十五ノ怪 屯鶴峯ーどんずるぼう
これは、指折り数えたら西暦2003年頃の出来事でしょうか?その日は私ことケイジが仕事仲間から麻雀に誘われ、自分の娘長女ヤカ五歳がその間は祖母と遊びたい…と。所謂、私の母親の事です。
兄弟のナガ兄に健康の為と称し、娘を一緒に奈良の屯鶴峯へと連れて行ってもらった時の話ですがーー
ナガ兄は自分より霊感が強く、何度か怖い思いをしているらしいですが。屯鶴峯では波長が合わないのか、霊的なものは見たり感じたりした事が無いと言っていました。だから母と兄は日頃から家での鬱憤を晴らすかの如く、健康の為に…と屯鶴峯によく出掛けていたらしいです。もちろん涼しい時期の日中明るい時間帯にですが。
その日は自分が用事で家にいない為。甘えん坊のヤカが祖母と出掛けたいと言いだして、家族は満場一致で賛成してもらい出掛ける事に。ヤカは余程、普段から滅多に会えない優しい祖母と一緒に出掛けたかったのでしょう。そして車はナガ兄が出してくれて、準備も万端。
「…?」
しかしヤカは現場に着くなり、屯鶴峯の入り口付近。階段の右手前辺りをじっと見つめながら、母の背後に隠れ怖がっていたらしいのです。当然、母たちが見てもそこには誰もおらず、何もいません。
仕方無くそこを避けて更に上を目指したらしいですが、今度は正面に雑木林が見えた所で娘は再び何かに怯える様な仕草を…。そこで少し気になったナガ兄は、娘の視線の先を持参したカメラで数枚写真を撮っていました。
結局、道半ば小さな体で歩き疲れ途中で眠ってしまったヤカをナガ兄がおぶってくれる事に。そのまま下山してくれたらしいのですが。その帰り道、一番初めに娘が怖がっていた場所も、ナガ兄は後から写真で撮っておいたいたらしいのです…
しかし後日、そのナガ兄から電話が掛かってきて
「ケイジ、悪いけど…。屯鶴峯で撮ったヤカちゃんの写真、渡せないわ。カメラが故障していて撮れてなかったみたいで…、本当にごめんな?」
「そうだったの?いえいえ。ナガ兄、娘も喜んでいたし、お手数をお掛けしました。本当にありがとう」
…と、そんな軽い電話のやり取りをしたと思います。
しかし兄はドラム以外にもプロ顔負けのカメラ大好き人間でもあります。必ず予備カメラを持ち、そんな下手は絶対に打たない筈なのですが…
後日。娘のヤカと同行してくれた母と会った時、何気にその事を聞いてみたところ…
「ケイジ…。娘には絶対に言わないでね?実は…写真に気味の悪いオーブ?の様なモノが沢山写ってて…、中には顔らしきものも…。だから天満宮で写真をお祓いしてもらったのよ…。あの子(ナガ兄)は優しいから、怖がらせまいと善意でそう嘘をついたんだと思うわ…。ごめんね…許してあげて…?」
「そっか…、分かったよ。絶対黙っとくし、墓場までこの話は持っていく。けど、ヤカも母さんに会えて凄く喜んでたし。改めて、ありがとうね?」
「そう言ってもらえると助かるわ…」
自分は過去、遠足か何かで屯鶴峯に行った事がありますが、あまり記憶には残っていません。ただ、そこには壕があり。幽霊が出易い「夜中には絶対に行くな」と知人のオジさんに言われた記憶はありましたが…
で、小さな子は嘘を付きません。よって波長が合ってしまい、恐怖を感じた娘には現場で何かしら見えていたのかもしれません。普通に山登りなら良い場所ですが、やはり心中パワースポット等に遊び気分での進入は、霊的波長が合い危険かも?です。お持ち帰りしたくなければ、取り返しがつかなくなる素人での無闇な心霊スポット探索は、絶対にやめておきましょう…
…と、そこで余談ですが…
この時。娘はボディを押すと、とある有名な音声を発する手のひらサイズの青い雀の人形を実家から持って帰っていたのです…
グッと、その鳥の人形の胸元辺りを押してみると…
『よ〜く考えよぉ〜、お金は大事だよぉ〜…♪』
…………。
「某有名サラ金会社の人形やないかぁーいっ!!」
ある意味、これは呪物なのか?そうなのか!?(爆)
思わず顎を突き上げ、天に向かって思いっ切りツッコミを入れてしまった自分…。まさに誰にも言えない、恥ずかしい実家の実態&事情がコレに凝縮されていて…
そこでヤカが…
「おばあちゃん、泣いてた」
…と。
まだ幼いながらも、ヤカの祖母…こと、自分の母の事を必死にそう言って心配していました…
…で、娘ヤカの教育上にも悪いので、この時の出来事を改めて母に聞き直してみたのですが…
「あー…、ケイジ、本当にごめんね…?恥ずかしい話したけど…。あの時タイミングが悪く…、ヤカちゃんと遊んで帰宅した直後、ウチに借金取りがやって来てね…。旦那も家に隠れたまま出て来ないから…」
「……。」
その雀の人形は濃い青色で…、普通なら『幸運を招く青い鳥』…な筈なのですが…
「鳥は鳥でも…、その幸運の代わりに『借金鳥』を招いとるやないかぁーい!!あんのク◯親父めっ!!」
幽霊なんかよりも、ノム、ウツ、カウと三拍子揃った実害まみれのク◯親父や、取り立てヤ◯ザの方が余程タチが悪くないですか…??(涙)
…と、今回のお話はここまで…。ご愁傷様でした…(泣)
完。




