分。するとその視線の先に


「うーすっ!ダマツ、ケイジ。久しぶり〜」


もう一人の同級生、ウラタの登場です。実は彼とはあまり話をした記憶がないのですが、ダマツと仲が良かったのか、彼と遊んでいるとよく遭遇しました。


「キャッチボール?俺も混ぜてよ?」


『うぃ〜、らっしゃーい』


二人の声を揃えた返事は「いらっしゃい」の略。やって来たウラタを二人は即歓迎しました。しかしこの辺り一面、延々と田畑が続き、全く何も無い場所。そしてキャッチボールが少し飽きてきたのか、飽き性のウラタは自然と別行動を開始します。


「あ、ごめん。俺のサンダートルネードがまた逸れた!」


「大丈夫、俺の必殺技スクリューダイナマイツアタックで!」


只のキャッチボールに全く訳の分からない必殺ネームを絡め、自分とダマツは二人楽しく遊んでいました……が。その時です。


『おーいっ』


そう叫ぶウラタの声で二人は振り返ります。

すると、トタンが貼られた農具置き場の横で腰に左手を当て、格好をつけたまま彼が此方を右手でビシッと指差したのです。


「ケイジ…、アイツ何やってるんだ…?」


「さ、さぁ?あ、ウラタが、こっち向けてた手を今度は下に向けたよ?」


『…お前たち、ココだぁ!』


何が『ココ』なんでしょうか?少し距離があり。ウラタが指差した先に、間口の低い井戸の様なモノが小さく見えました。その彼の表情までは分かりませんが、コメントの雰囲気からして彼は何故か笑っている様でした。


『ケイジ、怪談話が好きだったな?なんと!ココに悪霊がいる!今から退治するから、そこでよ〜く見ておけよっ!!』


「…?」


何故か引き合いに自分ケイジを出してきたウラタ。勘弁、勘弁…。

そんな彼の空気が全く読めない自分とダマツの二人は、口を開けポカンとしていると。

そんな二人を完全に差し置いた状態で、彼は一体何をするのか…??


(トン、トン…)


『いけるか…』


何が『いける』のか?あ『逝ける』って事か?全く理解不能だ…

そして彼は靴の先で「チョンチョン」と、井戸らしき上部の何かで盛り上がった部分を突っつきながら、そう呟いていました。で、その悪霊とやらは一体何処にいるのでしょう?…と、思った次の瞬間ーー


『とおおおおうっ!!!』


彼はその掛け声と共に。両手を羽根の様に広げ、天高く羽ばたきました。


「おお…」


しかし、自分とダマツの驚きは微妙に小さく…


(ズボボボボッ!!!ぶちゅ、びちゅ…)


ウラタは広大な畑全体へ激しく異音を奏でながら、その井戸らしき中へ乳首の辺りまでズッポリと突き刺さってしまったのです。

その後。時間をかけ自分とダマツは生々しい驚愕の事実に恐れ慄く事となり……


「お、おい…。ケイジ、アレって…」


「ああ…、こ◯だめ?だな…。ウラタ、おめでとう…」


『だぁすけてくれぇー!!ダマツぅ…、ケイジぃ…引っ張り出してくでぇー!!!』


誰が頼んだのか。彼は自ら、こ◯だめに突き刺さり。衣服は酷く汚れ、うめき声を上げながら、その中で蠢く様はまさに魑魅魍魎…

悪霊を倒すと言っていた本人が悪霊となり自滅する最悪の事態に。彼は一体何の勝負に負けてこの罰ゲームに挑んだのか?


『引っ張り…うぅ…ぐすっ…出して……』


(ゴクリ…)


今は真冬で非常に寒く。そんな中、彼を放っておく事も出来ません。仕方無く自分とダマツはウラタの救出を試みます…。少しづつ…、歩幅小さく…、ゆっくり…、じっくり…と、凄惨な状態の彼へと近づき…


(ぷ〜ん…、つ〜ん…、ぷすっ、ぶちゅ…ぶりぶりっ…)


『……。』


こ◯だめから逃げ出そうと必死に足掻く彼の悍ましき形相。漂う異臭にメタンガスらしきモノを吹き出しながら奏でる怪音。そして致命的だったのが


「っ!!!?」


此方に助けを求めて伸ばしているウラタの両手には、脱出しようとして大量の″アレ″を色々触ってしまったのか。目も当てられぬ程、大変な状態になってしまっていました。

彼を助けるという行為…、それは常軌を逸して″自分も同じ目に遭ってしまう″のを示唆していたのです。

そして二人はある意味″死にかけている親友を助けるか助けないか″という選択、いえ、決断を迫られます。…あれ?洗濯?…かもしれませんが…(汗)


『早くしてぐでぇ…うぅ…』


そして二人は見つめ合い、迷う事なく決断しました。


「ケイジ、そこの…」


「了解、ダマツ!」


自分は畑の仕切りか何かで地面に刺してあった細い木の棒を抜くと、彼の手の届く辺りに放り投げ、二人は一目散に逃げました。


『う、うぞやろ?まってっでぇ〜!あかん……ま……ぁ〜っ……………………』


大空を行き交う切なき渡り鳥か、彼の声は次第に遠くなり、やがて聞こえなくなりました…


「ごめんな、ウラタ…。だって…助けたら絶対に″付く″し…」


「ケイジ。俺たちの洗濯…いや、選択は絶対間違ってないさ…」


「あ、ありがとう…ダマツ…。そう言ってもらえれば多少罪悪感が和らぐよ…」


「いいって事さ…。しかし良い友を失くしたな…」


「仕方ないさ…。アイツの分まで俺たちは生きよう」


「ああ、そうだな…」


それからウラタとは会っていません…。すぐにまた引っ越しましたし…。ただ、こ◯だめに落ちた人は改名しないとダメだとか何とか聞いた事がありますね…

ひょっとして本当に改名したとか?今となっては分かりませんが…


※食事中の方々、本当にすいませんでした…m(_ _)m(滝汗)





完。

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